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【マッチプレビュー】2022明治安田生命J3リーグ第26節 いわきFC対FC岐阜

2022明治安田生命J3リーグ第26節。いわきFCは9月25日(日)、JヴィレッジスタジアムにFC岐阜を迎える。
 
FC岐阜は、岐阜県内全域をホームタウンとするクラブ。この試合の見どころについて、詳しく紹介しよう。

■創設からわずか6年でJリーグ参入を決める。

岐阜県内唯一のJクラブ・FC岐阜の誕生は、かつて県内のサッカーをリードした西濃運輸サッカー部の廃部がきっかけ。監督を務めていた勝野正之氏が県内のサッカーレベルの低下に危機感を訴え、岐阜県サッカー協会のバックアップを得たことで、2001年にFC岐阜が創設された(勝野氏は2005年まで監督を務めた)。

チームは同年、岐阜県リーグ1部に参戦。初年度から東海社会人リーグへの入れ替え戦に出場するなど、県内を席巻。2003年に岐阜県リーグ1部を全勝無敗で制し、入れ替え戦に勝利して東海社会人リーグ2部へと昇格する。

知名度を上げるきっかけとなったのが、2005年に元名古屋グランパスエイトの森山泰行が加入したこと。これによりJリーグ参入に向けた流れが作られ、FC岐阜は日本サッカーのヒエラルキーを足早に駆け上がっていく。

この年に東海社会人リーグ1部に昇格し、2006年に元日本代表の戸塚哲也氏が監督に就任。東海社会人リーグ1部を無敗で制し、全国地域リーグ決勝大会に初出場。決勝リーグでTDK(現ブラウブリッツ秋田)に次ぐ2位に入り、入替戦でも勝利。2007年より、西濃運輸サッカー部以来の日本フットボールリーグ(JFL)参入を果たす。

そして2007年シーズン。チームはロアッソ熊本、栃木SC、YKK APとアローズ北陸(現・カターレ富山)など、のちにJリーグで戦う強豪がそろったJFLで旋風を巻き起こす。開幕戦でHonda FCに勝利するなど5連勝し、驚異的な開幕ダッシュ。シーズン後半に失速するも3位に入りJ2昇格。創設からわずか7年でJリーグ入りを決めた。

しかし、2008年からのJ2では苦戦が続く。2011年は6勝6分26敗で最下位の20位。その後も下位に低迷し、2019に22位でクラブ初のJ3降格となった。

1年でのJ2返り咲きを目指すも2020年は6位。2021年は元日本代表のMF本田拓也、柏木陽介を迎えて前半戦を2位で折り返すも、後半戦に失速。2シーズン連続6位でシーズンを終えることとなる。

■潜在能力はリーグ随一。屈指の好選手をそろえる。

J3では財政、選手層ともにトップレベル。だが2年連続6位、監督もこの3年で4人目は不本意。J2への返り咲きを目指す今季、チーム統括本部長兼テクニカルダイレクターを務めていた三浦俊也が監督に就任。元日本代表のMF宇賀神友弥、FW田中順也を筆頭にフレイレ、菊池大介、石津大介らをJ1、J2のクラブから補強。さらに昨季にテゲバジャーロ宮崎でJ3リーグ2位の10点を記録した藤岡浩介を獲得し、体制を整えた。

だが今季のJ3では、開幕7試合で2勝1分け4敗と低迷。5月に三浦監督が退任し、ヘッドコーチの横山雄次氏が監督に就任。第25節終了時点での成績は9勝5分け11敗。勝ち点32で9位となっている。

フォーメーションは4バックが基本。至近3試合で起用したメンバーはGKが桐畑和繁、CBは主力が藤谷匠、服部康平、フレイレ、三國スティビアエブス。SBは左に宇賀神友弥、右に菊池大介、そして左右をこなす生地慶充。

元日本代表・宇賀神のスプリント能力やシュート、クロスの質は依然トップレベル。そして菊池はいわきFC・大倉智代表が湘南ベルマーレ在籍時にユースからトップチームに昇格。湘南を経て浦和レッズ、柏レイソルなどで活躍した選手である。

セントラルMFは清水エスパルスや鹿島アントラーズで活躍した本田拓也、サンフレッチェ広島と浦和レッズで活躍し、チームキャプテンを務める柏木陽介、そして庄司悦大、吉濱遼平。SHは窪田稜、村田透馬。

FWは柏レイソル、ヴィッセル神戸などで活躍した田中順也に加え、昨年Y.S.C.C横浜で6得点を挙げたンドカ・チャールス、アビスパ福岡からやって来た石津大介、富樫佑太。そして今季はJ3リーグ2位の11得点を挙げている藤岡浩介ら。

潜在能力はリーグ随一。好選手をずらりとそろえ、選手層の厚さもトップクラス。J3屈指のデプスを形成する。

いわきFCとは7月10日のJ3第16節で初対戦。SB日高大がセットプレーから2ゴールを挙げ、いわきが2対1で競り勝っている。

FC岐阜は9月に入って1勝1分け2敗。至近は8日間で3試合をこなすハードスケジュール。9月10日のJ3第24節でAC長野パルセイロと1対1で引き分けるも、14日のJ3第21節(再開試合)で藤枝MYFCに0対3、17の第25節でヴァンラーレ八戸に1対3で敗れ、現在2連敗中だ。

■11試合ぶりの黒星。連勝も5でストップ。

首位・いわきFCは9月3日の第23節、ホームでAC長野パルセイロに勝利した後、アウェー2連戦を迎えた。

9月11日の第24節・ギラヴァンツ北九州戦は難しいゲームとなった。いわきは前半から幾度となく決定機を作るもゴールならず、試合は終盤へ。ここで、鋭いドリブルでゴール前に切り込んだのが84分に交代出場で入ったFW吉澤柊。相手守備陣のファールを誘ってPKを獲得。これをFW有馬幸太郎が決め、1対0で勝利。これで10戦無敗の5連勝とし、勝ち点差4で首位をキープした。

そして第25節の対戦相手は、4月17日の6節にホームで敗れているFC今治。J3初黒星をつけられた相手との戦いは、台風14号が接近する悪天候の中、難しい展開となる。

いわきは序盤から主導権を握り、SB日高大らが積極的にシュートを放つも今治の守備に阻まれ、得点ならず。そして後半5分、今治のカウンターから失点。その後は堅守に阻まれ11試合ぶりの黒星。今治に2連敗を喫し、連勝も5でストップしてしまった。

悔しい負けを経て、村主博正監督は新たな手を見せるのか。

7月の戦列復帰から安定したパフォーマンスを見せるGK坂田大樹、CB家泉怜依、遠藤凌の守備陣、そして日高大、嵯峨理久の両SB、キャプテン山下優人、宮本英治の中盤は、果たして今節も盤石なのか。

SHは右がチームトップの8ゴールを挙げている岩渕弘人。左はこの5試合、鈴木翔大が先発出場中。そしてFWはここ7試合、有馬幸太郎と有田稜のコンビが続いている。谷村海那、吉澤柊。山口大輝、杉山伶央、川谷凪らが控える中、アタッカー陣の編成にも今一度注目したい。

仕切り直しの一戦として迎える今節の試合展開やいかに。村主監督の談話を紹介しよう。 

■「先を見ても仕方なく、過去を振り返る必要もない。ひたすら今に集中する」村主博正監督

 「前節のFC今治戦は悔しい負けでしたが、まったく引きずっていません。選手達はすでに気持ちを切り替え、前を向いています。

 9月に入り、リーグではどちらに転ぶかわからない試合が増えてきました。我々もここ2試合アウェーゲームでしたが、どちらも1対0の難しいゲーム。先制点を取れればいいですが、なかなか簡単にはいきません。ギラヴァンツ北九州戦もFC今治戦もそうですし、鹿児島ユナイテッドFCや松本山雅FCも厳しいゲームを続け、何とか1点差で勝っている。ここから勝ち点を重ねていくのは簡単ではないことを痛感します。

 今治戦では、後半15分ごろから急に風が変わりました。ハーフラインを超えるのも難しいぐらいの強い風が吹き、難しいゲームになりました。もちろん反省点は多々ありますが、選手達はやるべきことをやっていました。

 後半5分の失点は仕方ないと思っています。いわきFCの戦い方において、ああいったカウンターの状況は多くあります。あの時もみんなしっかり戻っていた。失点するイメージはなかったのですが、あと10㎝、20㎝が足りずに決められてしまったに過ぎません。

 もちろん悪天候の影響はありますが、失点よりも、前半の決定機で取れなかったことの方が大きい。でも『あれが入っていれば』『これが入っていなかったら』を言い出せばきりがない。逆に今まで、いいボールが自分達に転がってくることも多々ありました。実際、北九州戦やAC長野パルセイロ戦がそうでした。

 今までも余裕で勝った試合などありません。例えば5対0で勝てたヴァンラーレ八戸戦も、前半終了間際にセットプレーから点を取れていなかったら、どうなっていたかわからない。それがサッカーです。

 だからこそ、目先の結果に一喜一憂してはいけない。この先も、今までやってきたことをあと810分続けるだけ。結果は後からついてくる。振り返るのは、すべてが終わった後でいい。相手どうこうではなく、自分達の武器をひたすら磨く。勝ち点と昇格はその先にある。選手達にはそう話しました。

 FC岐阜さんはベテランの多いチームで、一人一人のクオリティが高い。前回の対戦は2対1で勝っていますが、どっちに転ぶかわからない試合展開の中、セットプレーでどうにか勝てただけ。岐阜さんにもチャンスはたくさんありました。

 強いチームほど攻め込んでいる時のリスク管理が必要で、戦っていると気疲れするもの。FC岐阜さんはまさにそういうチーム。個のある選手がそろっているので、いつやられるかわからない。

 警戒すべき選手はセットプレーで入ってくるCB服部康平選手、フィニッシャーとして村田透馬選手や藤岡浩介選手、ンドカ・チャールス選手など。個と経験を持った選手の集合体なので、自由にやらせたら太刀打ちできません。彼らのよさを奪うコンパクトさと運動量が必要になってきます。

 確かに大事な試合です。でも選手達には特別な意識を持たせず、いつも通り強気に、無心でやらせてあげたい。今日も、自分達が今までやってきたことをさらに磨き上げるトレーニングをしました。基本を見直し、自分達が今までどうやって点を取ってきたかを、もう一度思い出してほしい。そうすれば、勝ち点は自然とついてくる。

 前節に鹿児島と松本が勝ったことで、リーグが混沌としてきました。でも、まったく気にしていません。結局、何かを意識して結果が出ればいいですが、考えても仕方ない。先を見ても仕方ありませんし、過去を振り返る必要もない。やってみなければ何事もわからないので、ひたすら今に集中する。残り9試合を全力で戦うだけです。

 リーグは残り約4分の1となりました。優勝や昇格へのプレッシャーより、この時期にこういうシビアな試合ができる楽しみの方がずっと大きいです。季節も秋になり、FC岐阜さんの動きが暑さで落ちることはないでしょう。それならば、運動量と激しいプレーでへばらせたいと思います(笑)」

■2位鹿児島、3位松本が連勝で肉迫。

混沌とするJ3リーグ。ここまで首位を走っていたいわきFCがアウェーで今治に敗れ、16勝6分け3敗の勝ち点54。2位の鹿児島ユナイテッドFC、3位の松本山雅FCがいずれも難しいゲームを1点差でモノにし、両チームが勝ち点53で迫っている。

鹿児島は8月14日の第20節で松本に勝利した後、SC相模原に敗戦。しかしその後はFC今治、アスルクラロ沼津、カマタマーレ讃岐、ギラヴァンツ北九州に4連勝。そして松本は鹿児島に敗れた後、北九州、讃岐、愛媛FC、福島ユナイテッドFC、ガイナーレ鳥取に5連勝。両チームとも厳しいゲーム展開の中、1点差の勝利をモノにして勝利を重ねている。

そして4位は勝ち点49で藤枝MYFC。5位は勝ち点45でカターレ富山、6位に勝ち点44でFC今治。富山は石﨑信弘監督が退任。ヘッドコーチの小田切道治氏が新監督に就任し、昇格への最後の望みをかける。

J2昇格枠「2」を巡る激しいデッドヒートは、夏場を超えて上位グループと下位グループの差が開きつつある。優勝・昇格の可能性がわずかに残るのは、ここに続く勝ち点41の7位・愛媛FC、勝ち点40の8位・AC長野パルセイロまでか。

ただし、今年のJ3リーグは例年になく、各チームの力量差が少ない。下位チームにも、アップセットを起こすポテンシャルは十分。例え上位にいようと、安易な取りこぼしが1試合も許されないことに変わりはない。終盤戦はさらに厳しいゲームが続いていくはずだ。

明治安田生命J3リーグ第26節・FC岐阜戦は9月25日(日)13時より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

熱き戦いに、ぜひご注目を!  

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