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【マッチプレビュー】2022明治安田生命J3リーグ第21節 いわきFC対福島ユナイテッドFC

2022明治安田生命J3リーグ第21節。いわきFCは8月20日(土)、Jヴィレッジスタジアムに福島ユナイテッドFCを迎える。

福島ユナイテッドFCは、福島市・会津若松市、伊達市、国見町、桑折町、川俣町を中心とする福島県全県をホームタウンするプロサッカークラブ。この試合の見どころについて、詳しく紹介しよう。

■2021年、過去最高の5位に。

2006年2月、福島県リーグの福島夢集団ユンカースが東北社会人リーグ2部のFCペラーダ福島(1977年創設)の運営を譲り受け、ペラーダ福島として東北社会人2部南リーグに参戦。これが現在のチームのオリジンだ。
 
そして2008年に「浜通り・中通り・会津を一つにする」という意味が込め、チーム名を現在の福島ユナイテッドFCに改称。東北社会人リーグ1部に昇格を果たす。

2011年3月、東日本大震災によりチームは大きな痛手を負う。多くの選手が退団し、福島県内で試合ができない状況。だがそれでも困難を乗り切り、東北社会人リーグ1部で初優勝し、翌年には東北社会人リーグ1部を連覇。第36回全国地域サッカーリーグ決勝大会で準優勝し、JFLに昇格する。

2013年のJFLでは18チーム中14位。同年9月にJリーグ準加盟クラブの承認を受け、翌2014年よりJ3へと戦いの場を移した。

J3では2014年から2020年まで中位から下位にとどまるも、チームは2021年に躍進。時崎悠監督のもと前半戦から上位争いに加わり、FWのエース・イスマイラの移籍などの逆境を乗り越え、過去最高の5位に入った。

またこの年、ホームスタジアムであるとうほう・みんなのスタジアムのナイター照明設備常備化が決定。クラブはJ2ライセンス申請を行うなど、環境整備を着々と進めつつある。

■上位チームに惜敗も復調傾向。

2022年はジュビロ磐田のヘッドコーチを務めた服部年宏新監督のもと、好調な戦いぶりを見せた。開幕3連勝を果たして勢いに乗り、コロナ禍でベストメンバーをそろえにくい状況の中、開幕10試合で失点わずか3という堅守で勝ち点を積み重ねて上位に入った。

しかし6月、天皇杯での浦和レッズ戦を0対1の惜敗で終えた直後、第11節の藤枝戦に0対6で大敗。リーグ戦と天皇杯を並行して戦った影響か、ここから微妙に歯車が狂い始める。大崩れこそないもののFC岐阜、ヴァンラーレ八戸との試合を0対1で落とし、ギラヴァンツ北九州、カターレ富山と引き分け。なかなか勝ち点を積み上げられない状況が続いた。

7月に入り鹿児島ユナイテッドFC、松本山雅FCの上位2チームに競り負けるも、第18節でガイナーレ鳥取に逆転勝利。チームはここで浮上のきっかけをつかみ、第19節でFC今治と引き分けた。復調の兆しの中、8月13日の第20節・SC相模原戦が台風8号の影響で中止となり、成績は第19節終了時点で6勝7分け9敗の勝ち点21で現在、暫定10位となっている。

フォーメーションは主に3-4-2-1。GKは経験豊富なベテラン山本海人。DFは中央に磐田時代に服部監督の下でのプレー経験を持つ大武峻。左に地上戦、空中戦ともにソツなくこなす堂鼻起暉。右にFW登録で攻撃センスに優れる雪江悠人。

サイドはここ2試合、右にJFAアカデミー出身で立命館大時代に得点王になっている2年目の延祐太、左に攻撃力に優れる橋本陸。

ボランチの核はキャプテン諸岡裕人。攻守でボールのある所に常に顔を出すチームの心臓だ。ここ2試合で諸岡のパートナーを務めたのは、シャドーもこなす上畑佑平士と、チームの顔でもある樋口寛規。樋口は2016年の天皇杯福島県代表決定戦で、いわきFCを相手に決勝ゴールを挙げた選手だ。

2シャドーは市立長野出身高出身の新井光。ここ2試合ボランチに入った上畑、樋口はシャドーでの起用も。そして1トップはここまで7ゴールを挙げているエース高橋潤哉。パワフルな動きとシュートの破壊力はJ3屈指だ。そして、清水エスパルスから育成型期限付き移籍で獲得した栗原イブラヒムジュニアも控える。

■いわきFCの後塵を拝し続けた5年間。

福島ユナイテッドFCといわきFCとの初対戦は、2016年8月の天皇杯福島県代表決定戦。当時、県代表決定戦を8連覇していた県内唯一のJクラブに、この年の4月から福島県社会人2部リーグに参戦したいわきFCが挑戦する、という図式だった。

試合は延長戦にもつれ込む激闘となる。2対1で試合を制したのは福島ユナイテッドFC。だが、無風だった福島県のサッカー界に突如現れた異色のクラブが県の絶対王者を苦しめたこの試合が「福島ダービー」の始まりだった。

翌2017年の天皇杯福島県代表決定戦。福島ユナイテッドFCはいわきFCに0対2で完敗。その後もダービーはいわきFCの勝利が続き(2020年はコロナ禍の影響で両チームは対戦なし)、福島ユナイテッドFCは県内唯一のJクラブでありながら、県代表決定戦の舞台でいわきの後塵を拝し続けることとなる。

そして2022年。いわきFCのJ3昇格により、5月4日の第8節で福島ダービーが実現。

いわきの村主博正監督と福島の服部年宏監督。ともに今年就任した指揮官が率いる両チームは開幕から好調な戦いぶりを見せ、上位をキープ。試合が行われたとうほう・みんなのスタジアムには、福島ユナイテッドFCのJ3参入以来、最多の動員数となる4501名が詰めかけた。

いわきのパワーと走力に、服部年宏新監督率いる福島はJ3トップクラスの優れたパスワークで対抗。一進一退の展開の中、79分にMF山下優人のCKをFW有田稜が頭で押し込み、いわきが1対0で勝利。この試合でJ3の首位に立ち、福島はリーグ戦初黒星。順位を4位に下げた。

だが、この試合の4日後に行われた天皇杯福島県代表決定戦 決勝は、福島ユナイテッドFCが前半のゴールを守り切って1対0で勝利。雪辱を果たし、いわきは6年ぶりに県王者の座を明け渡すことに。

これにより、今年の対戦は1勝1敗のタイ。つまり今節の戦いは、正真正銘のラバーマッチということだ。

■大量得点で八戸を圧倒。

いわきFCは8月7日のJ3第18節で、ホームに松本山雅FCを迎えた。シュート23本を浴びせるもゴールならず。試合は0対0の引き分けに終わった。

そして翌週の第20節は、アウェーでヴァンラーレ八戸と対戦。ここ2試合、勝ち点3から遠ざかっているいわきFCにとっては、是が非でも勝利がほしいゲームだった。

試合はいわきが圧倒する展開。42分にDF家泉怜依が先制ゴールを奪うと、後半さらに勢いを増していく。49分に相手オウンゴールで追加点を奪うと、58分にFW有田稜がヘッドで決め、63分にMF宮本英治がゴール。69分には再び有田が決め、5対0で勝利を収めた。

2ゴールを挙げたFW有田は今季前半戦、交代出場中心ながら4ゴールを記録。第18節の松本山雅戦から2試合連続でスターティングメンバー入りし、八戸戦で2得点を挙げている。今節の起用法に注目したいところだ。

今年3度目にして最後のダービー。いわきFCは同県のライバル・福島ユナイテッドFCをいかに攻略するのか。村主博正監督のコメントを紹介しよう。

■「順位に関係なく、お互いが頑張る試合になる」村主博正監督

「ヴァンラーレ八戸戦は、もともと相手が4バックでくると予想していたところ、5バックで来た。事前のスカウティングと違って使えるはずのスペースがなく、選手は序盤、戸惑っていましたが、自分達なりに探ってボールを動かしながら修正していました。そこに彼らの成長が見えたと思います。

 今は選手達が自信を持ってプレーしています。交代で入る選手達も『俺が活躍してやる。ボールをよこせ』という気持ちで戦っている。選手間での競争意識がプラスのエネルギーになっているし、松本山雅FCさんやカターレ富山さんといった強いチームを相手に思い描く形を作り、フィニッシュまで持っていけたことが自信になっています。

 ただし、最後のところは課題が多い。松本戦も23本シュートを打って0点でした。シュートまでの過程はいい形になっていますが、最後のところですね。枠に飛ばす、決め切ることができていない。そこはもっと練習を積む必要があります。八戸戦はその課題を克服するために臨み、ある程度の成果を出しましたが、今後も継続していかなくてはいけません。

 福島ユナイテッドFCさんはリーグ戦でもここ2試合は1勝1分けで調子を取り戻しつつあります。第18節のガイナーレ鳥取戦では、0対2のビハインドで残り10分から3点を取って逆転しました。そこから勢いが出始めて、チームの流れが変わってきた。清水エスパルスからFW栗原イブラヒムジュニア選手、徳島ヴォルティスからMF大森博選手を補強してパワーアップしており、警戒しています。

 もともとポゼッションを重視するチームで、ボール保持率はJ3でナンバーワン。手間をかけて攻めてくる分、相性は決して悪くないと思っています。ただしダービーですから、何かを変えてくる可能性はある。おそらく順位に関係なく、お互いが頑張る一発勝負の決勝戦のような試合になる。その中で相手がパワーを出してきた時、上回ることができるか。そこが勝負を分けるでしょう」

■上位チームはダンゴ状態。

ヴァンラーレ八戸に大勝し、3試合ぶりの勝利で勝点を42に伸ばして首位をキープしたいわきFC。だが、リーグの状況は予断を許さない。

勝ち点差わずか1で2位につけるのは、8月14日の第20節で松本山雅FCとの上位対決を制した鹿児島ユナイテッドFC。続くのは現在6連勝中と勢いに乗る藤枝MYFC。台風の影響で第20節の沼津戦が中止となり、消化試合数が1試合少ないながらも勝ち点38で3位。藤枝は8月27日の第22節で、いわきFCとの直接対決を控える。

続く4位は松本山雅FC。コロナ禍の影響もあったか第19節の八戸戦を落とし、いわきFCとの引き分けをはさみ、第20節で鹿児島ユナイテッドに2対4で手痛い敗北を喫し勝ち点38。

5位はJ2からの降格チームで、序盤は調子を落としていた愛媛FCが持ち前の攻撃力で5連勝して復調。勝ち点37で追いかける。そして6位が勝ち点36でカターレ富山、7位が同勝ち点でAC長野パルセイロ。8位が勝ち点35でFC今治。

優勝/J2昇格争いに絡むのはここまでか。とはいえ、上位チームがダンゴ状態にある激烈なリーグ戦の行方はまだ見えない。県の盟主の座を懸けた戦いでもある福島ダービー。ここでの取りこぼしは決して許されない。

明治安田生命J3リーグ第21節・福島ユナイテッドFC戦は8月20日(土)16時30分より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

熱き戦いに、ぜひご注目を!

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