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I.G.U.P 検討委員会レポートvol.9 スタジアムの「生地」をこね続ける

いわきFCの新しいスタジアムについて考える5回目の検討会が10月28日に開催されました。今回は、ユースフォーラムで採用されたワークショップのスタイルで議論。2時間ほどのワークショップでしたが、じわじわと新スタジアムのカタチが見えてきました。

グループに分かれて数回のセッションを積み重ねました

すでに過去記事で紹介済みですが、新スタジアム検討委員会(I.G.U.P)では、これまで4回の検討会に加え、2回のユースフォーラムを開催しています。ユースフォーラムの特徴は、それぞれの意見を、対話を通じて集合知的に掛け合わせながら言語化し、スタジアムのビジョンやカタチを議論すること。これまでは若者たちが進めてきたこのスタイルを、今回は私たちが踏襲しました。

膨大な数のボイスをしっかりとインプットする委員たち

まず取り組むのが、過去に収集してきた市民の声を脳内にインプットすること。座長の上林功先生から「過去のワークショップなどで出てきたボイスから選んで、そこから議論を始めること」とお題が出されます。それぞれの個人のアイディアではなく、あくまで「市民の声をベースに」議論してくださいね、ということです。

スタジアムボイスはすでに1000枚近く集まっていて、それが会場に展開されているので、じっくりと向き合うことができます。私も「市民の成長につながるスタジアム」とか「いろんな人たちが集うスタジアム」といった声に着目し、この日のワークショップに参加しました。

テーブルに分かれて楽しくグループセッション

まず取り組むのがワールドカフェ形式のセッション。4名程度のグループに分かれて、それぞれ印象に残ったスタジアムボイスを紹介しながら、委員自身が考えるスタジアムのキーワードを出し、それをもとにディスカッションしていきます。

このあと、テーブルに残る班長さん以外のメンバーがテーブルを移り、メンバーをシャッフルしながら3回ほどセッションを繰り返し、さまざまなメンバーと意見を交換していきます(この少人数でメンバーシャッフルしながらグループセッションを行うことをワールドカフェといいます)。

産業振興を掲げる委員、子どもたちの居場所の必要性を訴える委員、具体的なアイディアを挙げる委員もいますし、理念的な言葉を大事にする委員もいて、議論は尽きません。

それぞれの個性やキャリアが発揮され、まとめきれない議論に
手元の模造紙にはみっちりとメモが書かれていきます

グループセッションが終わると、元のテーブルに戻り、目の前に置かれた用紙に、現段階でのキーワードをもう一度書き出し、自分と似ている言葉や方向性を共有しているメンバー同士で新しいグループを作ります(これをマグネットテーブルと呼びます)。すると、15名ほどの参加者が4つのグループに分かれました。

そこで出てきた4つのキーワードを紹介しましょう。

常に時代の先をゆく可変的スタジアム
世界中を探してもいわきにしかないスタジアムであり、新しい文化を創造するスタジアム。だれに対しても開かれていて。だれでも使えて、みんなにやさしいスタジアム。ここにしかない新しさを追い求めたい。常に最新ということは可変的であり、変化を許容していくことが求められる。さまざまなものが変化するスタジアムだからこそつねに新しい。

まちの構造を変えるスタジアム
新スタジアムをつくることを通じて、スタジアムが建つまちの構造をガラリと変えるスタジアムが必要。構造を変えるには、日常的に集まる機能が求められる。スタジアムの中、あるいはそばに、行政機能や医療、福祉などの施設を集め、周辺の宅地造成なども含めて新しいまちをつくる。大きなソーシャルインパクトを生み出せるし、いわき・双葉地域が変わる。

いわき・双葉の教育、学びを支えるスタジアム
教育の選択肢の少なさはいわき・双葉地域の課題。子どもたちへの教育は未来への投資であり、学びや成長といったキーワードは重要だ。子どもたちの居場所になる場だけでなく、その場を通じて最先端の教育を研究・実践するラボが併設できれば保護者や学生も集まるし、移住者の増加にも貢献できるのではないか。教育という地域の土台を、スタジアムで支えたい。

人が集い、「偶然の出会い」が生まれるスタジアム
試合以外の日、日常的に使えるスタジアムでなければ、みんなが誇れるスタジアムになれない。多世代の人たち、多様なバックボーンの人たちが出会う場所になることが大事だ。フリースクールのような場所、子どもたちが放課後に集まる場所ができると、「偶然の出会い」のようなものも生まれる。多様な人が、集い、出会えるというキーワードを大切にしたい。

いかがでしょうか(こうしてまとめていますが、もちろん、ここに収集しきれないたくさんのヒント・言葉が出ています)。スタジアムのカタチはまだ具体的ではありません。今は、どんなスタジアムをつくるかの「方向性」を探っている段階です。

ここで重要なのは、4つあるキーワードのすべてが、「市民の声」を素材に作られているということ。議論をするたびに新しく話をするのではなく、常に「これまでの議論」や「市民の声」を下敷きに議論を重ねています。検討会がスタートしてから半年が経過しましたが、これが掛け声ではなく I.G.U.P の思想というか哲学になってきたな、という気がします。

いわきFCの大倉代表は、当初から「主語はいわきFCじゃなくて市民なんだ」と言い続けてきましたが、たしかに私たちは「いわきFCが必要としているスタジアム」は議論していないように思います。むしろ、いわきFCを含めた「地域」の「未来」の話をし続けてきた気がしますし、こんな進め方でほんとうにスタジアム作っていいの?という気さえするくらい市民が主語になっていると感じます。

パン生地をこね続けることの重要性を語る上林座長

座長の上林先生は、現在の状態を「パンの生地をコネコネと練り上げている段階」だと表現します。新しいパンをその都度作るのではなく、これまでの参加者たちが練り上げてきた素材を、委員が継続して練り上げるプロセスだということです。練り上げることで弾力や歯応えが生まれ、熟成される。カタチだけおいしそうなパンではダメだよ、ということかもしれません。

最近では、知り合いから「スタジアムはどこにできるの?」「いつまで議論してるの?」という声を頂戴することが増えましたが、今はまだ、さまざまな人たちと共にパン生地をこねる段階。1コネでも2コネでもいい。多様な人たち、一人でも多くの方と生地をこねることが大事なんだなと改めて再確認しているところです。

もちろん、どんなパンに仕上げるかを検討するのが私たちのミッションなので、今後、急ピッチで構想していくことになりますが、ある程度はっきりとしてくるまでは、もうしばらくお待ちください。

「クラブではなくて市民を主語に」と言い続けている大倉代表

とはいえ、スタジアムの全体像、コンセプトのようなものについては、おぼろげではありますが、見えてきた気がします。さきほど出された4つのキーワードに加え、過去のユースフォーラムで出てきたキーワードも付け加えて振り返ってみましょう。こんな感じにまとまるでしょうか。

商業施設と融合し、サッカーに興味がない人も一日中滞在でき、文化が混ざり合うカオスな空間。愛のあるコミュニケーションが生まれ、アウェイのサポーターも地元の人たちと共に「いわきらしいもの」が楽しめる。そんなおもてなしが集合する場所であり、いわきの豊かな自然や海を借景とする公園のようなスタジアム。そこに防災機能も備わる・・・。

おおおおお! という気がしてきますよね。これはすごいスタジアムになりそう。そして、何度も繰り返しますが、こうしたキーワードは、いわき市民やサポーターから集められたものです。市民を主語にした議論が、着実に積み重ねられていると感じます。

以上、I.G.U.Pメンバーの小松理虔がレポートしました。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。今後はさらに具体的な議論になっていくと思いますので、ぜひこちらの note を継続してフォローいただければと思います。ではまた!

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