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【マッチプレビュー】2022明治安田生命J3リーグ第32節 いわきFC対鹿児島ユナイテッドFC

2022明治安田生命J3リーグ第32節。いわきFCは11月6日(日)、Jヴィレッジスタジアムに鹿児島ユナイテッドFCを迎える。

鹿児島ユナイテッドFCは、鹿児島県鹿児島市をホームタウンとするプロサッカークラブ。この試合の見どころを紹介しよう。

■九州リーグに所属した2チームが統合。

鹿児島ユナイテッドFCのオリジンは、九州サッカーリーグ所属のヴォルカ鹿児島とFC KAGOSHIMAという二つのチームである。

ヴォルカ鹿児島は1959年に、鹿児島県の教員によるサッカー部「鹿児島サッカー教員団」として創設。1973年より九州サッカーリーグに所属。1995年に「ヴォルカ鹿児島」と名称変更し、将来の全国リーグ戦参戦を目指してクラブチームに移行する。

FC KAGOSHIMAは1994年、鹿屋体育大学体育会サッカー部の学生を主体とする「鹿屋体育大学クラブ」として創設された。2004年に九州サッカーリーグに初昇格。将来の全国リーグ参戦をにらみ、チーム名を「大隅NIFS ユナイテッドFC」とし、一般社会人にも門戸を開いた。そして2010年3月25日、チーム名を「FC KAGOSHIMA」に変更。

両クラブはそれぞれ将来のJリーグ加盟を目指していたが、Jリーグは両チームの一本化を求めていた。2013年、両チームはともに第37回全国地域サッカーリーグ決勝大会決勝ラウンドに進出。「いずれかのクラブが地域決勝3位以内」というJFL入会基準を満たしたことで、両チームは統合。「鹿児島ユナイテッドFC」としてJFL入会申請を行い、承認を受けた。

クラブ名の「ユナイテッド」は英語で「連合」「合併」を意味する。これは

①ヴォルカ鹿児島とFC KAGOSHIMAの連合
②薩摩半島、大隅半島および離島を含む鹿児島県民の協力
③県内在住者のみならず、県外および世界中にいる鹿児島を愛する人々の団結

という意味が込めて命名したものだ。

クラブエンブレムは、鹿児島のシンボルである桜島と錦江湾をイメージした絵をバックに、ヴォルカ鹿児島のチームカラーの赤とFC KAGOSHIMAのチームカラーのライトブルーを配したデザインである。

■「アグレッシブでダイレクトにボールを奪うチームを目指す」と宣言。

2014年からのJFLでは、2015年のリーグ戦で年間4位に入り、翌年からJ3参戦を果たす。そして2018年、三浦泰年監督のもとで2位に入りJ2昇格。しかし2019年、現ガイナーレ鳥取監督の金鍾成氏のもと奮闘を見せるも21位。1年で無念のJ3降格となった。

2020年はJ2返り咲きならず、金鍾成監督は退任。元横浜F・マリノスのコーチ、アーサー・パパス氏を監督に招聘するもシーズン途中で退任。暫定監督をはさみ、7月に元ヴィアティン三重監督の上野展裕氏が監督に就任も、優勝争いに絡めないまま7位に甘んじ上野監督は退任した。

今シーズンは新監督に、元なでしこリーグの伊賀FCくノ一三重監督で、Jリーグ初采配となる大嶽直人氏を招聘。「アグレッシブでダイレクトにボールを奪うチームを目指す」と宣言した。

今季は13選手が加入。GKに大阪体育大から泉森涼太、CBにアルビレックス新潟から岡本將成、テゲバジャーロ宮崎から井原伸太郎、AC長野パルセイロから広瀬健太ら。SBにカマタマーレ讃岐から薩川淳貴。MFに新潟からロメロ・フランク、水戸ホーリーホックから木村祐志、SC相模原から星広太と、J2主力級の選手を獲得。さらに桐蔭横浜大から大学日本代表経験のある圓道将良、関西学院大から渡邉英祐が加入している。

そしてFWは経験豊富な有田光希をヴァンフォーレ甲府から、福田望久斗を東海大学から獲得。FW有田は今季15得点を挙げ、いわきFW有田稜、藤枝FW藤岡浩介と並び得点王ランキング1位。二人の有田の得点王争いの行方にも注目したい。

■開幕戦での対決は引き分け。

鹿児島ユナイテッドFCといわきFCの初対戦は今年3月13日のJ3開幕戦。4832名の大観衆が集まった敵地・白波スタジアムで、いわきFCは上々のJ3デビューを飾る。

試合は前半3分、いわき右SH岩渕弘人が右サイドへ走り込み、オーバーラップしたSB嵯峨理久にパス。嵯峨が相手DFをかわして左足でシュート。これが決まっていわきがJ3初ゴールを挙げて先制。しかし前半終了間際、鹿児島はFKからFW有田光希のゴールで同点に追いつく。試合はその後、一進一退の攻防となり、そのまま1対1でタイムアップ。

J2経験もあるクラブとのアウェーゲーム。5000名近い相手ファンの応援に臆することなく、いわきFCは持ち前のフィジカルの強さを存分に発揮。この試合で自信をつけ、リーグ戦で勝利を積み重ねていった。

鹿児島も負けていない。第3節にアウェーで松本山雅FCに土をつけ、第4節の引き分けを挟み4連勝。さらに5月から6月にかけてカターレ富山、FC今治、ギラヴァンツ北九州、カマタマーレ讃岐、アスルクラロ沼津に5連勝。首位に立った。だが6~7月に5勝4敗とやや停滞したことで、いわきに首位を譲ることに。

8月を2勝1敗で乗り切ると、9月に入って沼津、讃岐、北九州に3連勝。首位追撃体制を整えたと思いきや、9月24日の第26節で波乱が起こる。金鍾成監督のもとで調子を上げていたガイナーレ鳥取に、0対6のショッキングな大敗を喫してしまう。

そして10月に入って2勝2敗1分けと今一つ乗り切れず、特にここ3試合では1分け2敗と停滞。直近の第30節で愛媛FCに0対1で敗れてしまい、4位に転落した。

ここ3試合のメンバーはGK白坂楓馬、DF星広太/広瀬健太/岡本將成/薩川淳貴/小野寺健也/砂森和也、MF木村祐志/野嶽寛也/木出雄斗/ロメロ・フランク/五領淳樹/渡邉英祐/圓道将良/中原秀人/牛之濵拓/野嶽寛也、FW有田光希/福田望久斗/山本駿亮/端戸仁/米澤令衣。他に2019~2020年にいわきFCでプレーしたDFウェズレイ・ロドリゲスも在籍している。

現在勝ち点60。昇格圏内の2位以内入りが厳しくなりつつあるだけに、残り3試合にすべてを懸ける。それだけに、今節のいわき戦が決して負けられない激しいゲームとなるのは間違いない。

■決定力不足に泣き、手痛いシーズン4敗目。

10月30日の明治安田生命J3リーグ第30節。いわきFCは敵地・宮崎に乗り込み、テゲバジャーロ宮崎との一戦を迎えた。

アウェーの宮崎戦といえば、2年前のJFL最終戦。J3昇格に最後の望みを残していたいわきFCは、0対3で絶望の底に突き落とされている。

そんな宮崎と戦うに当たり、いわきFCはスターティングメンバーに変化をつけた。

GKは坂田大樹。CB遠藤凌のパートナーに2年目の米澤哲哉が今季初先発。左SBは日高大。右SBには江川慶城が入り、右SHに嵯峨理久。MF山下優人・宮本英治のコンビは変わらず。左SHは山口大輝。2トップはFW古川大悟と岩渕弘人。右サイドの岩渕・嵯峨が1列前に上がる布陣となった。

負傷者が出ている攻撃陣でFW有馬幸太郎、MF鈴木翔大に加え、FW吉沢柊が離脱。さらにはJ3得点王のFW有田稜と、CBの軸となっていたDF家泉怜依がコンディション不良でベンチ。メンバーのやりくりからは、苦しい台所事情がうかがえる。それでもチームは開始早々からいつも通りの積極的な攻守を見せ、FW古川、MF宮本らが宮崎ゴールに迫る。

しかし、前半16分に不意をつかれてしまう。宮崎守備陣の自陣からのロングボールに宮崎FW橋本啓吾が追いつき、CB米澤哲哉を振り切ってゴール。ここまで劣勢だった宮崎が先制する。

いわきは後半開始からFW古川に代え谷村海那を投入。FW岩渕、MF山口らとともにゴールを狙うも、宮崎GK石井健太の好セーブに阻まれる。61分にはFW有田がイン。CB米澤を下げ、右SBに入っていた江川をCBに、右SH嵯峨を定位置の右SBに下げ、これまで通りに近い布陣で宮崎ゴールに向かう。

74分には岩渕弘人に代え川谷凪を投入。いわきは宮崎を大きく上回る合計12本のシュートを浴びせるも、昨年いわきFCに在籍したDF奥田雄大ら宮崎守備陣が身体を張り、5バックで守り抜いた。

試合はそのままタイムアップ。先制点以外はほぼ宮崎を封じ切ったいわきFC。だが決定力不足に泣き、手痛いシーズン4敗目を喫した。

厳しい敗戦を経て迎える4位との決戦。いわきFCはいかにして鹿児島ユナイテッドFCを攻略するのか。村主博正監督の談話を紹介しよう。

■「難しい試合になるのは間違いない」村主博正監督

「前節はファンの皆さんや記者の方々など、たくさんの人が宮崎までかけつけてくださりました。みなさんが朗報を楽しみにされている中で結果を出せず、申し訳ありませんでした。

 テゲバジャーロ宮崎さんは、崩せそうでなかなか崩せなかった。すべての力を振り絞って守り抜かれる中で、見えない力の大きさが試合を左右することを実感しました。

 そんな状況でも試合への入り方はとてもよかったし、守備に関してはシュート2本に抑えてほぼ何もさせなかった。唯一の失点の場面はDF米澤にとって難しい判断でした。流れを切ってしまえばよかった場面ですが、マイボールにしようという思いで判断が遅れた。米澤は初先発でしたが、あの場面以外はいい出来だったので悔やまれます。

 今はどこのチームも必死な状況。簡単に勝たせてはくれません。鹿児島ユナイテッドFCさんもプレッシャーがかかっていますから、今節は固いゲームになる。その中で点を取って勝ちにいかなくてはならない。負傷者が多い中で、今節の選手起用は特に悩みどころ。前線からの積極的な守備でスイッチを入れ、ペースをつかみたい。試合展開によって選手起用は大きく変わってくると思います。

 鹿児島さんには15点を取っているFW有田光希選手、MFロメロ・フランク選手、木村祐志選手など、Jリーグで経験を重ねてきた1発を持ったアタッカーがいますので、90分間気を抜くことはできません。前節は愛媛FCに敗れはしたものの、チャンスの数では圧倒していた。力のあるチームなので難しい試合になるのは間違いない。開幕戦で戦った相手なので、今の時期に再び戦うことで、シーズンを通じてどれぐらい成長できたかを計ることができます。そういう意味でも非常に楽しみです。

 まずは自分達のサッカーができるか。後ろ重心にならず、前を向いてゴールに向かう姿勢を示せるか。気持ちが守りに入っている選手が一人でもいたら、チーム全体の歯車が狂ってくるのがサッカーという競技。今節もいわきFCらしい戦いを追求します」

■混沌とする昇格争い。今節はまさに決戦。

首位いわきの連勝が5でストップ。6試合ぶりの黒星で勝ち点は69のまま。J2昇格決定は次節以降へ持ち越しとなった。2位藤枝MYFCはガイナーレ鳥取と引き分けて勝ち点63。首位いわきとの勝ち点差は6と、1ポイント縮まっている。

そして、4位につけていた松本山雅FCが信州ダービーでAC長野パルセイロに2対1で競り勝ち、勝ち点63で藤枝と並んだ。ただし藤枝には得失点差で及ばず3位。松本が2位以内に入るには勝ち点で藤枝を上回る必要があり、残り試合の勝利にすべてを懸ける。

いよいよ残り3節。いわきFCは今節に勝利すると勝ち点72で、2位藤枝・3位松本がともに引き分けまたは敗戦の場合、優勝。どちらかが引き分けまたは敗戦の場合でも、昇格は確定する。いわきが鹿児島と引き分けた場合でも、藤枝・松本がいずれも敗れれば優勝。どちらかが敗れれば昇格は確定する。

ただし、いわきはここに来て多くの負傷者を抱えている状況。皮算用、星勘定をしている場合ではない。メンバー構成に不安を残す手負いのいわきに、後のない鹿児島が襲いかかる。

明治安田生命J3リーグ第32節・鹿児島ユナイテッドFC戦は11月6日(日)13時より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

運命の戦いに臨む選手達を後押しするために。そして、栄光の瞬間を見届けるために。

日曜日はぜひ、Jヴィレッジスタジアムへ。


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