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【マッチプレビュー】2022明治安田生命J3リーグ第18節 いわきFC対松本山雅FC

2022明治安田生命J3リーグ第18節。いわきFCは8月7日(日)、Jヴィレッジスタジアムに松本山雅FCを迎える。

松本山雅FCは、日本の長野県松本市、塩尻市、山形村、安曇野市などをホームタウンとするプロサッカークラブ。この試合の見どころについて、詳しく紹介しよう。

■クラブ史上初めてのJ3。

 オリジンは1965年、国体の長野県選抜選手を中心に作られた「山雅サッカークラブ」。名称は当時、選手達が松本駅前の「純喫茶山雅」に通っていたことに由来する。ちなみに店名は、山好きの店主が「山」と「優雅」を組み合わせて命名したもの。


純喫茶山雅は1978年に閉店したが、2015年、クラブ設立50周年記念事業の一環として、チームの原点である喫茶山雅の復活プロジェクトがスタート。2017年、松本市内にクラブ直営の「喫茶山雅」がオープンしている。

2004年に運営元として「特定非営利活動法人アルウィンスポーツプロジェクト」が設立。将来のJリーグ入りを目指すクラブとして、北信越リーグ2部から再出発。2005年にチーム名を松本山雅FCに改称し、北信越リーグ1部に昇格する。

2006年は開幕戦で前年度優勝チーム、長野エルザサッカークラブ(現・AC長野パルセイロ)を破り、リーグ戦最終節まで優勝を争った。2007年も最終節までAC長野パルセイロ、ツエーゲン金沢らと優勝争いを展開。AC長野パルセイロと「信州ダービー」は特に大きな盛り上がりを見せ、地域リーグながら6000人を超える観客動員を記録している。

そしてこの年、リーグ戦では得失点差で初優勝。全国地域サッカーリーグ決勝大会(地決)へ進出するもグループリーグ敗退。翌2008年も地決に進出したが再びグループリーグ敗退。二度にわたり「地決の壁」に阻まれてしまう。

悲願のJFL昇格を果たしたのが2009年。リーグで4位に終わるも、第45回全国社会人サッカー選手権大会で優勝。3年連続で地決に滑り込み、一次ラウンドグループCを全勝突破した。

ホームスタジアムのアルウィンで行われた決勝ラウンドでは初戦、ツエーゲン金沢を相手にPK戦で敗れるも2戦目でY.S.C.C横浜に勝利。優勝のかかった3戦目で日立栃木ウーヴァSC(現・栃木シティFC)を破った。アルウィンに集った1万人を超えるファンの前で悲願のJFL昇格を成し遂げるとともに、長野県のサッカークラブ初の全国リーグ参加を果たした。

2010年に株式会社松本山雅が設立。2011年に横浜Fマリノスから元日本代表DF松田直樹、ロアッソ熊本から現・いわきFCコーチの渡邉匠らを獲得。チームは中心選手だった松田の急逝という不幸を乗り越えてリーグ4位に入り、J2へ。

2012年より反町康治監督を招聘。反町体制3年目の2014年にJ2で2位に入り、J1昇格。2015年にはホームゲームで18906名の入場者数を記録して話題を呼ぶも16位に沈み、1年でJ2降格。しかし3年後の2018年にJ2優勝を果たし、再びJ1に昇格する。

現・いわきFCのGK田中謙吾が長野から移籍した2019年(田中は松本で2年プレーして、2021年に長野に復帰。2022年よりいわきへ)。FW前田大然が松本山雅の選手として初めてA代表のメンバーに選出されるなど話題を呼ぶも、リーグ戦で低迷。17位でJ2に降格するとともに、8年にわたりチームを指揮した反町監督は辞任。

2020年は布啓一郎監督就任も低迷。シーズン途中で柴田峡監督に交代するも巻き返せず13位に終わった。横浜FCから期限付き移籍でDF星キョーワァンを迎えた2021年(星はJ2で20試合出場し、2022年よりいわきFCに期限付き移籍)も、J2下位に低迷。元ジュビロ磐田の名波浩監督を招聘するも悪い流れを断ち切れず22位。クラブ史上初めてのJ3降格となった。

■経験豊富な選手と外国人、有望な若手がバランスよく並ぶ。

2022年は名波体制2年目。チームスローガン「One Soul 原点回起」を掲げ、モンテディオ山形からGKビクトル、ジェフユナイテッド市原・千葉からDF安田理大、ファジアーノ岡山から3年ぶりの復帰となるMFパウリーニョを獲得。新人では東京学芸大から住田将、流通経済大からFW菊井悠介、GK薄井覇斗らを迎えた。ちなみにGK薄井は大学時代、現いわきGK鹿野修平と同期。薄井と鹿野は、ともに流経大のゴールマウスを守ったライバル同士。

現行スカッドは経験豊富な選手と外国人、有望な若手がバランスよく並ぶ。GKはビクトル。DF陣は安定感の高い大野佑哉、常田克人、下川陽太。中盤はアンカーにボール奪取能力の高いパウリーニョ、IHに住田将、菊井そして安東輝ら。

サイドはいわき戦で2得点を挙げた外山凌と前貴之。FWはU-19日本代表選手であり、ここまで7得点を挙げていわきFW有馬幸太郎、MF岩渕弘人と並ぶ得点王ランキング6位に入っている横山歩夢、ユース出身でレノファ山口から戻った小松蓮、重戦車ルカオら。

いわきFCとは、2022年6月26日の第14節で初対戦。いわきFCは松本のホームスタジアム、サンプロアルウィンに初見参。上位同士の一騎打ちには7491名の観客が詰めかけた。

試合は39分、DF日高大が左足一閃のゴール。いわきが先制するも、松本は前半終了間際と52分にMF外山凌がゴールを挙げ逆転。その後松本に退場者が出て試合は11人対10人となるも、松本は試合を確実にクローズ。いわきは1対2で敗れ、悔しいシーズン2敗目。松本はこの試合をきっかけに調子を上げ、4連勝を果たす。

だが7月。選手12名が新型コロナウィルス陽性となり、チームは足踏みを強いられる。第18節のいわきFC戦が延期となり、第19節のヴァンラーレ八戸戦はメンバーを大幅変更。GKに20歳の神田渉馬、DFに宮部大巳、IHに佐藤和弘、サイドに浜崎拓磨、そしてFWに17歳の田中想来が入ったが、後半にセットプレーから失点。0対1で敗れ、連勝は4でストップとなった。

松本山雅FCは第19節終了時点での戦績は、11勝4分け3敗の勝ち点37。いわきFCとは勝ち点差1で、現在暫定4位となっている。コロナ禍の影響で名波監督も不在の中、選手達はどのような戦いを見せるのか。経験豊富なクラブゆえ、少なくともしっかりと立て直してくることだけは間違いない。

■苦しい展開で勝ち点1を得る。

いわきFCは第17節でアスルクラロ沼津と対戦し、MF宮本英治、MF山口大輝のJリーグ初ゴールなどで4対0の勝利。そして第18節の松本山雅戦の延期をはさみ、7月30日の第19節は、上位を争う難敵・カターレ富山とのマッチアップとなった。

この試合も開始からプレッシャーをかけるいわきFC。富山は引いて守備を固め、ロングボールで裏を狙う。ここまで優れた決定力を示してきたFW大野耀平にボールを送るも、いわき守備陣が身体を張ってシュートを打たせない。

試合は前半10分、意外な展開となる。富山DF林堂眞のFKが風で伸び、直接ゴールへ。カターレが思いもよらぬ形で先制する。

いわきは15分過ぎから攻撃の形を作り始める。日高大、嵯峨理久の両SBが積極的に攻め上がり、FW谷村海那、MF山口、岩渕弘人らが相次いでゴールに迫るも、得点には至らない。

後半に入り、足が止まり始める富山。1点を追ういわきは59分、FW谷村に代え鈴木翔大、MF岩渕に代え今季初出場の杉山伶央、73分にはFW有馬幸太郎に代え吉澤柊を入れて、追いつきにかかる。

86分には、MF山口に代えてFW有田稜を投入。この起用が当たった。87分、左サイドからMF山下優人が上げたクロスをFW吉澤が胸で落とし、これを有田が蹴り込んで同点。第3節・愛媛FC戦に次ぐファーストタッチでのゴールとなった。

交代出場中心ながら今季4ゴール目を挙げた有田の活躍。いわきFCは難しい戦いを引き分けに持ち込み、勝ち点1を積み上げた。


■「いつも通り、どんどん前に攻めていきたい」村主博正監督。

「まず第17節の沼津戦ですが、前半は攻めているようには見えましたが物足りなさを感じていました。相手が引いている中、きれいにプレーしよう、上手く崩してやろうとしているように見えたし、走れていなかった。そこでハーフタイムに喝を入れました。後半開始から入れたFW谷村がチャンスを作り、崩していくことができた。後半からは、沼津さんをフィジカルで上回ることができたと思っています。

 第19節の富山戦のポイントは、先に失点してしまったことでした。おそらく相手のミスキックだと思いますが、風でいきなりボールが伸び、GKが読み切れなかった。これは仕方ない失点だと割り切りました。

 試合を通じてこちらが攻める時間帯が多い中、ただボールを回させられるのではなく、意図的に相手を動かして展開していく工夫が見えたのは選手達の成長だと思っています。

 同点ゴールを挙げたFW有田は、スターティングメンバーにはなかなか入れていなかった中で、この試合で『今の状況をどうにかしよう』という強い気持ちで入ってくれました。FWの仕事はゴールという結果を出すこと。今回しっかりと価値を示してくれましたし、今後は『こいつなら必ずどうにかしてくれる』と周りに信頼される選手に成長してほしいです。

 加えて、後半からMF岩渕弘人に代えて杉山を初めて起用しました。負傷が多くここまで出場機会がありませんでしたが、もともとスピードはチームナンバー1。自分の形になったら、そう簡単に止められる選手ではない。FWとサイドの両方で考えていますが、どちらで起用されてもどんどん仕掛けてほしいと思います。

 松本山雅さんは基本的に7人で固く守り、カウンターを狙うスタイル。そう簡単にはシュートを打たせてもらえないでしょうし、ボックス内でのフィニッシュワークに長ける能力の高いアタッカーがいます。彼らに自由を与えれば得点に結びつくプレーができてしまうので、シュートを打たせないようにする地道な動きが大切。また、セットプレーもカギになるでしょう。

 大事なのは。勝負を決めるポイントをしっかり押さえること。前回の対戦では決して完全に崩されてはいないのですが、シュート直前の相手への寄せや、クロスを上げさせないための対応など、ディテールの部分で足りないものがあった。もうワンランク厳しさを上げないと、勝ち点は取れません。

 松本山雅さんはチームとしての経験値はこちらよりずっと上。難しい試合になることは間違いありません。こちらは彼らの状況に関係なく、90分を通してしっかり動ける準備をします。いつも通り最初からどんどん前に攻め、後半はさらにギアを上げていきたい。8月は勝負どころ。この試合をしっかり勝ち、自信につなげていきます」

■激烈なリーグ戦の今後を大きく左右する一戦。

第19節のアウェーゲーム、カターレ富山戦を1対1の引き分けで乗り切ったいわきFC。ここまでは11勝5分け2敗の勝ち点38で首位に立っている。

ますます混迷を極める2022年のJ3。ここまで首位を走ってきた鹿児島ユナイテッドFCが7月30日の第19節で藤枝MYFCに敗れ3位に後退。貴重な勝利を得た藤枝が6連勝で2位に入った。現在はいわき、藤枝、鹿児島の3チームが勝ち点38で並び、松本が勝ち点37で4位。いわきと引き分けたカターレ富山は勝ち点36で5位。6位には4連勝中で順位を上げてきた愛媛FCが入った。

ただしいわきと松本は他チームより消化試合数が1試合少なく、現在の順位は暫定。勝ち点差1のいわきと松本の直接対決は、J2昇格枠「2」を争う激烈なリーグ戦の今後を大きく左右する一戦となるだろう。

明治安田生命J3リーグ第18節・松本山雅FC戦は8月7日(日)16時30分より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

熱き戦いに、ぜひご注目を!

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