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【マッチプレビュー】2022明治安田生命J3リーグ 第2節 いわきFC対SC相模原

2022明治安田生命J3リーグ第2節。いわきFCは3月20日(日)、JヴィレッジスタジアムにSC相模原を迎える。

現体制となり、福島県社会人リーグ2部に参戦して6年。ついにJ3の舞台へ足を踏み入れたいわきFC。ホーム初戦の相手は、今年J2から降格してきたSC相模原。対戦相手と試合の見どころについて、紹介していこう。

■ホーム初戦。相手に不足なし。

SC相模原のホームタウンは、神奈川県の相模原市、海老名市、座間市、綾瀬市、愛川町。母体の企業チームなしに元日本代表選手がゼロから立ち上げたという、ユニークな起源を持つクラブだ。

設立のベースにあったのは市民の思い。相模原は人口70万人を超える都市ながら、地理や歴史的経緯によって市民のロイヤリティが希薄な面があった。

「サッカークラブの誘致で、住民の心を一つにしたい」

そんな思いを具現化すべく立ち上がったのが、名古屋グランパスエイトで活躍した元日本代表・望月重良氏。相模原の飲食店で食事をしていた時に店主から要望されたことをきっかけに、望月氏は挑戦を決意。2008年に運営元「スポーツクラブ相模原」を立ち上げ、SC相模原を創設する。
 
設立時からJリーグを目指すと明言。JリーグやJFL経験者を迎え神奈川県リーグ3部から船出。初年度から昇格を続け、2010年2月には早くもJリーグ準加盟チームとして承認を受ける。

2010年~2011年にかけて神奈川県リーグ1部→関東リーグ2部→同1部と昇格を続けながら、Jリーグ準加盟チームとして地域リーグ決勝大会に参戦。だが2年連続で敗退し、JFLへの飛び級は失敗に終わる。

それでも2012年に関東リーグ1部を制し、地域リーグ決勝大会への出場権を自力獲得。決勝ラウンドを3勝全勝で制して優勝し、晴れてJFL昇格を果たした。そしてJFL 1年目の2013年、Jリーグ準加盟チームとして翌年から新設されるJ3への参入が承認され、J3発足12チームの一つに。

県リーグ3部からたった6年でJリーグ入りした驚異的成長は、いわきFCとややオーバーラップする。

J3では、2015年に4位に入った以外は中位~下位の成績。大きな節目となったのが2020年のことだった。もつれた昇格争いの中、3位で迎えた最終節に勝利。2位チームの敗戦によって最後の最後で2位に滑り込み、劇的な形でJ2昇格。地域に大きな喜びをもたらす充実のシーズンとなった。

2021年のJ2リーグでは8勝14分20敗で19位。ただし、戦いぶりは悲観すべきものではなかった。シーズンを通じて連敗は少なく、残留争いも最終節まで粘った。1年でJ3に戻ったものの、4チーム降格という厳しいレギュレーションの中、初挑戦のJ2で上々の健闘を見せたといえる。

クラブカラーは緑。エンブレムの六角形は、相模原市の特徴=工業を支えるボルトがモチーフ。5つの星は相模原市、そして2007年に相模原市と合併した城山町・津久井町・相模湖町・藤野町を示す。ホームスタジアムは相模原ギオンスタジアム。現在、アメリカンフットボールのノジマ相模原ライズ、ラグビーの三菱重工相模原ダイナボアーズ、女子サッカーのノジマステラ神奈川相模原の4チームが共用する新スタジアムの建設構想を温めている。また、2021年4月にはディー・エヌ・エーがスポーツクラブ相模原の株式を19%取得して経営参画。さらには海老名市をホームタウンに加えるなど、ビッグクラブを目指して基盤の強化が進む。

2022年は19名と多くの退団選手を出したが、主力の流出を可能な限り抑えることに成功。DF水本裕貴選手や渡部大輔選手、FW船山貴之選手ら計13名を補強した。選手もさることながら、最も大きいのが、昨季途中に就任した高木琢也監督の続投だろう。横浜FCやV・ファーレン長崎をJ1に昇格させるなど十分な実績と経験を持つ高木監督のもと、1年でのJ2返り咲きを狙う。

ホーム初戦の相手としては、まさに申し分のない強敵。J2昇格最有力候補との評価もあるSC相模原を、いわきFCはいかに攻略するのか。村主博正監督のコメントを紹介しよう。

■ゲームコントロールの重要性。

「前節の鹿児島ユナイテッドFC戦は、非常にいい経験になりました。しっかりトレーニングを積むことはできていたし、高い強度で前に向かう戦い方もできていた。ただし、そう簡単には勝ち点3は取れない。チームとしての課題がよく見えたゲームでした。

 選手達はJ3の舞台を初めて経験する中で、探り探り戦っているように思いました。今まで通りのやり方が通じる部分と通じない部分を、選手達は見定めることができたのではないでしょうか。例えば50/50のボールがなかなか自分達のものにならなかったりと、選手達もJFLとの違い、そしてJ3クラブの技術の高さを肌で感じてくれたと思います。

 前半の早い時間に点を取れたこと、そして得点後に攻められたものの決定機を作らせず、最後のところでしっかり身体を張って守れたことは自信になりました。反面、課題は前半の得点後のゲーム運び。やや相手に合わせてしまい、攻撃で時間を作れず、守備に回る時間がおのずと長くなってしまいました。

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 SBの嵯峨理久が思い切って前に出たことが開始早々の先制点につながりました。でもその後は、チャンスもありましたが行けなかった。2点目を取りに行くよう伝えましたが、やや守りに入ってしまった。もう一歩踏み出して、恐れずに点を取りに行ってほしかったですね。試合後に映像を見て、選手達をもう少し伸び伸びとプレーさせてあげたかったと思いました。

 ポイントは攻撃の時間をしっかり作ること。そのためには攻守の切り替えを早くして、もっと積極的に高い位置でボールを奪う必要がある。その結果ゲームをコントロールできれば守備にも余裕が生まれるし、それができなければ、クオリティの高いチームにはやられてしまう。

 失点はセットプレーからのものでしたが、対応の仕方に課題が残りました。鹿児島のMF木村祐志選手とFW有田光希選手という経験値の高い二人によるものでしたが、こちらの注意と徹底次第で防げた失点でした。Jリーグでは彼らのような経験のある選手が、抜け目なく、したたかにやってきます。試合を通じて押されていようと、一発のプレーで勝ちを持って行くクオリティのある選手は、J3にもいます。

 勢いだけでは勝ち点3は取れない。選手達もそれがよくわかったと思います。『よく頑張ったね』『いいゲームだったね』と言われる試合はできても、勝ち点がついてこない。そんな状況を避けるためにも、取れる時にしっかり取ること、そしてリスク管理、ゲームマネジメントの面でワンランク成長していくことが必要。ファンの皆さんに『魂の息吹くフットボール』を見せるためにも、もっとミーティングを重ねて戦術理解を深め、経験値を上げていきたい。

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 フォーメーションは4-4-2で臨みましたが、先発でピッチに送り出した選手は現状のベストイレブン。前半、攻撃であまり時間を作れず守備に回る時間が長かった。さらにパワーを上げないと後半の入りで失点すると考え、後半開始からカードを切りました。前線から積極的にボールを奪ってインテンシティの高いサッカーをするため、プレー強度が落ちてきた選手を代えることで『前に行くぞ』というメッセージを出したつもりです」

■いかに慎重かつ大胆に行けるか。

「SC相模原さんの映像を見ましたが、ベテランのMF藤本淳吾選手ら昨年J2で戦った選手が残っています。藤本選手は昨年のJ2リーグで、ジュビロ磐田を相手に素晴らしいFKを決めています。
 
そのため、気安いファールは禁物。一発でやられてしまう緊張感は、J3のレベルを超えています。加えてFW船山貴之選手がジェフユナイテッド市原・千葉から移籍してきました。彼はJ2でのキャリアも長く、昨年も8得点を挙げており、厄介です。

 そして何より、高木琢也監督の経験値の高さ。高木さんは試合後、シーズンが始まったばかりなので、ここから戦いながらチームを作っていきたいとおっしゃっていました。だから、まだ隙はあるのではないかと(笑)。

 先ほども言いましたが、リスク管理を徹底する必要がある反面、アグレッシブな戦い方はこのチームの魅力でもある。いかに「慎重かつ大胆に」行けるか。そこがポイントになるでしょう。 鹿児島戦は勝ち点1を取ることができ、それなりの手応えもありました。シーズンインから取り組んできたことを成熟させていきたいと考えています」

■今シーズンホーム初戦。熱き戦いにご注目を!

アウェーでの鹿児島ユナイテッドFCとの戦いを1対1で終え、いよいよホームでJ3初戦を迎えるいわきFC。地元ファンの前で、ここまで蓄えてきた実力が試される。

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試合は3月20日(日)13時より、Jヴィレッジスタジアムにてキックオフ。試合の模様はDAZNにてライブ配信される。

熱き戦いに、ぜひご注目を!


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