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I.G.U.P 検討委員会レポート vol.2 第1回検討会が開催されました

いわきFCの新たなスタジアムの整備に向けて立ち上げられた「IWAKI GROWING UP PROJECT」。いわきに必要とされ、地域のレガシーとして残るスタジアムとはいかなるものかを「地域の目線」で検討していくのが、このプロジェクトのミッションです。

6月に初顔合わせが行われてから3週間。メンバーが一堂に会し、初めてとなる検討会が開催されました。会場は、いわき湯本温泉にあるゲストハウス「Hace」。ワークショップなども開かれ大変盛り上がりました。そこで今日は、プロジェクトメンバーの前野有咲が、第1回検討会の模様をレポートしていきます!

Haceを会場に第1回の検討会議が行われました!

この地域で、スポーツはどうあるべきか

第1回検討会は、いわき湯本温泉のゲストハウス「Hace」で開催されました。湯本温泉のシンボル「三函の湯」の近くにあり、地元の人たちや日本人観光客だけでなく、外国人のツーリストも訪れる人気のゲストハウス。地場産品をふんだんに使った食事も人気で、私も何度も食事や宿泊でお世話になっていますm(_ _)m

このHaceのオーナーである三上健士さんが検討委員会メンバーの一人ということもあり、せっかくだから、親睦を兼ね、三上さんのつくる料理を囲んでアイディア出しをしてみようということで、この日の会場に選ばれました。楽しい親睦になるのかと思いきや、想像以上の激論空間。言葉とアイディアが楽しく、そして激しくぶつかる場になりました。

検討委員会メンバーでもありHaceのオーナーでもある三上さん
上林先生の話題提供から会議はスタート

まず行われたのが、座長・上林功先生からの話題提供。前回のレポートでも紹介した、アメリカ・サンノゼのPayPalパークの実践と、上林先生が京都府立大学の学生たちと行ったワークショップの実例が紹介されました。

上林先生の話をまとめると、こんな内容になるでしょうか。

・サンノゼのコンセプトは「みんなでつくる、みんなのスタジアム」。サンノゼは、スタジアム設立の意見の集め方がとても民主的だった。
・京都のケースでは、「京都において、スポーツはどうあるべきか」という、地域とスポーツのあり方から考えたのがよかった。
・スタジアムを作ろうとして意見を集めるのではなく、まちにおけるスポーツの役割を考えることが大事。みんなで調べて、みんなで意見を集めるプロセスがとても大切だ。

日本で「スタジアムをつくろう」という話が持ち上がると、海外のこのスタジアムがいいからこれを真似しようとか、これがウチの地元にも合ってるからこうしようとか、他県や他国の先行事例を真似ようとしてしまうことが少なくないそうですが、それだと地元のニーズに合致しにくくなります。

一方で、「スタジアムありき」になると、意見はバラバラになり、多くの人が「私の理想のスタジアム」を語ってしまうため、まとめることが難しくなってしまう。大事なことは、その地域においてスポーツはどのような役割を果たせるのか、どうありたいのか、という問いを共有することなのだ。上林先生は、そう考えていらっしゃるようです。

上林先生の話に耳を傾ける皆さん

上林先生の指摘に、思わずハッとさせられました。スタジアムを検討するのが、このIWAKI GROWING UP PROJECTのミッション。私も、具体的にどういうスタジアムにするかを考えようと思っていましたが、大事なのはその手前。「この地域において、スポーツはどうあるべきか」。私自身、大事な問いが抜け落ちていた気がします。

大事なのは「この地域において」ですから、浜通りや双葉郡、いわきのことを知らなければいけません。そして、そのスタジアムで試合をするのは「いわきFC」なわけですから、いわきFCらしさとはなにか、といったことも十分に考慮されたほうがいい。スタジアムのことばかり考えているとなかなか見えてきませんよ。上林先生から、そう投げかけられたような気がします。

次々に言葉を出すワークショップ

いわきとFCと、○○を組み合わせる

話題提供のあとには、「共創ワードクラウド」と呼ばれる手法を使ったワークショップが行われました。いくつかの段階に分かれているので、詳しく紹介してきます。

まずメンバーが行ったのがキーワードの書き出し。「いわき」や「いわきFC」といった単語からイメージされるものを、深く考えずに、ポジティブな面もネガティブな面も、思いつきでいいから書き出していきます。

たとえば「いわきFC」ならば「地元」「90分倒れない」「若手育成」などの単語が、「いわき」ならば「サンシャイン」「夏」「合併」「じゃんがら」などの単語が次々に出てきていました。

さらに、「いわき」や「いわきFC」と組み合わせたい言葉「○○」を自由に書き出していきます。「教育」「居場所」「プライド」「高校生」「アート」などという単語が出てきていました。この「○○」のところには、メンバーそれぞれの関心や専門性が出てくるのがおもしろい。メンバーが画一的だと、そうはいきません。

さらにそのあと、出てきた単語をフォーク、つまり串刺しにしていき、新たなビジネスやイベント企画、アクションに結びつけていきます。一例を見てみましょう。

自分たちで言語化したものをみんなに発表して共有

「大盛り」×「倒れる」×「インクルーシブ」
みんなで大盛りグルメを食べて倒れよう、というイベント。真っ当に考えていたら出てこなさそうなアイディアですよね。それぞれの素材をランダムにフォークしたのが良かったのかもしれません。

「海」×「若手育成」×「アート」
海辺に若者向けの共同アトリエをつくり、海の芸術祭を開いてみるというアイディア。スポーツでも、スタジアムの話題でもありませんが、イベントや企画の一つとして、とてもおもしろそう。

「ロボット」×「サッカー」×「遊び場」
バーチャルリアリティで自分が選手になったりできる場をつくるというアイディア。しっくりくる組み合わせかもしれません。原発の廃炉ではロボットが使われていますので「浜通り」全体でぴったりです。

「田んぼ」×「90分倒れない」×「あそび」
ちびっ子向け「田んぼダッシュ大会」の開催。スタジアムの脇に田んぼがあってもおもしろいかもしれませんね。そこで収穫されたお米でおにぎりを作ったり、選手と収穫体験したり、いろいろ使えそうです!

みんなで言葉を出し、組み合わせる、自由で共創的な時間

と、こんな具合に、次々にアイディアが出てきました。普通に考えたらなかなか出てこない組み合わせになるのがとてもおもしろく感じました。いろいろな人が思い浮かべたバラバラの単語を「フォーク」するからでしょう。こういうのを「共創的」というのかもしれません。

また、先ほども書きましたが、出てくるアイディア、単語の多様さが、メンバーの多様さから生み出されていると感じます。

それぞれ依って立つ場所や、言語の感覚がちがう。言葉が違うから、突拍子もない組み合わせが生まれ、意外にもそういう組み合わせが「しっくり」きたりする。この「多様であること」は、じつは結構「いわきや双葉らしい」ことなのかもしれないな、ということも感じました。

おもしろいアイディアに、上林先生も驚かれていました
職業も立場も年齢も性別も多様であることが、アイディアを豊かなものに

もちろん、出てきたアイデアがスタジアムに直結するわけではありません。ですが、話しているうちに、こんな建物が必要なんじゃないか、スタジアムの周囲にこれがあるといいかも、ということが頭に思い浮かんできます。

つまり、このワークショップは、スタジアムそのものではなく、スタジアムを中心とした「まち」について考えることにつながっていると感じます。

また、委員会メンバーから、「もっと大きなコンセプトから考えたほうがいいのではないか」、「若い人たちの意見も積極的に取り入れたほうがいい」といった意見も出てきました。これに対して上林先生は、コンセプトを決めるのには、多様なメンバーで「方向性」を共有するプロセスが欠かせない。まずはプロジェクト全体で同じ方向を向き、若い人たちを巻き込んでいくプロセスに入っていきましょう、と答えていました。

今日のワークショップも、バラバラに向いたものを補正していくプロセスだったのかもしれません。スポーツとの関わりも人それぞれ、いわきFCへの思い入れも人それぞれ、仕事や興味関心も、みんな違う。だからこそ、少し時間をかけて「同じ方向を向いていく」ための時間をつくる。

私が専門とする(大学で学んできた)コミュニティデザインにも共通しているように感じます。地域のなかで新しいつながりをつくろうとするとき、大事なことは、同じ方向を向いていくための「時間」であることは少なくないように思います。ただ、そこで「どういう時間を過ごすのか」も重要。自分一人で悶々と考える時間ではなく、他者と語り合い対話する時間は、やはり有効だと思います。

ワークショップの最後、今回の検討委員会を裏方としてサポートしてくださっている企業の方が、「このプロジェクトが、自由に意見を言い合える、議論できる安全な場所であると確認できてよかった」とコメントされていたのが印象に残っています(とてもコミュニティデザイン的!)。

上林先生からは、「これまでいろんなワークショップに参加してきたが、これだけ能動的に意見を言い合えるのは珍しい」とお褒めの言葉も! このカオスな議論が、どう方向性を決めていくのか。とても楽しみです!

出てきたアイディアについて発表する、菅波香織さん
ワークショップで出てきた言葉たち

もちろん、期限がありますから、なんらかの結論は出さなければいけませんが、今の段階では、対話を重ねながら、IWAKI GROWING UP PROJECTとして進むべき方向を決めていく。そういうフェイズなのだと再確認することができました(まだ初回ですし)。

と同時に、私にとっては、このプロジェクトはコミュニティデザインの最前線のような場でもあり、これからの検討会議がとても楽しみです。こんなにバラバラのメンバーで、どう方向性を決めていくんだろう。どんなコンセプトになっていくんだろう。わからないからこそワクワクします。

さて、初回の検討会議のレポート、いかがだったでしょうか。これからも、できるだけホットなうちに、皆さんにレポートしていきたいと思います。こんなスタジアムになったらいいなという皆さんのアイデアも、ぜひお聞かせください。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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