見出し画像

文化人物録28(上妻宏光)

上妻宏光(津軽三味線奏者、2016年

→津軽三味線の楽器としての可能性や魅力、活動の幅を一気に広めた第一人者。2001年にメジャーアルバムでデビュー以降、常に伝統と革新、和楽と洋楽の狭間で面白い音楽を追い求めてきた。伝統芸能・文化とういうものは守り続けるだけでなく、新たな事にも挑んでいかないと残ることはない。お会いした時もそのような強い意思が全身から噴き出ているようで、感銘を受けた。

*ベストアルバム「粋」を発表
・CD
メジャーデビューから15年が経った。ソロで15年ということになります。頭の中ではあっという間の15年間でしたが、こうしてベストアルバムを出すことになると長かったんだなという感じがする。僕の音へのこだわりというものがアルバムにも盛り込まれたと思う

・いままでの活動で津軽三味線の表現の幅は広げられた。西洋音楽のベーシックな楽器と比べると制約があるので生みの苦しみはあったが、やり続けてきた努力の結果今がある。音楽理論を知らずに作曲で行き詰まることもあったが、それでも曲作りを続けてきたことは大きい。面白がって共演していただけるアーティストもたくさんいた。

・伝統の世界と現代を行き来することで、日本の昔からの文化の良さを感じることができた。まさにそこが今の活動の原動力になっている。形は違えど、工芸や絵画の世界でも昔からそうだと思う。昔からあるものを追求するから今があるのであって、革新があるから伝統がある。文化のすべてが革命的であり、それがいずれ伝統になっていく。

・いままでの活動でひと山、ふた山は越えられたという実感がある。自分がやりたかったのは様々なジャンルの第一線で活躍する方々との共演だった。10年後にまた呼んでもらえるようやってきたつもり。これはアーティスト同士の相性もありますが、面白がってくれる人のところのはとりあえず飛び込んでみようと思いやってきた。

・そのおげで、全く無縁だったジャンルの方からも声をかけてもらえるようにはなった。最大公約数的に遊べるスペースがあり、今回の東京国際フォーラムでの公演(1月1日クサビ其五、林英哲、由紀さおり、田中傳次郎など)にも多数の方に出演いただくことになった。津軽三味線奏者の自分によるメインプロデュースだが、こういう伝統芸能の立場で国際フォーラムの大ホールで公演ができるということに夢がある。歌舞伎と能の方だって同じステージに立つことはなかなかないですから。垣根を取っ払っていくということは重要だと思う。

・10代の頃は日本の芸術について、いかに海外発信していくかに注力しました。伝統の垣根を取り払い、日本への憧れの様なものを作りたいと思ってきた。今まで音楽は西洋中心に来ましたが、日本人にしかできない色彩感や感覚がある。もっと世界に通用するような表現者になることは必要だと思います。

・三味線というのは表現の幅を広げるのが難しい楽器。もちろん古典は知らなければいけないし、足元は確認しながらやらないといけない。バランスが難しいが、ギターの代用ではなく、あくまでも我々の音楽とほかのジャンルとの融合が大事であり、選択の幅を広げることが必要。これからも足元を見ながら前も見ていきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?