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【葬送のフリーレン】魔法について:魔法使いの戦略・戦術の遷移②

漫画「葬送のフリーレン」では、魔法使いのフリーレンが主人公ということもあり、魔法による戦闘がよく登場します。

本記事では、魔法使いの戦闘について、その戦略や戦術が、時代によってどのように遷移してきたのかを、推測も含めて考察したいと思います。

本記事は以下リンクの続きになります。

なお関連記事として、大まかな魔法の歴史については、以下記事にてまとめましたので、時間があれば御一読ください。


対象は単行本全10巻97話までですので、ネタバレを避けたい方は読むのを止めて下さい。


現代の魔法使い

魔王討伐後から現代までで、大きな戦略の変化は2回起こりました。

1つ目の変化のきっかけは、人を殺す魔法の人類の魔法体系への組み込み、つまり一般攻撃魔法の人類への普及です。

それにより魔法使いは、新たに2つの戦略を採用するようになったと考えられます。

後衛フィニッシャー

魔法使いを後衛に置いて、相手に止めを刺す戦略のことです。

人を殺す魔法は非常に強力な魔法で、人体を直接破壊し、当たれば確実に致命傷になる攻撃です。

人を殺す魔法は非常に強力 第1巻137ページ

その魔法を研究・解析し、人類の魔法体系に組み込んだ、一般攻撃魔法及び魔族を殺す魔法も、威力は同等かそれ以上に強力で、魔物・魔族でさえも、体に当たれば致命傷になります。

一般攻撃魔法及び魔族を殺す魔法も非常に強力 第3巻56ページ

しかも、対象がある程度遠距離でも、大岩をキレイに破壊するくらいの威力を持っています。

遠距離の対象でも威力は強力 第1巻72ページ

この一般攻撃魔法は、特に魔物・魔族にとっては比較的新しい魔法なので、それに対応する防御魔法を持っていないことも多いです。

故に対魔物・魔族戦においては、魔法使いを後衛に置いて、戦士などの前衛が相手の隙を作り、狙いすました一般攻撃魔法で止めを刺す、という戦術が最適になる可能性が高いです。

以前は遠距離だと魔法の威力が離散したり、相手の体を直接破壊しない属性魔法が主流だったので、後衛でも相手に致命傷を与えられるようになったのは、大きな戦略上の転換点になったと考えています。

消耗戦

魔力が尽きるまで攻防を続ける戦略のことです。

対魔物・魔族戦では、前述の戦略が使えますが、人類の魔法使い同士の戦いでは戦略が変わってきます。

なぜなら、人類の魔法使いは既に、強力な防御魔法を使用できたり、強力な魔法耐性の装備を着けている可能性が高いからです。

研究により強力な防御魔法が開発された 第1巻141ページ
装備も魔法耐性が格段に向上した 第1巻142ページ

特に防御魔法は非常に強力で、これ1つでほとんどの魔法を防ぐことができるため、魔法が被弾する確率が格段に下がります。

防御魔法はほとんどの攻撃魔法を防ぐ 第1巻133ページ

ただこの防御魔法は魔力消費がとても大きく、着弾の瞬間に部分的に展開するなどの工夫をしないと、すぐに術者の魔力が切れてしまいます。

防御魔法は魔力の消費がとても大きい 第1巻133ページ

以上のことを踏まえると、人類の魔法使い同士の戦いでは、相手に致命傷を与えるのではなく、いかに魔力消費の大きい防御魔法を相手に使わせて、相手の魔力切れを狙うかが、勝負のポイントになると考えられます。

致命傷を与える必要がないのであれば、雷や炎などの広範囲の属性魔法も攻撃の選択肢に入ると考えられます。

ただ、一般攻撃魔法が最も速射性に優れているので、防御魔法を使わず物理的に回避される可能性を考えると、一般攻撃魔法と防御魔法の攻防が、結局は最適になると考えられます。

一般攻撃魔法は最も速射性に優れている 第6巻101ページ


2つ目の変化のきっかけは、大陸魔法協会の設立です。

それにより魔法使いは、新たに2つの戦略を採用するようになったと考えられます。

自然物を利用した質量攻撃による速攻

自然物を利用した質量攻撃で、防御魔法の物理耐性を破り、相手に致命傷を与える戦略のことです。

大陸魔法協会の設立により、魔法使い資格試験が開始します。

それにより人類の魔法使い同士が、実戦・模擬戦などの戦闘をする機会が増え、戦略もその対人類戦闘に適した進化をしたと考えられます。

人類同士の戦闘は消耗戦になると先述しましたが、それを打開する戦略が、自然物を利用した質量攻撃です。

まず、防御魔法はあらゆる魔法に対応する複雑な術式ゆえに、物理防御性能はあまり高くなく、魔法で圧倒的な質量のものをぶつけると、破られてしまいます。

防御魔法の物理耐性はあまり高くない 第5巻119ページ

また、その圧倒的な質量をぶつけるにしても、魔法で無から物質を作り出すよりも、自然物を操ったほうが、魔力の消費が少ないので、結果自然物を利用した攻撃を採用するようになりました。

自然物を操ったほうが消費魔力が少ない 第6巻64ページ

以上のことを踏まえると、人類の魔法使い同士の戦いでは、消耗戦に持ち込む前に、自然物を利用した質量攻撃で速攻する戦略が、新たな戦略として主流になりました。

柔軟な役割遷移

後衛に限らず、魔法使いが様々な役割を行う戦略のことです。

大陸魔法協会のもう1つの貢献として、"特権"付与による魔法使いの強化が挙げられます。

明記はされていませんが、ゼンゼやゲナウの使用する魔法は、"特権"によるものだと推察されます。

"特権"の魔法だと思われる描写 第5巻105ページ

ゼンゼは、防御魔法の物理耐性を破るほどの、重く強力な物理攻撃を持っており、後衛よりも前衛での戦いに適した魔法を持っています。

ゼンゼの攻撃は巨岩のような重さ 第6巻70ページ

またゲナウも、魔族の将軍の一太刀を防ぐほどの、強力な物理防御を持っており、こちらも前衛で十分戦えるほどの魔法を持っています。

魔族の将軍の攻撃を防ぐゲナウ 第8巻122ページ

上記の例のように、"特権"付与による魔法使いの強化で、状況によっては前衛や後衛などの役割を、柔軟に変化させて戦う戦術も、新たに採用することができるようになったと言えます。


最後に、きっかけは不明ですが、現代までに生まれた戦術を2つ紹介します。

飛行魔法による空中戦

魔王討伐の時代には、人類は空を飛ぶことができませんでした。

人類が飛行魔法を使えるようになったのは40年ほど前で、これにより戦闘中に移動できる空間が大幅に広がりました

人類が飛行魔法を使えるようになったのは40年ほど前 第4巻44ページ

魔族は当たり前のように飛行魔法を使っていたので、ようやく魔族と空間的に対等に戦闘できるようになったと言えます。

魔族にとって飛行魔法は当たり前 第8巻108ページ

探知範囲外からの超遠距離射撃

この戦術は、現時点ではフェルンしか使えませんが、非常に強力なものです。

おそらくフリーレンと共に考えだしたとは思いますが、幼い頃から研鑽してきた遠距離魔法と潜伏スキルを最大限に活かした戦術だと思います。

潜伏スキルが必要な理由は、一旦探知範囲内に入って敵を認識してから、潜伏によって敵に追い駆けられずに範囲外に出ないと、そもそも使えないからです。

この戦術の優れている所は、多少の魔力量や技術に差があっても、相手の隙を突いてほぼ一撃で敵を倒せるところです。

習得難易度がどれくらいなのかは不明ですが、汎用化できればバランスブレーカーになること間違いなしです。

弾道予測を許さない探知範囲外からの超遠距離射撃 第8巻150ページ

戦略・戦術の遷移まとめ

フランメ登場前の魔法使い

・エルフの膨大な魔力を活かした戦略

フランメ登場後の魔法使い

・人類社会の防護優先
・騙し討ち
・魔法の軍事転用研究

魔王討伐の時代の魔法使い

・援護射撃
・属性攻撃による弱点攻め
・人を殺す魔法の研究

現代の魔法使い

・後衛フィニッシャー
・消耗戦
・自然物を利用した質量攻撃による速攻
・柔軟な役割遷移
・飛行魔法による空中戦
・探知範囲外からの超遠距離射撃

まとめ

本記事では、葬送のフリーレンに登場する魔法使いの戦闘について、その戦略・戦術が時代により、どのように遷移してきたかをまとめました。

エルフがほとんど居なくなってから、魔法使い全体の力は弱まりましたが、主に人間の創意工夫によって、多様に発展してきた様子がわかりました。


長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

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