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フリクリ プログレ 第3話-2

イラスト/吉成鋼

【森の部屋】

リッチな森の部屋。
20畳ほどあり、高そうなオーディオ機器、巨大なテレビ、やまほどのゲーム機、漫画、等身大フィギュア(可能なら、アニメキャラの)、アイドルのポスター、巨大なラジコン、ほとんどヘリコプターサイズのドローン。etc

マルコ:前の家も凄かったけど…ここも凄いねえ…

井出:完全に勝ち組だな、お前は

:ん?今、勝ち組、って言ったか?

井出:あ、ああ、言ったけど?

:ビャハハハ!そうなんだよ!俺はとうとう勝ち組になったんだよ!ビャハハハ!

井出:どうしたんだいきなり…彼女がいなくてとうとう壊れたか…?

:ん?今、彼女がいないって言ったか?

井出:あ、ああ、言ったけど?

:ビャハハハハッハア!

井出:…やっぱりだマルコ!森が壊れた!

:ちょっとこれ見てこれ見て!ビャハハハ!

狂ったように爆笑しながら森が壁に向かってテレビのリモコンをポチポチポチポチ押す。

マルコ:何もない壁に向かってリモコン押してる…

井出:俺たちの好きだった大して面白くもなかった森はもういない!逃げる準備をしろ!マルコ!

と、リモコンに反応して壁が開く。そこからおぞましい数のセクシーアイドルフィギュア、アダルト雑誌、アイドルクッション、などなどが出て来る。

井出:うああ!なんだあ!?

なかには喋るのもある。「モリクン、モリクン、ダーイスキ!モリクン、モリクン、ダーイスキ!」

井出:こ、これは…

マルコ:これを、、見せたかったの…?

:(焦り)すまん!これは違う!見るな!これじゃないこれじゃない!こっちだった!

森、別の壁に向かってリモコンをポチポチポチ押す。
壁が開き、女の子が立っている。アイコだ。神々しく可愛い。
植木鉢を持っている。
アイコの隣に立つ、森。
井出、フィギュアで十字架を作る。

井出:(アイコに)出て行け!

:は?

井出:この部屋にこんな可愛い子がいる訳がない!森の妄想が作り出した幻だ!

:俺の彼女の、アイコちゃんだ

井出:(十字架を構えながら)言うなー!

:(アイコに)ほら、自己紹介して。

アイコ:(モジモジしつつ)あ、あの、森君と、お付き合いさせてもらってます…アイコです…

井出・マルコ:…

井出とマルコ、固まっている。
×  ×  ×
森とくっついて座っているアイコ。
向かい側でアイドルクッションを抱きしめながら話す井出。
まあまあ大きいフィギュアを抱きしめながら話すマルコ。

井出:あの、、どうして、、森なんかと付き合うことに…

アイコ:え、、どうしてって、、

:いいんだよ、言ってごらん、教えてあげて、この人達に、恋ってものの素晴らしさをさ

井出:むかつく…

マルコ:…ハハ…

:(アイコに)ほら言ってごらん…

アイコ:…ただ、好き、、、だから、、(森に)恥ずかしいよぉ…

井出:…マジか…マルコ、納得できるか…?

マルコ:え?

井出:お前はこの状況を納得出来るかって聞いてるんだ…

マルコ:まあ、好きだって言ってるんだからさ…でも、アイコちゃんはもしかして、ちょっと変わり者なのかもしれないね

井出:ほう…(アイコを見る)

:失敬な。変わり者でもなんでもない、いたって普通の女子だ。な。

アイコ:うん、たぶん、、

井出:アイコちゃんが持ってるそれは、、なんでしょうか…?

アイコ:え?あ、はい、う、植木鉢ですね…

井出:どうして植木鉢を持ってるんだろ?

アイコ:え~と(戸惑い)、落ち着くから…

井出:落ち着く…

:かわいいだろ?

アイコ:もう、恥ずかしい…こう見えてこれ、結構高いんですよ?

井出:へえ…そうなんですかい…

マルコ:(井出に)やっぱりちょっと変わってるね、、

井出:ね、、植木鉢のせいか、さっきからてんとう虫ずっと飛んでるしね…

アイコの頭付近を飛んでいるてんとう虫。
てんとう虫に顔を近づける井出。

アイコ:なんか、気がついたらいっつもてんとう虫が飛んでるんですエヘヘ!

:な、(うっとり)可愛いだろう…

井出・マルコ:…

【山】

山道を走って来たベスパが半壊した民家の前に止まる。カラスが飛んで行く。

ハル子:オッケー。ここまで離れればヤツも現れまい…

ヒドミを担いだ制服姿のハル子、辺りを見渡す。人気のない山奥。

ヒドミ:な、なんなんですか…

ハル子:別に~、ちょっと遊ぼうかなってさ。

×  ×  ×
ボロボロの和室に連れ込まれたヒドミ。
ハル子、ヒドミを強引に昭和な布団に寝かせ、覆い被さる。

ハル子:ヒドミちゃ~ん、、仲良くしようよ~

ヒドミ:ちょっと、、やめてください

ハル子:わたし、わかっちゃったの、、ほんとうに必要なのが誰だったか…

ヒドミ:…やめてください

ハル子:どこがいい…?

ヒドミをおさえつけ、パジャマのボタンを外し始めるハル子。

ヒドミ:…

ハル子:どこがいいか教えて…わたし、なんでも言うこと聞くから…

ヒドミ:…わからないです…

ハル子:言ってよ、どこをぶったたけば出て来るのかさあ、、、

ヒドミ:…ぶったたく?(もがいている)

ハル子:…んん?

ハル子、何かに気付き、昭和の掛け布団を羽織ったまま、背後に閉じている障子の前に立つ。

ハル子:…匂う…匂うぞー!

ハル子が勢いよく障子を開くと、エンジンマフラー砲を構えたジンユの姿。

ハル子:やっぱり

砲撃をエビぞりでかわすハル子。

ハル子:ね!

ジンユ:次は外さないよ!

ハル子、昭和の掛け布団を羽織ってからは、民話の化け物のごとく四つん這いで荒々しい姿に。天井に張り付く。

ハル子:シャーッ!ってやつ!

ジンユ:邪念に身も心も犯されたか!

ハル子、ヒドミを咥えて四つ足で壁をぶちやぶり民家を飛び出す。

ハル子:ムゴモゴシャシャーッ!つってここは逃げ!(モゴモゴ)

四つ足のままベスパに乗り、走り出す。

ヒドミ:ひいいい!

ハル子:さらばじゃ! おごーーー!?

が、速攻でタイヤがはずれて転倒。

ハル子:(モゴモゴ)ちょっと!どうしてくれんのよ!

ジンユ:そんな簡単に逃がす訳ないでしょう(砲撃)

ハル子:(避けてモゴモゴ)修理代払ってよ!

どこからか飛んで来たリッケンバッカーを構えるハル子。

ハル子:(モゴモゴ)いい加減、

ジンユ:なに言ってるの?ヒドミを放してちゃんと喋りなさい

ハル子:(モゴモゴ)いい加減、あきらめて、ちょーだい!

リッケンバッカーのエンジンをかけ、飛び立つハル子。
変形し、追って飛び立つジンユの車。


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