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フリクリ プログレ 第3話-4

イラスト/吉成鋼

【??】

ベビーカーで治療を受けるヒドミ。苦しそう。
井出が心配そうに見ている。

ジンユ:(ハル子に)どうするつもりだったの?

ハル子:はあ?なにが?

ジンユ:この子の力が使えなくなったら

ハル子:使えるじゃん。生きてるでしょ?

ジンユ:そういう話じゃないでしょ?

ハル子:んじゃあどういう話なのさ

井出:静かにしてよ…

ジンユ:確かに生きてはいるわよ。でも、これだけのことをしたら、N.Oそのものが使えなくなる可能性だってあるでしょ?地球人が肉体的にも精神的にも壊れやすいことは分かってるはずよ

ハル子:この子は強い子。元気な子。

ジンユ:ふざけないで

ヒドミが意識を取り戻すが、もうろうとしている。

ヒドミ:ううっ…はあはあ…

井出:ヒドミ…ヒドミ…

ヒドミ:…はあはあ、、

ハル子:ほら!!治ったじゃん!良かった万歳!

ジンユ:この様子だと、しばらくしないと、使えないわ…

ハル子:さあね〜、使えないこともないんじゃな〜い?

井出:使う…?

ジンユ:でも、よかったわ…生きてて…

ハル子:よかったよかった

井出、怒りの形相、

井出:何がよかったんだよ…何が…

井出の頭がモゴモゴと動き出す

ジンユ:井出君、大丈夫よ。多少時間はかかるけど、傷も跡が残らないところまで治すから

井出:使うためでしょ?

ジンユ:…井出君…?

井出:あんたたちが、、使うためだろう?

ハル子:あら〜?珍しく怒ってるの?

井出:怒ってるよ!何が「残らない」だ!…本気で何も残ってない様に見えるのかよ!?頭おかしいんじゃないの!?

井出、ヒドミを見ながら怒りに震えて泣き出す。
×  ×  ×
井出のフラッシュバック
教室でのヒドミ、スラムで鼻血を出すヒドミ、ハル子に連れられ、空中を振り回されるヒドミ、恐怖の表情で落ちるヒドミ。
×  ×  ×
井出の頭がずおおおおおおおんと、伸びる。

井出:おまえたちいいい!!ぬぐぐっぐ!

ハル子:うひゃひゃひゃ!すっっげーーーー!!(リッケンを出す)

ジンユ:ラハル!やめて!

ハル子、井出の頭をリッケンで引っぱたく。
ブオオオン!井出の頭の膨らみがさらに膨らみ、巨大なメカとなる。

ハル子:わっっはあああああ~~~

あっけにとられて見ているハル子。
空中にそびえ立っているメカ。

ハル子:…やるじゃ~ん、、、

井出:あひゃあああ~~~

ヒドミのベビーかに寄りかかる様にへたりこむ井出。
 巨大メカは、ゆっくりと回転し始める。
ハル子とジンユにのしかかるように向かって来るメカ。

ハル子:ちょとちょとちょとちょと!!

ジンユ:余計なことするからよ!

ハル子:すんません!わはははは

ハル子、逃げ回りながら、メカをリッケンで引っぱたいたり。
メカは激昂した様子で暴れ、ジンユとハル子を攻撃する。
応戦するハル子。避けるジンユ。

ジンユ:井出君の感情が入り込んでるわ…

ハル子:へえ!そういう感じかあ!

ハル子、メカの目の前にわざと位置し、ピッカピカの笑顔。

ハル子:思う存分、やったろやんけ!かかってこいや~~~!!

井出メカとハル子の戦闘。
×  ×  ×
ベビーカーで眠っているヒドミ。
遠くの爆音が聞こえて来ている。

ヒドミ:うう…

×  ×  ×
夢。空中から、地面に真っ逆さまに落ちている。
地上が眼前に迫り、真っ暗になる。
どちゃっ。

ヒドミ:はあはあはあ、、

落ちたヒドミの目線、まどろみつつ。
少し離れたところに、自分の、手。

ヒドミ:(息が荒くなる)はあはあはあ

×  ×  ×

ヒドミ:ううっ…!

ヒドミ、目を覚ます。
そこに、遠くの爆発の光りが射す。
ヒドミが、何かを見た。(井出のシルエット)さらに激痛に顔を歪めるヒドミ。

ヒドミ:…うううあああああ!

【アイコの家】

アイコが自宅のダイニングテーブルでカップ麺を食べながら、バラエティー番組を見ている。
家族用のダイニングテーブルがあるが、一家団欒できそうもないほど散らかっている。
アイコの父、マスラオの声が聞こえる。

マスラオ:アイコ

マスラオが隣の部屋から入って来る。
開いたドアの向こうは、単なるせま~い和室。

アイコ:(もごもご)なに

マスラオ:ここにあった植木鉢、知らないか?

アイコ:…知らない…

マスラオ:…

マスラオは部屋に戻る。と、和室の書き割りが天井に吸い込まれ、メカメカしい部屋になる。
入国管理局の研究者、マスラオの部屋。
山盛りのパソコンやMM、フラタニティに関しての資料。
謎のメカが散らばっている中に、やたらめったらコードのつながれ、力なく座り込むカンチの姿。

マスラオ:こりゃ困ったぞ…

skypeを起動し、連絡を始める。
アイパッチの声が聞こえて来る。(顔は見えず)

アイパッチ:あいよ、こちらコードネーム…なんだっけ、あ、アイパッチ。コードネーム・アイパッチ。あれ?アイパッチだっけ?なんか変じゃね?

マスラオ:それはなんでもいい。ちょっと、困ったことになった…

アイパッチ:どうした。あれ?アイパッチで合ってる?ほんとに?

マスラオ:「植木鉢」が、、見当たらん…

アイパッチ:はあ?なに言ってんだよ?

マスラオはこの会話と同時に、別のパソコンで映像を見る。
森の部屋にいたアイコを追尾させていたてんとう虫カメラの映像。
こちらを覗き込む、井出

アイコの声:なんか、気がついたらいっつもてんとう虫が飛んでるんです

森の声:な、(うっとり)可愛いだろう…

井出・マルコ:…

マスラオ:…ん?

画面に映る井出の顔で映像を止める。
デスクトップに開いているおびただしい数のウインドウをずらして、一つのウィンドウを見る。
そこには、2話の工場地帯で戦闘しているハル子とジンユとヒドミの姿。
×  ×  ×
アイパッチの周りを飛んでいた蝿は、カメラ搭載蝿型メカだった。
×  ×  ×

アイパッチの声:こいつはいい!ここれでいいぞお!チャンピオンだ!

ハル子に引っ張られるように宙に浮いている、井出の姿。
二つの映像を止めて見つめる、マスラオ

【森の部屋】

森が植木鉢を持って帰って来る。

:ただいま~。あれ?マルコ~?

玄関に置き手紙。
「バイト先に呼ばれたので行ってきます。パンツの映像は、「pantuフォルダ」にまとめておきました」

:…はああ、、、なんだかなあ…

ドローンが出て行った際に割れた窓から、外を眺めている森。
植木鉢を足下に置き、そばにあったジャンボ尾崎に似た男がプリントされた箱から、ゴテゴテしたゴルフクラブを取り出し、植木鉢を打つ。クラブヘッドが炎を上げる。

:なん・だか・なーーーーー!!!

植木鉢は遠くに放たれ、消えた。

:…

【??】  

メカが吠える。

ハル子:いいぞいいぞ~!もっと来~~~~い!全部打ち返してやるよ!

吠えたメカが、攻撃態勢を取るが、動きを止める。

井出メカ:ゔぉや~ん?

ハル子:ん?どした?

と、ハル子とジンユの目線、メカ越しの景色から、メカヒドミが立ち上がるのが見える。

メカヒドミ:ゔぁおーん!

ハル子:出た!

ジンユ:あれは…ヒドミ…?

ハル子:相変わらずきっかけがわからーん!

メカヒドミが、そこらへんの土を生えている木ごとつかみ取り、井出メカに投げる。井出メカに直撃。

ジンユ:つ、土?

ハル子:子供じゃないんだから!!

井出メカ:ぐぉおおーーーん!!

 ×  ×  ×
メカヒドミの足下。歩き出したメカヒドミを見上げてへたりこんでいる井出。

井出:ひええ、、、

×  ×  ×
井出メカ。怒り狂ってメカヒドミに砲撃しながら向かっていく。
もろに砲撃を受けて傷つくメカヒドミ、ずんずん井出メカに向かって進んでいく。
メカヒドミと井出メカの戦い。
メカヒドミの残虐な戦闘。装甲を剥がす、井出メカの顔面を執拗に殴り続ける、など。

ハル子:え、、えぐいわあ〜この子!

めっためたにやられた井出メカが部分的に爆発し、それを顔面にくらうメカヒドミ。叫び声を上げて倒れる。
×  ×  ×

井出:ヒドミ…

井出がベビーカーを押して走り出す。
×  ×  ×
MMのサイレン(人の声、またはオーケストラな)が鳴り響き、ブシュシュー!水蒸気。激怒の雰囲気なMM施設。

ハル子:(嬉しい)怒ってらっしゃる~!

メカ化が解けてボロボロのヒドミがベビーカーに乗せられ、治療を受けている。
 それを覗き込んでいる井出とジンユ。

ヒドミ:うううう!

井出:ヒドミ…うああ…

ハル子:うははは!すごかったねー!井出ちゃん善戦したけど、やっぱこの子が4番バッターですわ!    

ジンユはベビーカーを押して、歩き出す。

ハル子:よっ!子連れ狼!って、どこ行くの?

ジンユ:ラハル。あなたのことは諦めた。もう待てないわ…

ジンユの歩く先には、MM施設。

ハル子:はああ?あんたバカでしょ!?

ジンユ:(井出に)あなたはどうするの?

井出:え?

苦しそうにしているヒドミを見る井出。

ハル子:なんで井出ちゃんまで連れてくのよ

ジンユ:(井出に)どうする?

ハル子:無視すんな!おいジンユ!

ヒドミを見ていた井出。

井出:僕だけ行くのはダメなの?

ジンユ:…

井出:ヒドミを置いて行くことはできないんですか?

ジンユ:気持ちは分かるけど、それは無理ね…

井出:…

井出、ヒドミを見ている。
苦しそうに眠っているヒドミ。

ジンユ:とにかく、わたしは行くわ…

ベビーカーを押して歩き出すジンユ。

井出:…

ハル子:井出ちゃん!やめときな!そのおばさんについて行くとロクなことないよ!

井出:…

井出、ジンユについて歩き出す。

ハル子:ちょっとジンユ!あんた井出ちゃんの使い方、知らないでしょ~?

と言い終わった時には、ジンユが井出を抱き寄せ、井出の頭がニョッキリしている。ついでに釣り針も外れる。

ジンユ:この子はシンプルなの…

井出:お恥ずかしい…

ハル子:むががー!!もー!!

ジンユ:行くわね

歩き出すジンユ、井出。

【MM施設】

そびえ立つMM施設。
警備員1と2が立っている。
少し離れた茂みに植木鉢が落ちて来る。物音に気付いた警備員2。気付かなかった警備員1。

警備員2:誰だ!?

警備員1:何が?誰が?

警備員2:えっ…何が?

警備員1:…だから何が!?

【森の部屋】

窓の外を見て立ち尽くしている森。
玄関から、アイパッチが入って来る。蝿がたかっている。

:ああ?

アイパッチ:プロになる気はねえか~?

:どうやって入ってきた!?

アイパッチ:チャンピオンはどこだ?

アイパッチは部屋をガサゴソ荒らし始める(植木鉢を探している)。

:マルコはここにはいねえよ!

アイパッチ:なんかこう、、植木鉢みたいなもん、ないか~?

:植木鉢い…?知らねえよ!そんなもん!

アイパッチ、ふらりと森に近づき、点滴の針を森に刺す。

:あは~ん

森、倒れる。

アイパッチ:…

アイパッチ、部屋を漁り始める。

【MM施設付近】

歩いているジンユと井出。
追って歩くハル子。

ハル子:日を改めましょうよ~。大安吉日がいいんじゃない?縁起のいい日にした方がいいわよお~

ジンユ:(立ち止まり)ヘタしたら、私と…この子も失うことになるわね…(歩き出す)

ハル子:……

ハル子、黙ってジンユの後を着いて歩き始める。

ハル子:…(無表情)

      おわり


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