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暴露大会。

「電話なってるよ」
私の言葉に、彼女は自分の携帯電話を確認する。
そこで、元夫から電話が入っていることにやっと気がついた。

今までの余裕がある顔から一変して
本当に焦っている表情が浮かんだ。

「出ないの?ずっと鳴ってるけど」
私の言葉に携帯電話を開いて、電源ボタンを押して
すぐにポケットにしまった。

「…連絡先、知ってるんじゃない。さっきはなんで知らないって言ったの?」
私の問いかけにダンマリを決め込む彼女。
「なんとか言ったらどうなの。あなたなんでしょ、元夫に私の勤務先を教えていたのは。」
もう一度、彼女の携帯電話がなる。
ため息をついて、今回はかかってきている電話に出た。

「もしもし?…あーごめん、あのさぁ…バレちゃったんだよね。今、私のところに来ててさ。だから、後で掛け直してもいい?…ごめんね。」
そう言って電話を切った。

その様子を見ていた私に向き直ると
「そう、あんたの考えている通り。あんたの元旦那とは面識があって、あんたの勤務先を知りたいっていうから教えていたのは私。」
「なんで?私があの人にどんなことされていたか、知ってたよね?」
「…それって。あんたの被害妄想でしょ?」
「え?」
「あんたから聞いてた話。全部あんたが良いように解釈して私に話してたんでしょ。だってさ、あんたから聞く話と全然違うじゃん。あの人めっちゃ優しいよ。」
「なに言ってんの?」
「だって、ウチの子達にはなんでも買ってくれるし、アレの時だってすごい優しくてさ、ウチの旦那とは大違いなんだけど。」

私たちに月額1万円を支払ってないのに、彼女の子供には何かを買って与えているって…?何それ。ふざけてんの。
私は怒りで体が震えてきた。その姿を見て彼女は
「嫉妬してんの?まぁあの人も、あんたより私の方がいい女だって言ってくれてるし?」
「なんとなく、話の経緯で勘づいてるんだけど。寝たの?」
私の言葉に、彼女が笑いながら
「うん。あんた達が離婚する前から、私たちそーゆー関係だったんだよね。」
離婚前から?思いがけない言葉に呆気に取られる。
「だから、離婚するって言った時に『あーバレたかぁ』って思ったんだけどさぁ。
まさかウチらの関係には気がついてなったみたいじゃない?お互いに上手くやったね!って安心してたのに。」
「ごめん、いつからなの?」
「あんたが子供妊娠してたくらいの頃から。する相手いないからストレス溜まるっていうから。人助けとして?」

彼女の子供はウチの娘と一つ違い。
その頃には、彼女の家庭も若干崩壊しつつあるのを知っていた。
結婚してすぐに、彼女と彼女の旦那は夜の関係を持つことができなくて
子供作れないかもって悩んでいた事を聞いていた。

恐ろしい仮説が自分の中で組み上がっているのを感じた。

「ねぇ。今後関わらないから、最後に教えて欲しいんだけど。…子供はどっちの子供なの?」
彼女は勝ち誇ったような顔で
「もちろん、あんたの元旦那の子供。ウチの旦那と寝るなんてまじ無理だったし。
その時には儀式的な感じでまだ関係があったけど、あいつには避妊させてたし。あいつの子供作って育てるとかもう一生の苦痛でしかないじゃん?だったら、本当に好きな人の子供作って、夫婦になれなくても愛の形があるなら、可愛がれるしね。」
吐き気がしてきて、視界が歪んでいるのを感じていた。
でも、彼女は気持ちよさそうに今までの事を語っている。
「旦那さんに避妊させてたんだよね?それで子供ができたって言ったら、流石に怪しまれない?」
「ああ、それは『避妊具が古かった』って言っておいたの。…だって、あんたの娘の時だって不妊具が古くて妊娠しちゃったんでしょ?上手い言い訳するために実験台になってくれてありがとうね。」
クスクスを笑いながら、話す彼女に怒りは起きず。逆に恐ろしくなった。
彼女の話す言葉は、どこまでが本当で、どこからが嘘なの?

「旦那さんも、モラハラで大変だって言ってたのに。今回のことがバレたらどうするの?」
「え?脅してんの?…でも、ザーンネン。旦那は私に甘くてね。モラハラなんて嘘に決まってんじゃん。コンビニで売ってる漫画の話を参考にしたら、あんたが勝手にその話を信じただけだよ。」
私は何も言葉が出てこなかった。
「旦那に話しても無駄だよ。だって証拠がないから。今回はタイミング悪くあの人から電話かかってきて、あんたにはバレちゃったけど。旦那を言いくるめる事なんていくらだってできる。証拠がないからね。」
「元夫と関係持ったのは、私が妊娠中の時からって事なのね。」
私の言葉に勝ち誇った顔をして
「そう。それからずーっと今まで。」
「だったら、旦那さんと離婚すればよかったじゃない」
「無理だよ。私は旦那もあの人も愛してるの。日本は一人としか結婚できないし。あの人ともっと早く出会っていれば良かったんだけど。報われない愛って素晴らしい事なんだよ。私とあの人はお互い苦しいけど、愛してるから乗り越えられてきたの。」
「…わかった。もうそれ以上話さなくていいよ。今日限りであなたとの友達って関係は断ち切らせてもらう。」
「どうぞ〜。私は邪魔者がいなくなってせいせいする。これで本当の愛を育む事ができるから」
私は彼女に背を向けた。背後で彼女が自分の部屋に帰っていくのを感じる。
誰もいないバス待合所までつくと、胸ポケットに入っていたボイスレコーダーを取り出して、電源を切った。


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