爆裂パワーおじさん
「ふッ!ふッ!」
爆裂パワーおじさんの額から汗がにじみ出る。
ギャラリーの拍手と歓声。
その只中で、爆裂パワーおじさんが、ゆっくりとタンクローリー車を持ち上げる。
うららかな春の昼下がり、今日も爆裂パワーおじさんは、重いものを持ち上げている。
自分の爆裂パワーを誇示したいわけではない。
重いものを持ち上げることにたいする自負も、プライドも、爆裂パワーおじさんは持ち合わせていない。そんなちんけなことのために重いものを持ち上げているわけではないのだ。
「そこに山があるから」(ジョージ・マロリー)
そう、そこに重いものがあるから、爆裂パワーおじさんは、持ち上げる。それだけだ。
二十年前に嫁と娘に逃げられた。
「しかし、それが爆裂パワーの源ではない。爆裂パワーと私の離婚は関係ない」
爆裂パワーおじさんはそう言って、笑った。
春の優しい光のなか、笑うおじさんの口元からは白い歯がこぼれていた。
来年、爆裂パワーおじさんは、東京ドームの持ち上げに挑戦する。
それが成功したら? その次は?
愚問だ。爆裂パワーおじさんに、終わりはない。
そのときは、より重いものを持ち上げるのだ。
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