なによりも、誰よりも輝く 私のシリウス
はじめに
ほんとうはこんな風に紹介したくないくらい、大切に大切に応援してきた人。
すごい選手がいる。
私の中で10年輝き続ける、すごい選手。
すごい野球選手。
今年でプロ10年目。彼は今シーズン、9年間背負ってきた背番号を明け渡すことになった。ほぼ2倍の数字に増えた背番号。
なんと告げられたかは私は知らない。でも、今年が勝負の年だ、ということは自他ともに感じているだろう。
そんな彼をこっそり紹介させて欲しい。
彼が向き合う野球
彼はとても丁寧に野球に向き合う、すごく、すごく素敵な人だ。
・道具を大切に
・挨拶はしっかり
・上を敬う
野球をはじめた時や、少年野球のチームに入った時。そんな、小さい頃に教わったであろうことを、プロ10年目である今も当たり前にやる。
いくつかエピソードを話したい。
・道具を大切に
彼は自分のプレーがどんな結果であろうと道具にはあたらない。近年リリーフとして活躍する彼は、勝っている試合、負けている試合いずれでも登板する。無事に守り切って、次のピッチャーへつなぐことがほとんどだが、まれに前の人たちが大切に守ってきた点を、自身の投球によって失ってしまうことがある。
周りの人が彼を責めることはないのだろうが、責められずとも当事者は相当つらいことだろう。そんな不甲斐なさに怒りがおさまらないような状況でも彼は絶対に道具にあたらない。グローブを叩きつけようとする自分を、自分でおさえ、悔しい気持ち、不甲斐なさを自分で解決しようとする。小さい頃に教わった教えが彼の中にはあると感じた瞬間だった。
ほかにも、道具を丁寧に扱う彼の姿は「神は細部に宿る」を体現してくれているように感じる。
例えばアップ用のシューズからスパイクに履き替える時。彼は誰よりも丁寧にスパイクの紐を結び、誰よりも丁寧に履いていたランニングシューズを揃える。
二軍の試合でボールボーイをやった時。ネクストバッターズサークルに散らばるバッドや滑り止めを積木のように丁寧に並べるのも、彼らしさが詰まっている。
道具を大切に、野球に向き合うことのできる人だ。
・挨拶はしっかり・上を敬う
声が小さいことで有名で、テレビのインタビューではボソボソって喋りがちな彼だけど、挨拶は丁寧にしっかりする。当たり前かもしれないけど、すごく大事なこと。
野球選手がいつもかぶっている帽子。彼はそれを挨拶するために何度も何度もとる。まるで、帽子をとって挨拶することを覚えたての少年みたいだ。そしてまた丁寧に帽子をかぶる。
個人的な話を書くと変な風に解釈されそうだが、しないで聞いてほしい。
彼は「ありがとうございます」を面倒な1ファン(私)に対しても、目をみて、ちゃんと伝えられる人だ。もちろんしっかりと敬語で。ファンに対してもすごく丁寧なのである。
ちなみに書いてて今、わかったことがある。「丁寧」って言葉は彼のためにあった。
彼のつくる野球
野球に対する姿勢の話ばかりしてきたけど、彼の野球、プレーももちろん輝いている。
ちゃんと書いていなかったが彼はピッチャーだ。
私も何年も何人も野球選手をみていて、正直ピッチャーとして名を残すことが多いのはポーカーフェイスでいられる強い心をもった、1人で何人も投げ倒してしまいそうな"力"のある人なのではないか、と思っている。
例えば巨人の菅野投手や楽天の涌井投手。
菅野投手は、精神を鍛えてきたんだなとその姿から感じるし、マウンドの立ち振る舞いから、素人の私には考えていることなんて何にもわからない。
涌井投手はポーカーフェイスといえば涌井選手と言われるほどのポーカーフェイスで、彼も常に強い姿でマウンドに立っている印象がある。
ただ、彼をはじめとして私が好きなピッチャーたちはいわゆるエースになるような、強い人ではない。みんな、不安な気持ちを押し殺しながら、その上に立っている、みたいな人たちだ。
どういうピッチャーがいい、悪いの話は私はなにもわからないし、そんなことを話したいわけではない。
彼は自分の後ろで守ってくれている7人のチームメイト、今までの自分の練習、そして正面で自分を待ってくれているキャッチャーを信じて投げる。その姿は、毎日の仕事すべてが思い通りにいくわけではない私たちにパワーをくれる。
灯りに照らされたスタジアムの中の少し小高いマウンドの上。そんな、誰もが憧れ、声援をおくるその輝く場所に立っている人でも、なにかを支えとしていて、不安な気持ちを抑えながら目の前のものと戦っているということがわかるからだ。
そして当たり前のことだが、チームにいるピッチャーがみな、動じない強い心をもったエースのようなピッチャーの方がいいのか、と言われると実際、そんなことはまったくない。
野球はチームのスポーツだ。1人では勝つことも負けることも絶対にできない。チームの中には、エース級のピッチャーも必要だし、打たせてとるピッチャーや、いわゆる敗戦処理をするピッチャーも必要だ。
要するに、必要な時に必要な仕事をできる人、が必要である。仕事と同じである。適材適所。みんなが攻めではチームは成り立たない。彼のような人がいるからバランスが取れて、攻めるべき人が攻め続けることができるのだ。
こんなに野球に対して真剣に向き合って、1球1球を大切にする彼を応援しないことなんでできるだろうか、いや、できない。
私は、彼がずっと笑顔で大好きな野球をし続けられるように、彼の努力を見守り続け、彼を応援し続ける。
さいごに
大切な開幕一軍。掴みとってくれて、ものすごく嬉しい。
本当におめでとうございます。
2020年シーズン、あなたにとって忘れられない、最高に輝けるシーズンとなりますように。
2020年シーズン開幕の日、2020年6月19日金曜日。
誰よりも笑顔で野球をするあなたの1ファンより