Realization | 日常感覚とは違ったmathでの使い方
Realization という英語の単語に関して、英語で書かれた数学の本を読むときに出てくる語感について述べています。
この表現は、実用的な英語というより、数学を学習するときのものです。
高校で英語を学習するときに、直訳だけでなく、その語が表す内容を深く理解しておくことが大切になるかと思います。
ただ、今回の記事では、あくまで大学の数学科のレベルのものになります。
たった1語ですが、realization ということを掴んでおかないと、英語で書かれた数学の本で、初めて出合うと戸惑や、議論の流れの誤読といったことにつながる可能性があります。
そこで、学部の内容で比較的に早い段階で学習する数学的な構造を使って、言葉が表す内容を説明しておこうと思います。
Realiztion : 直訳と品詞
realization「実現」
これが直訳です。
通常の英語の学習でもそうですが、漢字の内容と英単語の表すないようが直結しないこともあります。
「実現」という日本語が醸し出す雰囲気は、確かに残っているのですが、いかにも大学の数学らしさが明確に出る内容となります。
この点を、認識することが、英語で書かれた数学の本を理解するときに大切になります。
後で、具体例を用いて説明します。
その前に、英語には派生語の表現もあるので、そこに触れておきます。
派生語について
realization「実現」は、品詞が名詞になります。
「tion」という接尾辞は、名詞を表すという英語の文法で学習する通りです。
ただ、語学は複雑で規則といっても例外的なものが、よくつきまといます。
例えば、mention「言及する」は tion が語の末にありますが、動詞です。
realization の動詞への派生は、
realize「実現する」になります。
数学で使う英語では、名詞か動詞かの違いだけで、語の表す内容自体は同じなので、名詞についての方を説明します。
Realizationを数学において
代数学の分野で、群という構造を学習します。
群という特別な定義を満たす二項演算を備えた空でない集合を具体例として述べます。
四つの元を生成元とする比較的に扱いやすい群の例です。
四つの生成元について、演算をしたときの値がどうなっているのかを決めておくことが大切になります。
e, a, b, c という四つの元(要素)を生成元とする群です。
$${a^2=e}$$ というように、関係式を定義します。
他にも、
$${e^2=b^2=c^2=e}$$ という関係を定義しています。
さらに、
四つの生成元について、どの二つについても交換可能となっているというように関係式が定義されています。
この生成元と関係式を視覚的に記述した乗積表というものがあります。
この乗積表によって定義される群を四元群と定義するわけです。
これがrealizationの意味
ここまで、生成元と関係式で定義された群というものを述べました。
数学で定義をするということについては自由です。
しかし、疑問点があります。
生成元と関係式で定義されたというけれども、その通りに振る舞う数学的対象が、本当に数学の世界に存在するのかということです。
生成元と関係式をもって群を定義するのは良いけれど、その通りに扱えるものが数学の世界に一つも無ければ、その定義は誰も使うことができません。
そこで、生成元と関係式で数学的な構造を定義すると、次のプロセスとして、その定義を満たすものが少なくとも1つは数学の正解に存在することを示すことになります。
この少なくとも1つは存在するということを証明するということとは、厳密には異なる考えになります。
抽象的な存在証明ではなく、具体的に生成元と関係式を満たすものを構成するという考え方になります。
realization は、この生成元と関係式を満たす数学的な構造物を具体的に構成するということを表します。
先ほどの記事では、具体的に四元群を構成しています。
生成元と関係式だけでなく、いくつかの条件たちを満たす数学的な構造物を具体的に構成するという意味で用いられたりもします。
具体的に構成してしまえば、ダイレクトに存在証明となります。
いかにも、内容を押さえておかないと、本の流れが把握しにくい内容となります。
英語で書かれた本を使って学習を進めるのは、数学科の後期の課程の内容となります。
それ故に、扱う数学の内容は高度で難しいものとなっています。
加えて英語の内容が、高校の数学でも英語でも学習しない内容となります。
realization という語の数学における意味を押さえておかないと、暗闇の迷路になってしまうというわけです。
例えば、マシュー群の realization などと英語で書かれた内容が、いきなり数学の本で出てきたりするということです。
そういったときに、何を述べているのかということを認識して本を読まないと、何が述べられているのか不明になってしまいます。
ただ、realization という言葉自体は、あくまで考えていることの伝達の手段なので、数学として厳密に定義された専門用語ではありません。
本で述べられている話の流れを大きく誤読しない程度に、、
岩井の数学ブログというサイトで数学の記事を投稿していまして、数学的な構造物についての記事を以前に書きました。
次の記事は、realization に関する多項式環という Ring(環)の構造についての内容となっています。
$${x^0,\,x^1,\,x^2,\,\cdots}$$
これらが、生成元です。
関係式は、
$${x^ix^j=x^{i+j}}$$ です。
多項式関数は、中学や高校の数学で学習する関数ですが、これではありません。
多項式環になります。
Realization の考え方に基づいて、「生成元と関係式」というけれども、満たすものが本当に数学の世界に存在するのかという疑問を持ちます。
その上で、その疑問を解消するために、具体的に数学的構造物を構成するわけです。
これで、今回の記事を終了します。
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