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ITサービスマネジメント(ITSM)のDXとは?

当社のコアであるITサービスマネジメント(ITSM)は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進・支援する立ち位置で語られることが多い領域です。

当社が考えるDXについては、こちらの記事にまとめていますが、その中で、DXの要点を以下のように定義しました。

今回はこの定義を用いながら、DXのためのITSMではなく、ITSM自体のDXについて考えてみたいと思います。
具体的には、DXの3つの要素である「顧客起点の価値創出」「デジタル技術の活用」「新たなサービス運用モデル」の観点から、ITSMに影響を与える変化を整理し、その変化に対してどのように対応していくべきかを提示します。


1 「顧客起点の価値創出」の観点

1-1 ITSMに影響を与える変化

1つ目のDXの要点である「顧客起点の価値創出」という観点では、ITSMに影響を与える変化として以下の3点が挙げられます。

  • 顧客・ユーザの期待値の変化
    就業人数に占めるデジタルネイティブ世代の割合が増加し、ITリテラシーは段階的に向上しています。それに伴い、ビジネスにおけるITへの期待値も高くなっています。

  • 顧客・ユーザの多様化
    日本企業では従来から幅広い年代の従業員が働いています。グローバル展開する企業も増えてきているので、多国籍の従業員が一緒に働く環境も増えてきました。それゆえデジタルやITサービスに対する価値観も多様化してきています。

  • 行動様式の変化
    パンデミックの影響により、働き方は大きく変わってきています。サービスを提供する側がすべて行うのではなく、ユーザ側ができることはセルフサービスでやってもらう、という形態も受け入れられつつあります。社内からだけでなく、SNS等を活用して社外から情報を得るという動きも、もはや当たり前になってきています。

1-2 「顧客起点の価値創出」実践のためのヒント

このような変化の中で、ITSMとして、顧客起点の価値創出をしていくためにはどうしたらよいか、3つ提案したいと思います。

  • 顧客・ユーザの棚卸をしてみる
    顧客第一主義など、顧客やユーザの満足度を重視している企業は多いですが、そこで想定している顧客・ユーザは現在の顧客・ユーザ層とマッチしているでしょうか。上記のような変化を踏まえて、顧客・ユーザを再定義してみると新しい気づきを得られる可能性が高いです。

  • 顧客・ユーザをデータで捉える
    デジタル化が進み、多くのデータを簡単に集められるようになりました。より顧客・ユーザに近い位置で、その行動や満足度をデータで捕らえる測定することも容易になってきているので、データの観点で顧客・ユーザを見直してみることをお勧めします。

  • サービスレベルやKPIを再検証してみる
    現在のKPIは過去の働き方が前提になっています。現状に合っているか、そのままでよいのかを振り返ってみることは重要です。ユーザ体験の観点からSLAやKPIを再考できないか、検討してみましょう。


2 デジタル技術の活用の観点

2-1 ITSMに影響を与える変化

デジタル技術の活用はDXの不可欠な要素です。それでは、デジタル技術の活用がITSMにどのような変化を与えるかを見ていきます。

  • ITSMツールの柔軟性の向上
    ITSMツールは頻繁なアップデートによりツールの機能が格段に増えました。より柔軟なカスタマイズが可能になり、プロセスによっては、IT組織・IT部門だけでなく他部門や他業務と同一プラットフォーム上で利用できるようになりました。

  • AIによる自動化可能範囲の拡大
    昨今話題になっている生成AIを含む、AIを活用した機能がITSMツールに搭載され、活用が進んできています。特に生成AIによるユーザーとのコミュニケーションの文言の生成、チャット履歴の要約、対応履歴を踏まえたナレッジ記事のドラフトなど、これまでの自動化とは異なるレベルのことが実現可能になってきています。

  • 分析力の向上
    ITSMツールに蓄積されるデータの増加もあり、分析モデルの高度化が進みました。過去の傾向から未来の予測まで、これまで実施が難しかったより詳細な分析が可能になっています。ITSMツールによっては、同業他社のベンチマーク(同一の指標での他社比較が可能)を提供しているものも出てきています。

2-2 「デジタル技術の活用」実践のためのヒント

上記のように、ITSMツールによってできることが格段に増加する中で、それをどのように活用していけば良いでしょうか?

  • ITSM製品情報を収集する
    昨今のITSMツールは頻繁にアップデートされています。最新動向を追いかけられていない方は是非情報収集してみましょう。ITSMだけではなく他業務でも活用できるプラットフォームも出てきているので、ITSM以外の活用も検討することをお勧めします。

  • ITSMツールの適用範囲を再検討する
    運用開始時に利用する機能を限定していた場合、将来を見据えて他の組織・チームに横展開できないか検討してみてください。広範囲でツールを運用できること、複数部署・部門のデータが1つのツールに蓄積されることはデータ活用の観点からも大きな意義があります。

  • ITSMツールにあるデータを活用する
    ツールには数多くのデータが蓄積されていますが、活用されていないのが実情です。データ分析の精度も高度化しています。ツール機能をうまく活用して、分析、さらには改善へとつなげていくことが大切です。


3 「サービス運営モデル」の観点

DXの推進はデジタル技術の活用のみでは実現できません。必ず新しいサービスの運営モデルも必要になります。ここでは、サービス運営モデルの観点から、ITSMに影響を与える変化とその対応を見ていきます。

3-1 ITSMに影響を与える変化

ここ10数年でITSMに影響を与える様々な手法・方法論が紹介され、活用が進んでいます。その変化について整理します。

  • 方法論の選択肢の増加
    ITIL®やPMBoK®など、既存の方法論が時代に合わせてアップデートされる一方で、VeriSM™、SIAM™など、デジタル時代を前提とした新たな方法論も出てきています。選択肢は増加しているものの、各方法論の内容は収れん傾向にあります。

  • 開発・運用手法の変化
    反復型開発・ハイブリッド型開発といった開発手法が浸透し、従来のITILとは異なる視点の運用手法も活用され始めるなど(DevOps、SREなど)、大きな変化が起きています。

  • ソーシングのあり方の変化
    DX推進ではスピードがより重視される中、ITの内製化にフォーカスが当たり始めています。新しい取組みには、多様なスキル・ケイパビリティが必要ですので、ソーシングがポイントになります。調達方法も多様化(クラウドソーシング、副業等)してきており、調達する側・される側ともに環境は大きく変わってきていると言えるでしょう。

3-2 「サービス運営モデル」実践のためのヒント

このような中で、どのように手法・方法論を選択、活用していけば良いかについて、3つ提案します。

  • 最新の方法論を一つ集中して学ぶ
    最新の方法論を学ぶことには価値があるので、どれか一つを選んでできるところから適用してみることが重要です。当社としてのおすすめは、ITIL4とVeriSM™です。

  • バズワードに踊らされない
    Agile、DevOps、SRE…言い方は違っても目指すところは同じで、「顧客価値をどう創出するか」ということです。見ている観点やコミュニティの違いで全く違う世界のように感じてしまうかもしれませんが、基本的に同じことを目指しているものだと理解し、あまりバズワードに踊らされないようにすることが大切です。

  • 現在の運営モデルを評価する
    ソーシングのあり方を含め、サービス運営モデルを変革するのにはパワーが必要となるため、一度確立された運営モデルは長期間見直されないのが一般的です。一方で、ソーシングを取り巻く環境は変わってきているため、現在の運営モデルが現在・将来のニーズに対応しているか、ソーシングは価値を生んでいるかを評価してみることには価値があります。


4 まとめ

現在ITSMには多くの変化が起こっています。今回紹介したのは一部ですが、皆様の置かれている環境が大きな変化の中にあることを理解して、ITSMのあり方を見直す機会としていただけたら幸いです。ぜひ「実践のためのヒント」を参考にしてみてくださいね。

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