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時の流れ~米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』

米澤穂信(以下、敬称略)といえばオタク界隈的には「古典部」シリーズ、もっといえば『氷菓』が有名だと思うし、本読み界隈では直木賞受賞作の『黒牢城』かと思う。しかし、私にとっては「小市民」シリーズの方ばかり追っかけていた。今回紹介する作品は、そのシリーズの完結編となっている。

なぜ、「小市民」シリーズを追っかけたのか。それは刊行順がわかりやすかったからだ。春から始まるシリーズだと一発でわかったので追っかけた。
たとえば、西尾維新の「戯言」シリーズや「物語」シリーズは、初見じゃ刊行順も時系列もわからない。しょーもない理由かもしれないが、私にとっては結構大切だったりする。

さて、このシリーズであるが、外伝から数えても4年ぶり、本編の「秋」から考えたら15年ぶりの刊行である。
「秋」刊行時に生まれた方も高校生になってしまうではないか!!
時の流れって怖い!

さて、当作品であるが、その「時の流れが重要」になってくる。主人公は冒頭で事件の被害者になって入院するのだが、病院内の描写よりは、過去に主人公が立ち会った類似事件の回想がほとんどを占めている。私のような読者は、その傾向にとらわれて「過去の回想がキーなんだろうな」と予測する。その予測は間違っていないが、それ以外の描写もかなり重要だった。見事に足をすくわれてしまった。フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットすべてにおいて、あらゆる描写が重要になっていて、「現在の時間」が単なる「回想のスタート地点」になっていないのは感服した。

15年待って良かった。これから別の作品も開拓しようと思う。

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