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日欧地域間イノベーション協力: プロジェクトの総括と成果

2021年11月に開始された日欧地域間イノベーション協力は、EUの地域と日本の府県との協力関係の促進に焦点を当て、地域レベルでのイノベーション、起業家精神、スタートアップエコシステムの政策分野における知識の共有と相互学習に重点を置いた協力を推進させることを目的としたプロジェクトです。また、グリーン復興、脱炭素化、再生可能エネルギー、デジタル化、社会的イノベーションなどを、EUと日本の両地域が直面する共通の目標や課題として認識しています。

EUと日本の参加地域・府県:
プロジェクトには、EUの6つの地域(オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域、バスク自治州、カタロニア州、エミリア・ロマーニャ州、リュブリャナ都市域、ヴァルドワズ県)と日本の5つの府県(愛知県、京都府、大阪府、広島県、大分県)が参加しました。欧州の地域と日本の府県のマッチングには、特定のテーマについて1対1のペアリングを行うのではなく、オープン・ペアリング・アプローチが用いられました。プロジェクトでは2回のスタディビジットが行われました。1回目は2022年11月に行われ、欧州地域が日本を訪問し、2回目は2023年6月に、日本の府県が欧州地域を訪問しました。ネットワーキングと意見交換を促すため、プロジェクトの日欧全ての地域や府県が参加する交流会議も複数回開催されました。また、エネルギー転換や水素、スタートアップ・エコシステムとオープンイノベーション、フードテック、アドバンスト・エア・モビリティなど、共通の関心テーマを扱った一連のテーマ別ウェビナーも開催されました。これらの活動により、地域政府関係者とステークホルダー間の交流が促進され、双方の研究機関や企業間の交流が深まりました。

EUと日本のイノベーション政策:
欧州でも日本でも、地方政府はイノベーションの育成において重要な役割を果たしています。プロジェクトでは、地域経済の活性化におけるイノベーションの重要性を認識し、各地域による異なるアプローチに着目しました。EUの「スマート特化戦略」が、地域の多様性と強みに焦点を当てているのに対し、日本の政策は、国からの財政的支援は限定的であり、それぞれの特徴に基づいた地域のイニシアティブが奨励され、各自治体の創意工夫と財源に大きく依存しています。

イノベーションにおける地方政府の役割:
グローバル・サプライチェーンにおけるEUと日本の企業間の協力は広範に行われてきました。しかし、イノベーションとスマートスペシャリゼーション政策に関する地方自治体間の交流は未発達でした。このプロジェクトでは、イノベーション政策と戦略の推進における欧州と日本の双方の地域当局の役割を強化することを目的とし、同時に日本と欧州の産業分野での協力とビジネスマッチングのイニシアティブの支援を行いました。

官民パートナーシップ:
地域当局がイノベーションの優先分野を特定し、投資を呼び込むためには、民間部門の関与が不可欠です。プロジェクト参加者は、イノベーション・イニシアティブの開発、起業家精神の促進、スタートアップ・エコシステムの構築に不可欠な、EUと日本における官民パートナーシップの優良事例を学びました。また、中小企業を含む企業を支援するための研究センターなどの公的インフラに関してや、大学、研究機関、企業、市民社会を巻き込んだ四重螺旋アプローチについても学びました。

プロジェクトのインパクト:
正式な協力協定に加え、大学、研究機関、テクノロジーパーク、企業など、各地域の主要なイノベーション関係者間の交流促進において大きな進展が見られました。欧州と日本の双方の参加者は、このプロジェクトに高い満足感を示しました。特に、欧州と日本の主要な関係者を結び付け、相互理解を深め、人的・組織的交流を促進するといった点においてこのプロジェクトが果たした役割に言及しました。参加者は、日・EU間の分散型協力の機会が今後も強化されることを望むことを示しました。プロジェクト側は、テーマごとに異なる協力戦略の必要性と、水素、スタートアップエコシステム、オープンイノベーションといった共通の関心事に関するテーマ別クラスター活動の可能性を強調しました。特に日本の管轄区域の文脈における地域間協力と都市間協力の間の調整の必要性が強調されました。


こちらの記事は2023年11月23日にIURCのウェブサイトに掲載されたNewsの和訳です。原文はこちらからご参照ください。