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成田亨のデザインは宝の山! --- ザ・トライアルズ・オブ・ウルトラマン

"いや、火山なんかじゃない…"
"這い寄る煉獄…ザンボラーだ!"

!!!!なーんてザンボラー好きにとってたまらないセリフを目にしては、こりゃ買わないわけにはいかないわけで、2冊目も買ってしまいました。マーベル版ウルトラマンの第2巻であります。

第1巻ではウルトラマンとハヤタの出会い、そして「統合科学特捜隊」が隠し続けてきた怪獣の脅威が、ウルトラマンの登場で世間に明るみに出てしまうところまでが描かれました(科特隊はMIBや鬼殺隊のような隠された組織として描かれます)。続く第2巻となる本作では「隠れて活動していた科特隊」に対し不信感を抱く人々や、怪獣の脅威を信じようとしない人々に対し、ウルトラマンとハヤタ、そして科特隊がどのように振舞うべきかを模索する、という話です。正義の味方が世の中に正義の味方として受け入れられるまでの葛藤というのは、スパイダーマンを始めとして数多の作品で取り上げられているテーマですが、それをウルトラマンにもぶつけています。ただ他のヒーローのように「選ばれし者の苦悩」的な暗さはなく、あくまで前向きに理解への道を探ろうとするウルトラマンとハヤタの姿は清々しくていいと思います。

そもそも、私たちが知るウルトラマンはハヤタと心身共に融合しているわけですが、この物語ではウルトラマンとハヤタは全くの別人格で、二人を取り巻く問題に対して二人で議論して結論を出すというのが面白いです。例えば身内の科特隊が危機にあったとしても、それが人同士の諍いであればウルトラマンとしてはむやみに介入したくない。ならば、じゃあそこは生身のハヤタが頑張るよ!というような議論が要所要所で交わされます。こうしてウルトラマンとハヤタの協力関係を軸に据えながら物語が展開していくわけで、この作品は「ウルトラマン」の物語というよりは、「ウルトラマンとハヤタ」の物語なのです。

まあ、普段読んでる進撃の巨人やら鬼滅の刃やら見れば、ストーリーも作画も大味な印象は拭えないわけですが、それでも作画を担当しているフランチェスコ・マナのアートからは「怪獣を描く喜び」みたいなものがすごく伝わってきます。やっぱりアメコミの主流はヒーローもヴィランも等身大が基本であって、巨人と大怪獣が取っ組み合いをするなんて展開はなかなか無いでしょうから、相当楽しいんだと思います。成田亨がデザインした怪獣たちは、アメコミの世界から見れば宝の山なのかもしれません。

ザンボラーさん大活躍!

今回登場する怪獣は、ぺスター、ギエロン星獣、ジラース、ザンボラー。相変わらず渋いチョイスです。いくつかの怪獣については脚本側からかなり大胆な設定変更を強いられているのですが、それでも怪獣のフォルムは非常に大切に守られているので読む側が不快になるようなことはありません。いやむしろフランチェスコさん、めちゃ頑張ってます。素晴らしい怪獣絵師です。この人の描く怪獣ならまだまだたくさん見たいです。特にツインテール描いて欲しいわぁ。(それにしても作中で「デザインは二番煎じ」と言われてしまうジラースさんは不憫…。)

原作リスペクトは科特隊の隊服にも表れていて、あのオレンジ色の隊服をそのまま採用しています。この科特隊の隊服が全然古さを感じさせないのもすごいですが、面白いのが同じ科特隊の人物として登場するモロボシ・ダンだけは、なぜか普通にウルトラ警備隊の隊服を着ているのです。まあ、アメコミは慣れないと顔の判別がむずかしいので、読む側としてはありがたいのですが、これから先この隊服にどんな理屈をつけてくるのか楽しみです。本作の科特隊は正式名称を「統合科学特捜隊」と呼んでいるので、科特隊とウルトラ警備隊が統合されたということなのかもしれません。

さて、そのモロボシ・ダンが本書の終盤でついに変身を遂げます。これも今回の見せ場の一つでなかなかカッコいいです。漫画のULTRAMANでもそうでしたが、ウルトラセブンが「硬派でニヒルなイメージ」というのはどうやら万国共通みたいですね。ウルトラマンは目が丸いせいかどうしても優しさや穏やかさがにじみ出てしまう。ウルトラマンには青空が良く似合うし、ウルトラセブンには夕陽が似合います。この物語ではまだウルトラセブンも敵か味方かわからない謎のキャラクターとして描かれていて、これから先の展開に目が離せません。

さらに、まだこの物語にはウルトラマン・ウルトラセブンの世界を形成する重要なピースがまだ登場していません。それは「宇宙人」です。明らかに「宇宙人」の存在を温存しているように見えるこのシリーズ、最初に登場する宇宙人が誰になるのか気になります。個人的には欧州の過激な環境保護活動家の少女をメフィラス星人が拐かす話とか興味あるんですが(毒)…。

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