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学校に行けない・行きたくないあなたへ

 夏休みが終わり、多くの地域で学校が始まっているらしい。それに伴って、私はどうしても自分と切り離せない出来事を、毎年この時期になると考えてしまう。学校に行けないこと、いわゆる、不登校について。

学校行かないとダメですか? - Yahoo!ニュース https://yahoo.jp/MAIw5K #今つらいあなたへ

 私自身も学校に行けなくなった時期がある。中学二年生の秋冬はずっと学校に行かなかったし、高校二年の秋冬も必要な出席分しか通えなかった。高校三年になっても、出席日数が足りなくなると何度も言われた。理由は、本当に端的に言えば、中学のときは対人関係、高校のときは自分自身の問題だった。個人的に、中学のときの方がより不登校という印象が強いから、今日はその話を少しだけしたい。

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 中学二年生、学校に行かなくなり始めたときのこと。私はお風呂に入るのが怖くて、どうしても入れなかった。それは、お風呂にある鏡で自分の姿を見たくなかったことと、お風呂の中で一人で何かを考えてしまうことが怖かったからだった。

 その様子を見た母が、お風呂に入れないならと髪の毛を洗ってくれたことを覚えている。蒸しタオルで体を拭きながら、私は思う。「私、みんなが普通にできることができない。将来、ロクな大人にならないな」と。

 学校に行かないことで人生は終わらないけれど、少なくとも、当時の自分にとって学校に行かないことは人生が終わったも同然だった。義務教育をきちんと受けておらず、この先高校にもいかずにずっと親を頼りにして生きていくか、それでも雇ってくれるようなところに就職するか、どちらかだと思った。自分が目指していた教師という職業に、学校に行かずになることはできないと、何となくわかっていた。

 小学校のときも仮病を使った記憶はないし、真面目な子どもだった私にとって、学校に行かないという選択肢は不真面目だと感じていた。それが、悪いことであるという意識よりも、自分の将来や、親に迷惑をかけていること(親は迷惑じゃないと言っていたけれど)、何より「普通はできることが私にはできない」という事実の積み重ねが私にとって大きなショックだった。

 そんな私は、今大学二年生になる。中学も卒業できないと思っていたけれど、なんだかんだでまだ学生を続けている。それでも今になって思うのは、学校には行かなくてもいいということ。そしてそれ以上に、「不登校に何か言う大人のことを信じないこと」を伝えたいと思った。

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 学校に行く・行かないについては、人それぞれ、様々な意見がある。それは当然だと私は思う。私は、学校に行ったことのメリットもあると感じているし、学校に行かなかったことで得られた経験が山ほどあるからこそ、学校に行かないという選択肢もあっていいと思える。

 けれど、今学校に行けない・行きたくない人に伝えたいのは、そういう意見を鵜呑みにすることは危険である、ということだ。誰かが「学校には行かなくてもいい」と言ったことや、誰かが「学校には行かなければならない」と言ったこと、それらを信用しなくてもいいと、私から伝えたい。

今 彼らが戦うべきは”自分自身”
私たちが無理に入り込んだら―― 戦う相手が増えてしまう
私は腕を切りたいと思ったことも 叫び出すほどの恐怖を目撃したこともないから分からない
そんな私が彼らの過去を探ろうものなら きっと私は彼らにとって最も憎い敵になる
(雨瀬シオリ『ここは今から倫理です。』より引用)

 学校に行けないこと、行きたくないこと。それらを決めるのは、自分でなければならない。なぜなら、それを決めるだけの理由や根拠は、今迷っているあなたにしかわからないことだからだ。「いじめられている」「勉強ができない」――そういった理由を聞いて、私は理解できる。けれども、すべてを理解できるわけではない。あなたが見ている世界は、あなたしか知らない。誰かの意見を鵜呑みにするのは、あなたの世界を誰かの世界に置き換えてしまうことに他ならない。だからこそ、誰かの意見を信用することは危険なのだ。

 すべての判断基準は自分にある。それはとても自由なことのように見えて、とてもつらい。私自身も、何度も誰かに委ねようとした。時には学校の先生に、時には親に、時には友人に、時にはインターネットに。でも、その答えはどこにも書いていない。誰も、私ではないからだ。私の答えは、私しか持っていないからだ。

 学校に行けない・行きたくないあなたに伝えたい。

 今あなたが戦うのは、あなた自身とだけでいい。誰かがあなたのことを分かったふりして言うかもしれない。けれど、その誰かは、あなたではない。誰の言うことも信じなくていい。そして、あなたが信じたいと思うものや人を信じてほしい。

 きっと今も、つらい気持ちでいっぱいの人がいると思う。「学校に行きたくても行けない」「学校に行きたくない」。その気持ちを見捨てないであげてほしい。その気持ちと向き合うことはとても苦しいけれど、向き合ってはじめて見えることがあるから、どうか、そこだけは、諦めないでほしい。

 最後に、もし眠れない夜があったなら、おすすめする曲を紹介したい。BTSの「Blue & Grey」。柔らかいサウンドを聴きながら、どうかあなたがいい夜を過ごせるように、眠れるように願っている。



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