見出し画像

強くなりに行こう

なにか目覚めそうだよ
まだ名もないキモチが
違う明日を見たがってる
(Liella!「始まりは君の空」より引用)

 何気なく開いたその動画の、そんな導入から始まる歌を聴いて、動画から流れる音と色彩が、一瞬で自分のものになったような気がした。自分で始めたことに答えがなく、どうすればいいのかわからない焦燥感。やりたいと思っていたことをうまくできずにいる自分。考えは及ぶのに、自分の無力さを見せつけられる日々。名もないモヤモヤを抱えながら過ごしていた。

 ある日、私はたまたま新しいラブライブの動画を開いた。ラブライブ自体は知っていて、μ'sのアニメは見たことがあった。けれど、それは当時流行っていたからなんとなく見ていただけであって、それ以降どっぷりハマることはなかった。

 久しぶりに見るラブライブの世界。私は驚いて動画を見つめた。私が知っている「ラブライブ」とは違う姿が、そこにはあった。

 昔から、スタイルやルックスに自信のある方ではなかったし、むしろ自分の容姿が好きではなかった。脚は短いし、顔は大きいし、いわゆる可愛い子ではなかったと思う。

 だからこそ、「アイドル」というものにも、あまり関心を持てなかった。可愛さをアピールするその姿は、可愛くなれない自分のコンプレックスを刺激されているような気がしていたからだ。あんな風にはなれない、ちやほやされない、私は可愛くない…。そうやって私は、「可愛くない」という檻の中に自分を閉じ込め続けていた。

   ・ ・ ・

 高校三年生になって、ななこさんという方と、キムスプスプさんという方の動画を見るようになった。最初は単純に「メイクってどんなものなんだろう」という興味から見ていたけれど、見ていくうちに、その魅力が分かるようになっていった。

 メイクをすること。それは単にきれいになることだけではない。メイクをすることは、自分に自信を持たせる行為だ。自分にあるものを、メイクを通して最大限に魅力を引き出す。鎧であり、お守り。強く在れないとき、支えてくれるもの。それがメイクなのだと知った。

 それ以来、メイク道具を買ってみたり、実際にメイクをしたりしてみた。そこからファッションにも興味を持ち、自分に似合う色はどんなものなのか、どんな色や物を可愛いと思い、身に付けたいと思うかを検討するようになった。普段ほとんど見なかった自分の顔や体を鏡で見ると、自分にある魅力的な部分にも気づけた。自分の嫌なところは、どうやったら魅力的になるかを考えた。私は、私に気付いていったのだ。

   ・ ・ ・

 そんな経験をした後で見たラブライブは、もはやただの可愛いアイドルの物語ではなかった。もちろん、可愛い姿は前提にあっても、それぞれが悩みや葛藤を抱えているのは私と一緒だ。自分がより魅力的になるにはどうしたらいいか。そのことを常に考えるのが、「アイドル」という人たちであること。それに気づいた途端、私は「アイドル」と呼ばれる人たちを尊敬するようになった。

 自己表現をすることは、ときには誰かに応援されることであり、ときには誰かに心ない言葉を投げられることだ。それでも、自分が在りたいと思える姿を貫く仕事が「アイドル」なのだ。

迷ってばかりじゃ変われない
信じようよ 自分のチカラを

 これからも、私はどうやったら魅力的になれるのかを考えていく。それは私が私であろうとすることそれ自体だ。そして、その行動に自信が持てなくなったり、頑張れなくなったりするときには、きっと、今回出会えたLiella!だったり、世の中にいる「アイドル」たちだったりに、元気をもらいに行くのだろう。私の中に生まれるモヤモヤと付き合っていくために、私は私自身で強くなりに行こう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?