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健康寿命を伸ばしたい。定年後の仕事。

皆さん仕事というと、どういうイメージですか?
お金を貰うのだから嫌なことを我慢する。
そう思われた方がほとんどではないですか?
勿論生活のために働いているのですから、楽しい事ばかりではないと思います。
しかし少し考え方を変えることによって人生が充実した方も沢山います。
今回はほんの少しの工夫で楽しく仕事をしている方のお話です。

 ゴールデンウィークも終わり蒸し暑い5月末の事である。その日は夕方4時を回っても太陽は高く外を歩いていると汗が吹き出した。
私は早めに仕事を終えカンカン照りの道路をトボトボ歩いていると、ふと銭湯の看板を見つけた。
特別銭湯に行く予定はなかったが、何故かその日は吸い寄せられる様に銭湯に入った。
私は中に入り、大小タオル、石鹸、シャンプーの一式を入口の自販機で買った。
入浴料込みで600円位だったろうか。
私は、あまり銭湯は入ったこと無いので妙な高揚感もありワクワクした。
入浴場に入ると中は明るく、石鹸の良い匂いがした。洗面器の音なのかカンカンと独特の音がアチラコチラでし、まだ早い時間なのに銭湯でユックリしている背徳感と優越感の入り混じったなんとも言えない気分になり、例えようのない快感を感じた。
私は下洗いをし湯船に入ると、我が家の入浴とは比べものにならない位贅沢な気持ちになった。
これが幸せというものか!大げさではなく本当に天国かと錯覚した。600円で天国を味わえたならこんな幸せなことはない。
私は暫し湯船に浸かっていると同じように快楽に浸りきっている一人の70歳前後の方がいた。
周りを見ると夕方4時であり人はそこまでいなかった。70歳前後の方が私をポンヤリと見た。私も彼をポンヤリと見ると彼は私に屈託のない安心感のある笑顔で話しかけてきた。
「良いでしょ。」
「はい、良いですね。よく来られるんですか?」
「はい、決まった銭湯はないんですが、私入浴の執筆をしているんです。」
「執筆?」
聞き慣れない言葉に私は反応した。
「はい、色々な銭湯に行って感想を書いたり、帰りにふと飲食店に入って感想を書いているんです。最近は銭湯もオシャレになって、回っていると面白いんです。」
「そうなんですか、執筆というと本か何か書いているんですか?」
「はい、自費で出すこともありますよ、意外と買ってくれる人もいるんです。趣味と実益を兼ねて楽しんでます。」
「そうですかそれは面白い。」
私は70代前後の彼と入浴をしながら裸の付き合いをした。話しは面白く尽きることはなかった。
彼は人見知りとは無縁な印象で初対面とは思えない付き合いやすさがあった。
彼との入浴はとても楽しく堪能した。
銭湯を出ると日はまだ高く、どちらともなく飲みに行くことを提案し、近くの居酒屋で飲むことになった。
70歳前後の彼はビールをグイグイジョッキで飲んだ、飲めば飲むほど饒舌になり楽しい方だった。
「私は会社には馴染めなくて、そこそこの肩書で定年を迎えました。何か自分が自分でなかったサラリーマン人生でした。その後これから何をしたらいいのか途方に暮れていたのですが、このままではボケてしまうと思い、取り敢えず備忘録を兼ねて毎日の事を書き留めておこうとしたんです。何を食べ、何処に行き、何を考えているのか?毎日毎日ノートに書いて記録したんです。そしてある暑い日ふと銭湯に入ったんです。そして湯船に浸かっているとき思ったんです、
こうして銭湯でゆっくりしている、こんな幸せなことないではないか、そして何気ない事でも人生楽しめる。私の中では大発明でした。そしてこの大発明を皆に知ってほしくなったんです。
それから色々銭湯を調べては入りに行きました。そして帰りに軽く飲んで、それを記録して皆にブログで知らせる。これが意外と楽しいんです。たまに貴方みたいに仲良くなる人もいて、銭湯めぐりも良いものです。」
「素晴らしいですね。」
「はい、幸せは人それぞれ、自分の本当に楽しいと思うことをしたら良い、パソコンでそれを発表して面白いと思ってくれる人が一人でもいればそれで良いんです。いや、一人もいなくても良いんです。何しろ備忘録なんですから。」
「そうですね、全くその通りです。」
「貴方も若いのだからやりたい事をやりなさい、人は気にしなくて良いよ、この世は広い、貴方を欲している人は出てくるものです。大丈夫ですよ。皆が経営者であり、評論家であり、選ばれた人間。そう思えば人生楽しいでしょう。」
彼は少し真顔になって私に語りかけた。
彼とそれから2時間近く飲み、連絡先を交換して別れた。とても楽しく湯意義な時間だった。
私は非常に素直で単純な人間である、今こうしてnotoにツラツラと文章を書いているのは、この70歳前後の方の助言があったからである。彼とは今も付き合いがあり、とても良くしていただいている、そして様々な体験を彼とはするのだがそれは次の機会にしたい。
「今はいい時代です。指先一つで色々な人とコミニケーションがとれる。行こうと思えば交通網も発達してどこでも行ける。定年を迎えた人は時間も沢山ある。いい時代です。」
彼は現在70歳代後半にさしかかったが、精力的にアチラコチラに出没している、余談だが今年の春はカナダからの絵葉書を頂いた。まだまだ元気である。
そのうち彼はこう言うかもしれない。
「今度世界を一周してみるよ。」
と。



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