対話

「書けないのか?」

「書けるよ」

「書けるよって言っても…。ノートが真っ白じゃないか」

「いや、これはその…。書いたことは書いたんだよ。でも気にくわなかったから破いて捨ててしまったんだ」

「捨てた紙はどこにある?」

「いやあ、もう燃やして灰にしてしまったよ」

「…ノートを見る限りでは破った形跡がないようだな」

「うん?…。そういえばノートに書いたんじゃなかった気がする。何かの紙切れに書いたんだったかな。まあいずれにしても燃やしてしまったからな。でも書いたのは本当さ。それなりの出来であったことは間違いないけれど、まあなんとなく気にくわなかったから燃やした。俺はとにかく自分に厳しいからな。そういう性分なんだよ」

「灰はどこにある?」

「窓から捨ててしまったよ。風に吹かれて拡散してしまったから、探すことは絶対に無理だよ」

「…」

「…」

「まあお前がそう言うのならそうなんだろうよ」

「そうなんだよ。いや絶対に間違いない。確かに俺は書いたんだ。ただ気にくわなかったから消してしまった。それだけなんだよ。信じてくれよ」

「信じるよ。友達だからな」

「ありがとう」

「友達だからこそ、疑うべきなのかもしれない。でも僕にはそれが出来ないんだよ。どうしても」

「それでいいんだよ。少なくとも俺にとっては」

「いずれにしても応援してるよ」

「ああ、いつかすごいものを書いてやるよ。その時は真っ先にお前に見せてやるよ」

「ありがとう」

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