床屋にて

 夕方床屋へ行く。1100円の方。中には3人先客がいた。丁度髪を切られている途中の男性と、パーマをかけている途中の女性と、順番を待っている高校生らしき少年。私は空いている席に座り、雑誌を物色してみた。まずヘアースタイルの雑誌をぱらぱらとめくる。あまり楽しくなかったので今度はファミ通を開いてぱらぱらめくってみるがこれもあまり楽しくなかった。やがて男性の散髪が終わる。次は少年の番か、と思ったら理容師はどこかに行ってしまった。しばらく少年と私は待たされる。やがて女性のパーマが終わる。この女性は結構な年配のようで、やたらと大声で話しかけていた。なんでも

「パーマのかかりが悪いどうしてだろう」

「トリートメントを多めに使ったんですよ、そのせいかもしれないですね」

「パーマのかかりが悪いのはいつものことなんですよ。他の美容院ではいつもかかりが悪いんですよ。でもおたくでは今までそんなことなかったんだけど今日はパーマのかかりが悪いね…」

「トリートメントが…」


 という話を6億回ほど2人は繰り返していた。老婆は最近健康診断にひっかかり(そんなことは今まで一度もなかったらしい)、詳しい検査をしに病院に行かなければならなくなったらしい。嫁と息子が付き添いにきてくれるそうだが、彼らに会うのに、ぼさぼさの髪では申し訳ない、きちんとパーマをかけなおしておこう、そう思って今日きたんだけどパーマのかかかりが今日は悪い、どうしてだろう… トリートメントが…

 その後老婆は去り、私の番となった。心なしか作業が荒いように感じた。しかし気のせいだったということも十分ありうる。私の神経もやや高ぶっていたのでそう感じただけかもしれない。仕上がりはまあまあ満足できる出来だった。

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