図書館にて

ニジンスキー手記を少し読む。統失的な散文といったところ。手記を書くようになった頃にはもう彼はあまり踊らなくなってしまったそうである。


初めの方は文章がぶつぎりで読むのが辛いが、先に進むほどおもしろくなってくる。証券取引所が憎いと書いた後でチューリッヒに行って株券に投資したいと書いたりしている。どうも発狂しているというよりは言葉と戯れている、言葉で遊んでいるというような印象を受けた。


宮崎市定の政治論集も読む。こっちはちょっと手強い。


図書館にいる人はどれもこれも咳をしたり鼻を啜ったりしている。食堂もおっさんが麺をすする音を除外しさえすれば静寂である。ただ、いつもはたくさんいる集団勉強をする高校生たちがいないのでその点では本当に静かである。正面の窓を通して頭でっかちのタワーマンションと東京タワーが見える。前回ここに来た時はすでに辺りは暗くなっていて、タワーはライトアップされていたのだ。…今は本当に静かである。そばにある自動販売機か、はたまた別の何かからモーター音のようなものは聞こえるが、それはむしろ心地よいぐらいである。
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