烏と蛇


 烏は物事を外側から認識したがった。蛇はあくまでも内側から認識したがった。烏は何かを深く知るためにそれを壊してしまったら意味がないと考えていた。蛇は壊してでも知るべきだと考えていた。

 烏は今日という1日は2度とやってこないと信じていた。蛇は再現できないもの。再生できないものは存在しないと考えていた。


「どんな幸せも、また手にすることができるから尊いのさ。なんだかんだいっても明日もちゃんと陽が昇る。それをわかっているからこそ僕たちは生きていけるんじゃないか」

蛇がそう言った。


「今日の太陽は明日の太陽とは違う。今年の桜は来年の桜とは違う。今生きている僕はいつか生まれ変わる僕とは違う。だからこそ尊いんだ。だから今日を大切に生きていけるんだ」

烏がそう言った。

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