辻潤について
辻潤全集四巻を読む。戦時中の文章である。辻はこの時全く貧困の中に落ち込んでいて、さらに戦争が進むにつれて物資の欠乏も激しくなっていき、遂には餓死してしまった。金のために色々と文章を書いてはいるが、どれも「何を書けばいいのかさっぱりわからない」という書き出しで始まっている。虚無感は頂点に達していたようで、何をしても楽しくないし、何に心を動かされるということもないと述べている。酒すら心を潤すことがなくなってしまったとも言っているが、しかし性欲などは割合あるとも言っている。単に物資欠乏に対するイライラが虚無感となって表れていただけかもしれない。しかしその虚無感は結構本質的なものであるように私には思われる。物資で満ちてさえいれば人は本当の意味での虚無感に落ち込むことはないのだ。
辻潤は萩原朔太郎と親交が深かったとのこと。萩原曰く、自分が尊敬している人物は2人いて、1人は谷崎で1人は辻だったという。実際の所はどうだったのだろうか。
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