統率者 種族王 決定戦 cpt.Ⅲカバレージ
初代種族王のいってつ(1-2)です。
ああ負けたよ。今回も優勝できなかったさ!
しかし決勝ラウンドに残れなかった者にもやれることがある。それは決勝戦を見届けることだ。環境が大きく変わってしまった第三回種族王決定戦の模様をお届けしよう。
種族王決定戦概要
簡単にイベントの概要を確認しよう。
統率者種族王決定戦(以下、種族王)はツナ氏が企画・主宰する統率者戦イベントである。種族王というだけあり、統率者を筆頭にクリーチャー・タイプを統一したうえで統率者を除き25枚以上のクリーチャー・カードを採用しなくてはならないという構築制限がある。
あくまで「部族」どうしの戦いということで、生き物の種類を表すクリーチャー・タイプでデッキ構築をしなければならない。例えば《刃を咲かせる者、ナジーラ》なら、人間統一デッキは可能だが、戦士デッキにはできない。
《法務官の声、アトラクサ》は「天使」「ホラー」「ファイレクシアン」の3つのクリーチャー・タイプを持っているが、デッキに入れられるクリーチャーはこの3つのどれか1つで統一しなければならない。
なお、《ウルザの物語》などトークンを生み出す能力については不問となっている。また、プレインズウォーカー・カードは使用できない。両面カードの場合、第一面の特性を参照する。
また、無限コンボ(任意の回数繰り返すことができるループ)についても制限がある。種族・クリーチャーが絡んだコンボでなくてはループを形成できない。クリーチャーを用いて生み出した無限マナを《威圧の杖/Staff of Domination》などに注ぎ込むのは適正である。
今回は予選ラウンドの3戦を行い、勝利数の多いプレイヤーが決勝ラウンドに進む形式。タイブレークはゲーム終了時のライフ差などで行われる。
会場は東京・水道橋「東京MTG」さん。マジックの原画やアートプリントの取り扱い、多言語カードの豊富な在庫で人気のショップだ。
環境感・メタゲーム
これまでの種族王では「細いコンボよりも太いコンバット」が優勢と思われてきた。制限時間切れの場合はライフが最も多いプレイヤーが勝利となり、タイブレークもゲーム終了時のライフ差で行われるため、ライフ回復手段を持ちながら回避能力を持ったクリーチャーも多い、白・黒を擁するデッキが有利だと思われていた。
しかし、この第三回ではその様子がすっかり様変わりしてしまった。環境は一気に高速化し、コンボデッキが従来のデッキを圧倒。3ターンキル、4ターンキルが平然と横行し、悲鳴まで聞こえてくるようだった。
もともと打ち消しの少ない環境だったこともあり、オールインコンボに構えることができるデッキもプレイヤーも少なかったのだ。
ではどんなデッキが勝ち残ったのか。決勝に進んだトップ4のデッキを見てみよう。
トップ4デッキリスト
4位 Yamada選手 人間《巻物の君、あざみ》
事実上の人間・ウィザードデッキである《巻物の君、あざみ/Azami, Lady of Scrolls》。ウィザードをタップするだけでドローができる、シンプルで強力な能力でひたすらアドバンテージを得ることができる。できるからこそ、《意志の力/Force of Will》や《渦巻く霧の行進/March of Swirling Mist》といったアドバンテージを失うカードも採用することができるのだ。
手札を捨てることでパーマネントをアンタップできる《精神力/Mind Over Matter》との組み合わせて無限ルーティングが可能となり、《研究室の偏執狂/Laboratory Maniac》で勝利となる。アップキープに手札が13枚ちょうどなら特殊勝利する《十三嗜好症/Triskaidekaphile》も採用されている。
人間・ウィザードは戦闘能力の面で不安があるものの、このリストでは戦闘を阻害するカードが採用されている。はじめからコンバットでの勝利は念頭になく、コンボでの勝利を目指していることのあらわれだ。
3位 板前選手 エルフ《養育者、マーウィン》
エルフが戦場に出るたびにサイズが大きくなり、自身のパワーぶんのマナが出る《養育者、マーウィン/Marwyn, the Nurturer》。
エルフという種族自体、マナ加速と全体パンプアップに長けた強力な存在。それに加え、《威圧の杖/Staff of Domination》《パルンズの剣/Sword of the Paruns》などとの実質一枚コンボを擁している。
無限マナコンボとならなくとも、ビッグマナから《背教の主導者、エズーリ/Ezuri, Renegade Leader》のパンプアップ能力を何度も起動してコンバット勝利も目指すことができる。
2位 きよそね選手 エルフ《ギランラ》&《ネイディア》
ともにエルフである共闘の組み合わせ、《ワイアウッドの呼び手、ギランラ/Gilanra, Caller of Wirewood》と《ダスキネルの工作員、ネイディア/Nadier, Agent of the Duskenel》。《ギランラ》は統率領域に置けるマナクリーチャーでありながらアドバンテージ源でもあり、《ネイディア》は無限コンボのパーツでもある。
前述のとおり、エルフのいう部族はテンポ、アドバンテージ、どちらの面でも高いポテンシャルを持つ。黒緑のエルフデッキには《吸血の教示者/Vampiric Tutor》をはじめとした万能サーチも加わり、再現性の高さはピカイチ。
《ネイディア》は《食物連鎖/Food Chain》との無限コンボとなるカード。動きは《カーの空奪い、プローシュ/Prossh, Skyraider of Kher》で知られているものに似ている。
《ネイディア》を《食物連鎖》する。(黒7マナ、トークン3)
トークンを1体《食物連鎖》する。(黒8マナ、トークン2)
《ネイディア》を8マナで統率領域から唱える。(トークン2)
トークン2体を《食物連鎖》する。《ネイディア》にカウンターが2つ置かれる。(黒2マナ)
パワー5の《ネイディア》を《食物連鎖》する。(黒7マナ、トークン5)
このように、《ネイディア》の統率者税が増えていくが、増えていくトークンを《食物連鎖》することで賄い続けることができる。これをくりかえすことで無限トークンとなる。
そのまま無限トークンで1ターン待って殴ることもできるが、《調和の中心/Concordant Crossroads》で速攻を持たせたり、《ネイディアの夜刃/Nadier's Nightblade》で無限ドレインすることも可能だ。
いってつは予選第1ゲームでこのデッキに2キルされている。(1敗)
いってつは打ち上げに参加せずにカバレージを書いていたというのに、きよそね選手はそれよりも早くレポートを書き上げていた。負けでいいです。(2敗)
デッキ選択理由や予選ラウンドの様子が気になる人は要チェックだ。
1位 T-明林選手 人間《貴族生まれ》の《ヴァル》
《キャンドルキープの研究者、ヴァル/Vhal, Candlekeep Researcher》は自身のタフネスぶんのマナを生み出すことができる。このマナは手札から呪文を唱えるのには使用できないが、《威圧の杖/Staff of Domination》《エネルギー屈折体/Energy Refractor》などの起動型能力のコストの支払いにあてることは可能だ。
そう、これもまた統率者との実質1枚コンボを持っているのだ。
背景・カードで固有色に白を加えたことで、強力な白い人間クリーチャー、強力なクリーチャー除去、《パルンズの剣/Sword of the Paruns》をサーチするカードを獲得している。
決勝戦ゲーム展開
席順は予選ラウンドの順位順となった。
ヴァルとギランラは6枚、マーウィンとあざみは7枚でキープ。
1ターン目
ヴァル以外のプレイヤーはそれぞれ《繁茂》、《ラノワールのエルフ》、《古えの墳墓》+《秘儀の印鑑》でマナ加速。
2ターン目
ヴァルは《Mystic Remora》で抗戦の構え。ギランラは《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》を着地させる。マーウィンは《エルフの幻想家》でキャントリップするが土地詰まり。あざみは《捧げ物の魔道士/Tribute Mage》で《友なる石》をサーチ。
3ターン目
ヴァルは《Mystic Remora》でまだ1枚も引けていない。これを維持して《ルーンの母》。一方、ギランラはターンを受け取ると《再利用の賢者》で《Mystic Remora》を破壊。さらに《速足のブーツ》。コンボ突入を予感させる動き。
マーウィンは引き続き土地詰まり。《アロサウルス飼い》を出してエンド。苦しい……
あざみはエンド前に《猿術》で《ルーンの母》を除去。《友なる石》、《熟練の魔術師、ハーキル》。《熟練の魔術師、ハーキル》の能力で《宝石の睡蓮》を獲得。
4ターン目
ヴァルは除去を吸いすぎたか。《貴族生まれ》を出してエンド。
ギランラは大きく動く。エルフが5体いる戦場に《ティタニアの僧侶》を着地させるとブーツを履かせて6マナを生み出すと、生け贄捧げて《悪魔の意図》。これで《食物連鎖》をサーチ!《ダスキネルの工作員、ネイディア》の着地までたどり着いてしまう。
これには誰も対応できず、無限トークンが成立してしまう。こうなれば全体除去1枚では対応不可能だ。全体除去に対応してすべてのトークンを《食物連鎖》して《ダスキネルの工作員、ネイディア》のパワーを無限にし、全体除去の解決にともない《ダスキネルの工作員、ネイディア》からまた無限のトークンが出ることになるのだ。
みな懸命に対処できるカードを探すが……だめ!ふたたびターンを受け取ると無限トークンで一斉に殴りかかり、勝利!
祭りのあと
きよそね選手が三代目種族王となり、イベントは閉幕した。
高速で再現性の高いコンボデッキが台頭する結果となり、「種族王」の環境が永遠に変わってしまう契機となりそうだ。今後もコンボデッキが幅を利かせるのだろうか、あるいは……?
今回は32人の枠が半日で埋まってしまった。種族王決定戦は注目を集める人気のイベントとなりつつあり、参加できなくても「もし出るなら――」とデッキを考える人、組んで遊ぶ人も出るほどだった。
次回開催が楽しみだ!
参加したいという方は主催のツナ氏のツイッターをフォローして続報を待とう。
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文責:いってつ
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