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マーケターとして「無形商材を売る」原体験は吹奏楽部員だったから(かもしれない)

おはようございます、iCAREという会社でマーケターをしているたけC(→X / twitter)といいます。

こんなツイートがバズっていて、思わず目頭が熱くなったんですね。少し長めですが元ツイを読んでみてください。

同じ経験をした元吹奏楽部員は少なくないはずです。
わたしも中高一貫校において丸6年間を吹奏楽に没頭しており、毎年夏休みになると、定期演奏会の開催にあたって協賛広告を集めに商店をまわっていました。

そうか・・・あの時、広告を出してくださった大人はこんな気持ちで協力していただけていたのか・・・と37歳になって初めて実感しています。

定期演奏会の協賛広告集めとは

中学・高校での定番部活動のひとつである吹奏楽部。だいたいどこの吹奏楽部にも、年1回開催する定期演奏会があります。

この定期演奏会がめちゃくちゃお金を食うんです。

何よりもまずはホール代。部活動の規模によるのですが、わたしがいた吹奏楽部では1000〜2000人規模のコンサートホールを利用していました。かなり大掛かりな部類です。

本番当日は二回講演するので全日必要。本番前日にはリハーサルで全日、場合によっては2週間前にも舞台リハとして借ります。ホールの使用には場所だけではなく、設備使用料と人件費もかかります。照明・音響・舞台設備も、1000人超のホールにおいては10人以上のスタッフが必要になります。

ホール代、設備使用料、スタッフの人件費を合計して200〜250万円/講演。

残りは、楽器運搬代や特別な楽器レンタル、パンフレットやポスター等の印刷費、部員たちの弁当代・・・ちなみに部員は中高6学年で100名を超えます。

合計でざっくり300万円弱の費用がかかるのが定期演奏会です。

たしか高1(2002年)のときの定期演奏会のパンフレット

強豪校ならチケットを有料化できるのでまだマシ

幸いにも私がいた部活はそこそこ有名だったので、チケットを800円(たぶん)で販売していました。二回講演で計2000-3000名ぐらいの集客になるので、ホール代などの費用の大部分は賄える計算です。

部員の家族や友人、OBはもちろんのこと、他校の生徒や地域の方々が楽器店などを通じてチケットを買ってくれるんですね。なんとありがたいことか。

それでもお金が足りない。なぜなら演奏活動が部費で賄えないから。

定期演奏会の費用自体はチケット販売なんとかなったとしても、全然足りない!というのが本音というところです。なぜかというと、定期演奏会以外の演奏活動はほぼすべてが無償だからです。

地域で強豪校と目されるような吹奏楽部、わたしがいた頃の部活動日程を振り返ると月1-2回のペースで演奏会がありました。

近郊(電車で数十分)での演奏会もあれば、遠征(学校は岡山で、福岡や横浜へ)も年に数度発生。仮に近郊の演奏会であっても楽器運搬費用として4tトラック1台+運転手が発生しますし、遠征となれば楽器運搬に加えて大型バス3台での交通費がかかります。

宿泊費を部員持ちであることがほとんどでしたが、年間を通じて部費だけでは本当に赤字運営だったはずです。

だから、定期演奏会の協賛広告は必死に集めていた。

当時はここに書いてきたほどに解像度高く費用について知っていた訳ではないのですが、演奏活動という自分たちの存在意義を守るためにはお金がかかることは学生ながらに実感してました。

では実際の協賛広告はどれくらい必死に集めていたのか?

大口の協賛については顧問やOBの活動で集めていたものの、ツイートにあるような3000円ぐらいの小口の協賛について部員の足でも稼いでいました。

特に集中的に動いていたのは夏休み前の1週間。
学校の半日授業が終わり次第、100名の部員に募集地域を割り当ててその近辺の商店街やお店が集まっている場所を回ります。

わたしの学校は私立で通学範囲も広かったので、広告集めに回る地域もだいぶ広範囲だったんですね。分かる人には分かるように伝えると、東は岡山市から西は福山市の範囲です。学校からは東西に30kmずつ離れるほどの範囲です。

JRが通っているので、福山駅〜岡山駅間にある15駅。大きな駅には20人ぐらい、小さな駅は4人ぐらいのグループに分けて分担していました。

私立の中高一貫高だったので、学生のほとんどがこの範囲の定期券を持っていた。

協賛広告集めは準備が8割。幹部学生はスクリプトに頭を悩ます

「いつもご協賛いただきありがとうございます。今年も定期演奏会を開催することとなり〜」

学生が一生懸命お願いしているのだから、多くの商店が3000円ぐらいは協力してくれるだろう・・・と思いますか?毎年協賛してくれてるのだから、今年もお願いしますといえば協賛もらえる・・・と思いますか?

現実はやっぱり厳しいです。わたしの中高時代は1999年〜2005年で、日本経済は不況のまっただなか、地方経済なんてさらに苦しい状況です。それに協賛してくれるのはほぼ個人商店のみで、チェーン店では無理です。(店頭に行って店長がでてくれるところは限られる)

「やってあげたいのはヤマヤマなんじゃけど、ごめんね」

何度このセリフを聞いたことか。

そのため部員の中でも幹部(高校2年生の代)は、協賛広告になるべく協力してくれるようにセリフ、つまりトークスクリプトを考えます。

これまで営業活動なんて経験がないどころか、イメージさえつかないなか。とある幹部は父親から営業とはなんたるかを教えてもらい、とある幹部は図書室で営業に関する本を借り、17歳が数少ない自分の経験と人脈をたどってなんとかスクリプトを練り上げるのです。

先輩たちから代々受け継がれているものをさらにブラッシュアップする。この活動自体に顧問の先生方はほとんど関与しません、あくまで部員のみでどのエリアのどんなお店をまわり、どういうスクリプトでお願いするのかを考えて実行する。

以上が協賛広告集めの実態です。

なんだかきれいに書きましたが、実際はグダグダですよ。どれだけ丁寧にトークスクリプトを作っていても、その通りに言える部員は少ない。高校生ならまだしも中学生はなおさらです。

今振り返ると、なんて失礼なお願いをしていたんだろうと恥ずかしくなるほどではあります。

が冒頭に紹介したツィートにあるように、ご厚意で協賛していただけて、協賛いただけないときにも応援してくださり、元吹奏楽部員として本当に感謝ばかりです。

マーケターは早いうちに、無形商材を売る経験を積もう

さて、話は変わりここからはマーケター向けのお話です。

わたしがマーケターを自分の天職であると信じて疑わない出発点は、定期演奏会の協賛広告集めにあったんだ。と今日気付きました。

「協賛広告を売る」

言い換えると、
「無形商材を売る」という難易度の高いビジネスを10代のうちにに経験できることは非常に稀だと思います。

マーケターというのは、ついつい頭でっかちになってしまいがちです。つまり現場を見ないということです。

フレームワークを使ったり、データ分析をしたり、売上をたてるための司令塔のような役割ばかりが求められる上に、顧客と相対するのは営業やCSであると役割分担されてしまうために、マーケターという立場は本当に「売る現場」に立ち会うことが少なくなってしまいます。

仮に扱っている商材が有形商材、手に取り使うことができる商品があるのであれば、どのようにお客様に売るのかは想像がつきやすい。なぜならば、自分自身の購買体験があるから。

しかし、無形商材は購買体験が少ないためにお客様の気持を理解することは難しいものです。

無形商材は、商品理解よりも顧客理解を高めないと売れない

有形商材のマーケティングってごまかしが効きやすいんです。

買うモノや買うプロセスというものをお客様自身が勝手に理解してくれるから、マーケターとしてはフィジカルアベイラビリティ(商品を買う機会)を増やしてあげるだけでそれなりに成果が現れるから。

一方で、無形商材では買うモノもプロセスもお客様自身が想像つかないので、マーケターは「このサービスはいつどのようにあなたにメリットをもたらすのか」を説明することからはじめないといけません。

商品理解(何がスゴイのか)よりも顧客理解(誰にとってスゴイのか)を、マーケター自身が言語化できなければ無形商材は売れないのです。

ということを、吹奏楽部員だったわたしが10代のうちに実体験できたことは本当に大きなアドバンテージだったんだと思います。




久しぶりに自分語り中心のnoteでしたが、こんなマーケターと一緒に働くひとの健康を創りたいという方はぜひiCAREという会社を覗いてみてください。

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