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ランボーの足置き

20221005

水曜日



 ランボーは作業のたびに、25cmほどの紙管を持ち出す。
紙管はロール状の印刷を巻くのに使う筒だ。

ランボーは何で紙管を持って行くのかと、Nが疑問を口にした。


 わたしは知っている。天気娘(ウェザーガール)から聞いた。
ランボーは椅子の高さにこだわりがある。
椅子というか、座ってる時の足の角度。
座った時に上体と太ももが90度だか80度にならないと居心地が悪いようで、
椅子をMAX下げて、紙管を足置きにして角度を調整している。

ランボーの次に椅子に座ると、MAX下がっているから落ちる感覚にビックリする。

椅子が低過ぎて、机に向かうには若干怒肩になるが、やり難くないのか。
わたしは紙管ではなく、椅子の高さの方面から疑問に思っていた。



 紙管はランボーが元いた印刷の部署から持って来ていて、毎回使い終わったら返しているらしい。
その返却行為を天気娘が止めてくれた。

以降、ランボーはMy紙管(足置き)を手に入れた。


 作業のたびにそれを持って行くので、今度はN達が疑問に思い始めた。

謎の紙管は足置きにしていると教えると、Oとボスが反応した。
紙管に関わる作業をやる2人だ。


O「それ使わない紙管かな?」

わたし「あー、それは分からない(今までのは普通に誰か使ってると思う)」

ボス「靴かな?靴下かな?」

わたし「靴ならトイレの床踏んでる」

ボス「げー!あたしそれ触った手で飴食べちゃうんだよ」

わたし「トイレの床食ってるじゃん」

ボス「どっちにしても嫌!紙管に足!って書いてって言おうかな」

もうトイレの床食ってんだから今更だわよ。



 ランボーは座る前にも儀式があり、座った時のズボンのポジションが決まるまで座れず、座るまでに時間がかかる。

ズボンの太ももの付け根の所をグイグイと上へ引っ張り、座ってはやり直し、座ってはやり直し。
良い感じになるまでそれを繰り返す。
ランボーにとって「座る」はちょっとした作業のよう。





残業時間。

 ボスが何かこっそり話したがっている。
事務所の方を気にしている。ということは、取締の事か。



 ボスからの情報で、実は今こっそりと採用面接を開催しているらしい。


やはりか。
最近取締の行動がおかしいと思ったんだ。
事務所を空けるからと電話番を任されたり、
普段お茶出しまでなのに長い時間応接室にいたり。

わたしの席から応接室の様子が薄ら見える。見ようと思えば見える。
すりガラスのようなぼんやりしたガラスから、スーツの人と取締と三代目が見えた時、そうかな?と思っていた。


現時点で3人は面接済みらしい。

それで、ボスは何が言いたかったかと言うと、面接官は取締(叔母)と三代目(甥)。
名札が二人とも会社名と同じだから、「親子ですか?」と質問されたのが面白かったという話。

取締は未婚で子どもいないのに、という軽い皮肉だろう。
わたしもそうだが、取締に対してだけ皮肉を使いたいという意味は分かる。


ボス「取締さんが『名札なんて普通見る?』って言ってたけど」

わたし「見ますよ」

O「見るよねえ」

ボス「そりゃそうだよね。で、殿(社長)が来てまた同じ名字だよ」

わたし「笑 圧がすごかったろうな」



 こっそり面接してると言うことは社員の募集だろう。
パートなら堂々とやるはずだ。

この闇鍋感が怖い。
前情報もなく、ある日突然朝礼で紹介される。


 また自己アピールが異様に上手いだけの過信家が入ってくるんじゃないだろな。
過信から入ってるから基礎を疎かにする系の。

口の上手さでいうと営業向きっぽいのに、
実は会話が一方通行で対話が苦手系の。
本人は過去の経験からなるべく他人と関わらない仕事を選んでやって来た系の。

殿はそういうの大好きだから敗者復活させてまで入れがち。

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