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フラグ回収が早過ぎる

20221025

火曜日



 冬の様な寒さ。北風も吹いている。
そんな中、「新人パートのアナさんの長袖問題」が起きていた。
冬のように寒いのに、半袖の制服のままなのだ。
長袖をまだ支給してもらっていない。

Oが「寒くない?」と声をかけようか気にしていた。
わたしは昨日声をかけたが、あんまり触れて欲しくなさそうな反応だった。

取締、ちゃんと注文したのかな。
半袖と同時に注文しないもんなのかな。

ボスからアナさんに声をかけると、やはり「大丈夫です」しか言わない。
ロシア生まれだから本当に寒くないのか、何かの意地なのか。
長袖を用意してくれない国だと思われてもなんだから、とっとと渡して欲しい。


 取締は「寒くないか3回聞いたんだよ!?」と主張しているという。
とりあえず代わりのを渡しなよ、とボスが優しく言うと、「3回聞いたんだよ!?」とまた主張。
自分は悪くないと言いたい。

みんなそれを聞いて、「そういうことじゃねえ」と。
しかしこれ以上指摘すると、取締は不幸な空気をまき散らすので、そっとして置くことに。



 そんな話をしてると、同じ部屋で作業をしていた取締の部下のTナカから新情報。

新人事務員が「就業規定を貰っていない、コロナ感染予防の事を聞いてない」と取締に言ったそうだが、
取締からは「就業規定は殿(社長)が口頭で言うから」と言われていたそう。

Tナカからも取締に伝えると、「ふーん」という感じで「そうだったね」と反応して終わり。


Tナカ「私より先に辞められたら困る」

わたし「不信感はもうありますよね」

N「殿も何も言わないの?」

ボス「あの人(取締)なんの為にいるのよ。殿はしっかりやってくれてると思ってるよ、ねえ?」

Tナカ「はい」

ボス「制服の件もだけど、あの人(取締)なんの為にいるのよ!」

大事なクエスチョンなので二度言った。





夕方。

 休憩に行く。事務所で新人事務員が深々と殿に頭を下げているのが見えた。
帰りの挨拶が仰々しいな、と思った。





残業。

 ボスから伝えられた。

ボス「ここだけの話!ここだけの話ね!新人事務員さんが今日で辞めました

全員「え?」

ボス「休みが取りにくいって。これから田舎の親をこっちに呼ぶから、それだと条件が合わないって。
それでぇ!……殿がヤレバ・デキルジャンさんを事務員にしようって

全員「えーーーーーー!!!」


現在、ヤレバ・デキルジャンはコロナ感染中で、明日から復活する予定。

この話に、偶然残業していたヤレバ・デキルジャンの親友であるベッキーが反応した。

どれほどヤレバ・デキルジャンがこの部署に必要かを我々に説いた。
我々を説得したところで意味はないが。


どうしてヤレバ・デキルジャンが名指しされたのか分からないが、
取締との相性は全く良くないと思う。
どちらもプライドがトゲトゲしく、どちらも責任をひどく恐れトゲトゲしく、そしてどちらも余計に神経が過敏でトゲトゲしい。
トゲトゲ同士は衝突するのが目に見える。



ベッキー「Tシロさんじゃダメなんですか?」

うわー、ベッキーがこの場にはいない代わりの犠牲者を差し出して来たわよ。

ボスとOがダメダメと反論。

Oはやりたくない仕事をやってくれる人がTシロだから困ると言い、
ボスはさらに緊迫感のある理由で否定した。

ボス「Tシロさんも今引き止めてる状態だから、年内で辞めちゃうかもしれない」

本当か?
年齢的にはそうかもしれないけど、
Tシロとは家族ぐるみで旅行に行くくらい仲が良いから、候補から外すために話を盛ってるようにも思えた。


 続いて、取締の実の妹を事務に連れて来ればいいじゃん!とNが言い始め、年齢が51歳か?とボスが言うと、
ベッキーが勢いよく「妹で良いじゃないですか!ヤレバ・デキルジャンさんだって同じ年齢ですよ!」

親友の年齢を大声でバラすベッキー。
もう構やしない。

O「あたしと同じ歳」
N「そうなの!?」
ベッキー「そうですよ!」

これでヤレバ・デキルジャンを事務所から解放するキッカケが出来たと思った鼻息の荒いベッキー。
すると再びボスが「いや、取締さんの1個か2個下だから58とか?」

取締の実妹の年齢を引き上げた。
本当にそうなのかもしれないが。

ベッキーは諦めた。



 殿は「(まだ)Tナカもいるし、ヤレバ・デキルジャンが加工部門のことが気になるなら、事務との両立で大丈夫」だとか言ってたらしい。

殿は適当な事を言って受け入れさせようとしてるが、両立する訳ないし、そんなのすぐに覆るのも目に見える。



 結局、18時辺りにそんな話を始めたからすぐに帰るはずだったベッキーは18時半までいた。
残業出来ないという設定も甘いから付け入れられるんだ。


帰り際のベッキー「ショックで明日来れないかもしれない」

軽くただを捏ね始めた。
ヤレバ・デキルジャンを解放しなければ自分は仕事をしないぞという脅しである。
我々を脅しても意味はない。

N「えーあたしがそれは困るー!」
ベッキー「それくらいショックって事です。はぁ

聞かせる様に大きなため息を吐く。

N「明日来てねー」

Nが再度確認すると、頑張って来るそう。
いや、明日は這ってでも来るよ。





 新人事務員だが、1週間もいなかったかもしれない。
わたしが帰る時、事務所では営業達と取締と殿が笑い話にして5日間とか言っているのが聞こえた。

辞める理由をちゃんと理解出来てないというか、「休みの都合が」という理由だけを素直に信じている様子。


 どうやら新人事務員はTナカが辞めることを知らずに、Tナカを含めて3人でやってくと思っていたらしい。
社内でもまだTナカの事は発表されていない。

引き継ぎだと聞かされて、取締はTナカのことには一切関わるつもりはないしで不安になり、
就業規定も取締からあやふやに回答され、休みも取りにくいわよなんてそこだけはっきりと言われればそりゃあこうなる。




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