見出し画像

屁理屈こきこき

20230323

木曜日



朝礼前

 シール部門のマー君からのお願いで、ランボーが検査を一つ終わらせるとすぐ加工部門に帰ろうとするのを注意してくれと。
続けて指示が出せないと。

なんでそんなことになってんだ。







朝礼後

 ランボーが呼ばれた。

N「昨日、ランボーさんには午前中はプレス、午後から昨日の続きのシール検査に行ってって言ったじゃない?

シールの検査が終わったら、その都度、『私はここまでしかNさんから聞いてない』って言うんだって?」


ランボー「あ、はい!そうです!例えば昨日だったら、梱包シールの検査があるから行ってって言われたから梱包シールを」

N「そうではなくて、加工の方から用事があったらその時に要請するから、
シール検査が他にもあるんであればそのまま引き続きシール部門でやってて欲しいの。

それだけやるんじゃなくて、シールが応援を要請してるんだから、シールの指示に従って。
都度都度聞かれてもあたしはシールの状況が分からないから。

ランボーさんがシールに行ってるのはあたし達は分かってる訳だから、もしランボーさんの手が必要になったらこっちから声かけるから、
シールにいるんであれば、そのままシールにいて欲しい」



 朝の打ち合わせで、ランボーは1日のスケジュールを聞かされるのだが、
確かNは「午前中はプレス、午後はシールね。梱包シールが残ってるらしいので」と伝えていた。
「午前中はプレス部門の仕事で、午後はシール部門の仕事。まず片付けるべきは梱包シールってやつ」そう聞こえた。

それが、「梱包シールが〜」と付け加えたことにより、ランボーは「午後は梱包シールだけやって」と受け取ったよう。





ランボー「はい。……じゃあ梱包シールって言われちゃうとそれだけって思っちゃうから」

N「いや、そうではなくて、こっちだってシールに何の検査があるか分からないじゃん?
シールは他にもやって貰いたいことあるかもしれないし。
だからその都度連絡くれてもこっちは分からないから、臨機応変に対応して欲しいってことよ」

ランボー「……はい」

N「……分かる?言ってること」

ランボー「そしたら、梱包シールとか何とかって限定しないで欲しいです」

N「なんで?」

ランボー「それだけかと思っちゃうから。それは言われてないのになんで戻れないの?ってなっちゃうから」

N「戻れないのじゃなくて、もうシールで仕事して欲しいってことで、シールから来て欲しいって言われてるんだから、ね?
梱包シール以外のこともあるかもしれないじゃん?」

ランボー「はい。それならそうと朝礼の時に言って貰えればいいです」


申し訳なさでも混じっていればマシだが、配慮されて当たり前という感覚が周りを疲弊させる。
ギバー(与える)とテイカー(取る)とマッチャー(公平)でいうとテイカー。

突然暴れた自分じゃなくて、暴れた所に物を置いといた人が悪いんじゃないんですか?整理整頓しといてください。
そう言ってしまう人。



 隣で聞いていたOが呆れた声を出す。NとOの風船が破裂しそう。


N「……え?そうじゃないと(ランボーはただウロウロするだけで)動けないじゃん」

わたし「終わりでいいよ」


空気を抜くつもりで茶々を入れてみた。

ランボー「それだけ!だと思っちゃうから」

N「それだけだと思わないで!じゃあ!思わないで!」


はい、キレた。
ランボーの方がNより先輩なんだけど、まぁこういう人なので、新人のパートより手がかかる。
でも手をかけるのは業務の内。そのストレスを表に出したらパワハラ。

パワハラしてるー。


N「だからこっちからお願いすることがあれば要請するし、シールの方もやることがないなら、言ってくると思うから」

持ち直した。

ランボー「………………」

しかしまた暗雲。

N「……え、な、なにが分からない?」

不貞腐れているランボーにわなわなしている。半ギレで耐えている。

ランボー「…………」

何も言わない。
これは危険な状況だ。風船が破裂する。
パートがいない時間ならまだ放っておくかもしれないが、爆発したらダサいぞ。


わたし「呼ぶまで下にいて、で良いんじゃないですか?」

馬鹿にしてるつもりはないが、馬鹿にしか言わないセリフ。

ランボー「あ、はい!だからそれならそうと朝礼の時に、じゃあ午後は引っくるめてシールね!とか言って貰った方が、分かりやすいですねっ!」

わたし「喧嘩売っとる 笑」

ランボー「限定されると、それだけ終わればって」

N「じゃ、じゃあ今後そうする。今後そうする。じゃあそうしてください。じゃあお願いします」

ランボー「はい」


Nの生気がすっかり無くなった。
まだ朝だぞ。




 この後管理職のボスにも伝えて、明日改めてルールをボスから話してくれるそう。

ボス「もうNにも見放されて、やらせることがないってなったらお休みして貰うしかなくなるよ。
午後は下(プレスや印刷の現場)で仕事して!って言うか」




 ランボーは入社後、加工部門に配属されたが、向いてなくてすぐにシール部門に異動。
その間に宗教の勧誘もすごくて一度辞めさせようとしたが、宗教が後ろ盾して逆に脅され、殿(社長)は辞めされることを諦めた。

そしてシール部門で何年も大問題を起こしながら続けて来たが、三代目(殿の息子)が入社してシールに関わるようになり、ランボーは解雇の流れに。

しかし、その直前にボスが加工部門で簡単なことをやらせるよ、と回収して来た。

加工で簡単なことをやらせるも、やはり向いていなくて加工の仕事はやらせられず、
結局、猫の手も借りたいプレス部門とシール部門で1日中仕事をしている。
ランボーのスケジュールを立てる管理だけ加工部門がやっている。

それも、ランボーには言葉尻を捕らえられるわ、
「プレスばかりランボーを借りてて、プレスは俺達より早く帰る」などの苦情も来たりして、管理しているだけで損しかないように見える。






15時

 ランボーが戻ってきた。

何かを捜している様子。Nかな?

加工室を覗いていなかったのか、諦めて廊下に出て行った。

「Nさん見てないですか?」という具合に、他の人に聞かないので、ひたすら捜し続ける。





 数分後、Nが業務室に現れた。誰かと打ち合わせしているよう。

そこへランボーがスッと現れ、後ろに立ち、待てども打ち合わせは終わらず、Nの手元を覗き込み、手元を見つめながら体は移動し、
そのまま何も言わずにまた廊下に消えた。


打ち合わせが終わったNに、
「人慣れした野生の鹿みたいだった」と告げると、
「人慣れはしてないしてない」と突っ込まれた。






16時

 事務所に入ろうとすると、殿(社長)の怒ったような声が聞こえてきた。
取締に対してだ。取締の部下のO部さんはいないみたい。

16時で帰るパートさんと同時に事務所に入ると、急に殿の声は抑えられ、
「だから調べてってこと!」と、お開きに。

内容は知らないけど、よく我慢してるなと思う。
取締は殿の妹なので、昔からこれが普通なんだろう。
いざと慣れば会社に来なくても給料振り込んでくれるみたいだし、我慢しなくても。
マジでマジで。(来なくていい)






17時

N「も〜ランボーさん今日は屁理屈こきこきです」

臭そう。

ランボーに材料の断裁の作業を頼んでいるみたいだが、Nが「この材料は断裁機じゃ切れないのでカッターを使って」と言うと、

ランボー「これはカッターではありません。私はこれはナイフだと教わりました。10年も前ですが」

だからそれでは私には伝わりません。みたいに屁理屈こかれたらしい。


ボス「10年前はそうだったかもだけど今はカッターです!って言えば?カッターナイフなら分かるの? 笑」

カッターナイフだとどう反応するんだろうな。

というか、10年前からカッターであってるでしょ?
ナイフは刃で削るやつでしょ?




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?