連載小説 トビの舞う空(76)
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舜太と渡辺は同じ美術大学に進学した。大学進学と同時に舜太とカレンちゃんは、海岸近くに小さいアパートを借りて一緒に住み始めた。
高校では舜太より成績の良かったカレンちゃんだが、大学には興味が無いと言い、周囲の勿体ないと言う声を他所に、大学に進学しなかった。
作品制作に没頭していた舜太はバイトは出来なかった。カレンちゃんはサーフィンの傍らモデルの仕事を始めた。
美少女サーファーとして既に名の知れていたカレンちゃんは、瞬く間に人気モデルとなり、CMやテレビのバラエティー番組にも出る様になった。
舜太の学費こそトビの舞う空のレンタル料で何とか賄う事が出来たが、家賃や食費など、生活に掛かるお金は全てカレンちゃんにおんぶに抱っこだった。
まるで居候の様な舜太は、申し訳紛れに家事を全てやる様にしてはいたが、絵の具代もキャンバスも、イーゼルも、絵に掛かるお金まで全てカレンちゃんに出して貰っていた。
舜太の絵の為にならカレンちゃんは嫌な顔ひとつせず、一切出し惜しみする事は無かった。
つづく
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