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PCをタイピングするのは誰だ?

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

先日、品川から静岡へ向かう際、もうどうにも眠くて仕方なかったぼくは微妙な距離と時間だと思いつつ、寝過ごさない自信があったので新幹線で仮眠をとることにした。
起きているのか眠っているのかわからない、ちょうどいい気持ちになったタイミングで横からカチャカチャカチャ・・・と音が耳に入ってきた。

それがPCのキーを打つ音だとすぐにわかったけれど、その驚きの速さに ”あぁ、きっとファルコンこと高木藤丸くんだ。THIRD-iからの要請を受け日本の危機を救おうとしているに違いない。では、ぼくは仮眠をするので藤丸くん、がんばってくれたまへ” と思いながら見かけていた夢のつづきをと体勢を深くしたものの、どうにも眠れない。

あの・・・静かにしてもらえますか、ということでなく、その形容しがたいほどのタイピングの速さが気になって仕方がない。
それにしても速い上に一瞬止まることはあってもほぼ打ちっ放し。
迷惑どころか好奇心に変わったぼくは音のする方を目で追うと、窓側のぼくがいる席から隣を一つ空け通路側の席に藤丸くん(仮名)はいた。
もちろんPCの画面を覗き込むようなことはしないけれど、とにかくものすごい速さですべての指が動いている。
ぼくの眠気は完全に消え去り、薄目のまま視線は手元に釘付けになった。

”同じ人間とは思えないよ。スゲーよ、藤丸くん” とさりげなく一瞥すると、まったく藤丸くんじゃなかった。

年のころは60歳前後と思しき年配の男性。
ぼくより上の世代の方でこれほどまでタイピングが速いのは、それが仕事だと思って間違いないだろうし、それも「会社でPC使ってます」なんてレベルでなく、きっとライターさんのように文章を書くことを仕事にされているに違いない。

ぼくなんて未だに文字を打つときには左右それぞれ2本の指しか使えず、それも「えっーと・・・」なんてキーを見ながらでないと打つことができない。
昔、PCを使いはじめたころは、コナンくんのタイピング練習用ソフトを買ってやろうとしたこともあったけれど早々に挫折した。仕事柄必要なスキルでもないし、今更またコナンくんを引っ張り出して練習しようとも思わない。

レフェクトワールは渋谷という場所柄、クリエイターの方やご近所の会社の方が打ち合わせなどに使われることが多い。
時間帯によっては前後左右と、どのテーブルもノートPC(ほぼ全員がMac)を開き仕事をされている光景をよく目にするけれど、これまでに藤丸くんほど速いタイピングをされている人を見たことがない。
ぼくの知人の中にはタッチタイピングのできる人もおられるけれど、やはり藤丸くんまでは速くないと思う。
それにしても速い。話し言葉と同等か、それ以上の速さではないかと思うその技術を羨望の眼差しで見ながら、以前知り合いのライターさんがこんな話をされていたことを思い出した。

「最近、PCを買い換えたけれどメーカーが違うとキーの位置が若干違うの。ほんの数ミリの違いだと思うけれど、それだけでしっくりこないし打つスピードが変わる」

まるでスケートの選手が「ブレードが1mm変われば」とか、野球選手が「バットの重さが数グラム変われば」といった一流アスリートの話を聞いているようだった。
何であってもやはり一流の方はすごい。
ぼくなんか、まったくというほど道具にもこだわりがないからこれが二流、三流たる所以なんだろうと思えてくる。

それにしても新幹線で一緒になった藤丸くん、あれだけスキルが高ければそりゃ新幹線の、それも通路側の席であってもPC開いてカチャカチャやるよな。
もしぼくに同様のスキルがあれば、さも「仕事をしてますが何か?」といった涼しい顔で、きっとこんなどうでもいいようなブログを書いているに違いない。

そして藤丸くんの何がかっこいいって、その使われているPCがMacでなく、前時代的な印象を受ける厚みのあるノートPCだったとことが、これまた却ってぼくにはかっこよく映った。


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