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ぼくは、グルメじゃない

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

食べもの屋さんをやっていて、以前から訊かれて困ることがある。
知人、または直接知らない方々からも結構な頻度で訊かれる質問 「おすすめのお店は?」というのがそれ。

それが「今度、京都へ行くけれど」なら、まだジャンルによってはお答えすることもできるけれど、それにしても期待されるほどぼくはお店を知らない。
これが「東京で・・・」となると、もう完全にお手上げになる。
だからこの質問をされるといつもジャンルや予算の目安を確認し「うちの子(スタッフ)か友達に訊いて折り返し連絡します」ということになる。
スタッフと食事に行く際も、いつも東京、京都ともお店選びはスタッフにお任せするくらいだから。

恐らく、食べもの屋さんをやっているから美味しいお店を知っているに違いないと思われていると想像するけれど、残念ながらぼくは期待に応えれるほどお店を知らない。
「ぼくは、グルメじゃない」ということを早く認識してもらおうと思い書きかけていながら “料理下手なおばあちゃんの話” になってしまい、すっかり書くのを忘れていた。
このおばあちゃんの話を読んでもらえればわかるけれど、そもそもぼくはグルメじゃないどころか、かなり残念な食生活を送ってきた。
いまの仕事を選んでからは、収入が低いにもかかわらず無理をしてでも美味しいお店へ食べに行っていた時期もあるけれど、それは勉強のためだった。

最近でもいわゆる話題のお店や評判の良いお店へ行くこともあるけれど、その場合は「誘われたから」「スタッフと会食するから」といった理由しかない。
基本的には家で食べるし、京都で1人のときは近所の小料理屋さんで定食か、近所の焼肉屋さん。2人のときによく行くのは、サイゼリヤさん(ぼくが正垣さんの大ファンだから。そういえば、今年のぼくの誕生日もサイゼリヤさんだった)。
新宿で1人のときも似たようなもので、これらのお店に行く理由は近所だから、遅くまで開いているから、気軽だからくらいしかない。

いまでも誘われると行くことのある高級な料理屋さんや評判のお店へ行っても、やはり「美味しい、美味しい」と食べるけれど、どうも最近は昔のように感動するまでのことがあまりない。これが年齢を重ねたことによる経験値のせいなのか、味覚音痴になっちゃったのかはわからないけれど。そういえば、この夏に伺った京都のcenci(チェンチ)さんは驚くほど美味しかったな。

高級なレストランなどはどこも美味しいし、サービスなども含めこういったお店は 時間を買うといった意味もあるので、チェーン店や定食屋さんとの在り方と違い比較できないけれど、それでもトータルでの驚きという意味では安価なお店やチェーン店の方が個人的には大きかったりする。これもきっと仕事柄目線だと思うけれど、やはりぼくがグルメでないことは間違いない。

先日、そんなぼくにマガジンハウスさんからアンケート依頼が送られてきた。
いわゆる「おすすめのお店はどこですか?」系のアンケート。
それも東京のお店を中心にお答えするもので、ほら来ちゃったよ。訊く相手を間違っているよ・・・こんなことならもっと早くぼくはグルメじゃないと書いておけばよかった、という思いで一杯だった。

締め切りまでの時間もあまりないということで、ぼくは担当の方に電話をかけ「いつもマガジンハウスさんには大変お世話になっているので可能な限りのご協力はしたいのですが、これは完全にぼくの守備範囲外なんです」と、いかにぼくがグルメでないかを説明させていただき丁重にお断りをしたけれど、「2番の質問だけでも」とまで仰っていただいたので少しだけ書かせていただいた。

「何てダメなんだ、自分」って思えてきた・・・美味しいものを食べるのも勉強だから行こうかな。
うちのスタッフ、仕事早く終わらせていろんなお店に食べに行こう。


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