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『小さくて強い店』について考えてみた 3.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

「いつかお店をしたい」「もうすぐお店をする予定」といった方と話をしていると結構な確率で「1人で気楽にやろうと思っています」「夫婦だけで気楽に」「2人だけで気楽に」といったことを耳にする。

本気でそう思われているのだろうか。

実際にお店を1人だけでされている方もご夫婦だけでされている方も身近におられるけれど、彼らはそれが気楽なものなのかちゃんと理解されている。
ぼくは1人、2人でやることと「気楽に」は別の話なんじゃないの?と思っているけれど、これからはじめようとされる方がもし本気でそう思われているのなら「気楽かどうか、やればすぐにわかる」としか言いようがない。

気楽に、と考えられるのは、恐らく他人を雇用する煩わしさを必要としないことを指してのことだと思う。確かに人の問題が一番煩わしいのはどこのお店も同じだと思うけれど、他人を雇用しない気楽さと引き換えにそれ以上のリスクを負うことになるんじゃない?というのがいまのぼくの考えで、今回のお話。

広義として小さな店と書いているけれど、実際には同じ小さな店であってもその中身はお店によって雲泥の差がある。
ここではパン屋さんに限定した話だけれど、売り場面積自体はとても小さいのにそれよりも大きなパン屋さんたち(うちの店も含め)を遥かに凌駕する売上を出されているお店がある。
ぼくの知る限りで書けばツオップの伊原さん、365日の杉窪さん、カタネベーカリーの片根さんたちのお店がそれにあたる。そして彼らの小さなお店では、当然多くのスタッフさんを雇用されている。

ぼくが漠然と小さな店 = 強い店とは決して思っていないと書くのは、小さくて、小さなという言葉の印象から規模(面積)や設備、スタッフ数などすべての面でミニマムなものを想像しがちだけれど、本当に強いお店はお客さんの目に触れる売り場面積が小さいだけで厨房もそれなりに広ければ、スタッフさんの数も多いことがほとんどだと思っている。

一方で同じように売り場面積のとても小さなお店をされていて、頻繁に「本日は完売致しました」と貼り紙や告知をされるお店がある。中にはパン屋さんでありながら午後の早々にはこういった告知の出るお店もあって、一見超流行っているお店だと錯覚しそうになるけれど、大行列でもできるようなお店でない限り大抵そういったお店は「単に製造量が少ないだけ」ということも同業の方々なら容易に想像がつく。
そしてこういったお店は往々にして1人あるいは2人だけでされている場合が多い(もちろんそれが悪いといった話ではない)。
ぼくが小さな店 = 強い店とは決して思っていないのは後者のことであり、こういったお店はリスクも高く、事業所という側面から見ても脆弱だと思っている。

つづく


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