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『小さくて強い店』について考えてみた 1. 

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

専門誌でほぼ定期的に目にするこの手のタイトル 『小さくて強い店』。
頻繁に目にするということは、京都特集やパン特集などと同様、刊行した際にある程度の部数が見込める(売れる)人気の特集だと推測できる。
作ったものが売れないことには維持継続が不可能なのは何屋さんであっても同じなのだから、出版社さんや編集部さんが売れるものをと考えられるのも至極当然のこと。

一方それだけ人気企画ということは、その向こう側には相応の読者がいるということだし、その内容を知りたいといった需要がそれだけ多いということでもある。
そして読者の多くがお店をされている方、これからお店を始める方、いつかお店を持ちたいと思われている方であることも想像に容易い。
またお店を始めるとなると、よほど特殊な環境の方でもない限り小さなお店から始める方が大半なのも恐らく間違いない。

そういった方々にとっては、この「小さい(小さく)」という形容詞が付くだけで一気に身近なこととして感じるだろうしリアリティも増すと思われる。
もし特集タイトルが「小さくて強い店」でなく「大きくて強い店」だったらほとんどの読者は手に取らないだろうし、それ以前に企画段階できっとボツになる。
たった2文字しか変わらないのに。
個人的には「小さい(小さく)」と付けるこういったギミックに言葉を扱うプロ、編集部の巧さを感じずにはいられない。

ぼく自身は以前からこの小さくて強い店という抽象的でザックリとした括りに多少なりとも違和感を覚えていて、率直に書けば懐疑的な見方さえしている。
だから「小さくて強い店」について自分なりの考察をいずれ書いてみようと思っていたところ、昨年からお会いする機会のある方々が小さなお店をされている方やこれから小さなお店を始めようとされている方で、そんな彼らと話をしていて思うことがあったので書いてみることにした。

誤解ないよう先に書いておくけれど、だからと言って一概に大きな店が強いと思っているわけでもなければ、小さなお店であっても「確かにそれなら強いだろうな」と思うお店もたくさんある。
それからぼくがこの話の中で書こうとしている「小さなお店」というのは、以下の場合を基本的には含まない。

・借入なし(無借金)で始められたお店
・規模や資本力の大きな会社が経営されている小さなお店
・売れても売れなくても維持継続が可能な道楽や趣味でされているようなお店

こういった環境でお店をできる方というのはかなりの少数派で、実際に個人がお店を始められるときは、規模も大きくなければ決して少額でもない借入をされている方々が大半だと思うので、そういった個人店が話の対象になる。
また、書くまでもないけれど納税をきちんとされていることも大前提。
いまの時代に脱税をすることで維持継続しているようなお店は、そもそもそれを「経営している」「それで成り立っている」とはぼくは思わないし、決して強い店だとも思っていないので当然含まないことになる。

つづく


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