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映画 シェフ 三ツ星フードトラック始めました

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

先日、中原さんと食事をした際に「めちゃくちゃおもしろいですよ」と教えていただいた映画 「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」を観た。

最高におもしろかった。
とてもテンポが良くて2時間ほどがあっという間の隙のない映画。
料理評論家、ブロガーとシェフとの対立、保守的なオーナーとクリエイティブなシェフとの対立、親子の絆、SNSの功罪・・・挙げるとキリがないほどテーマが盛りだくさん。
評論家、ブロガーとシェフの対立は、お店をしている人なら一度はみんな似たような経験をされていて共感できると思うし、オーナーとシェフの対立にしても頷かずにはいられない。

物語の中では、オーナーと雇われシェフという立場の違う2人の関係として描かれているけれど、それがオーナーシェフという1人の人間であったとしても、オーナーとしての自分とシェフとしての自分という2つの人格があり、それは必ずというほど創作とビジネスという葛藤を生み出す。
この葛藤は、ものづくり(創作)を生業とされている方ならほとんどの人が経験されることだと思うので、料理人に限らず多くの人が共感できると思う。

全編に渡り演出上twitterがとても効果的に使われていて、ネットリテラシーが皆無なために炎上までさせてしまう父親のカール(主人公)とデジタルネイティブ世代である10歳の息子 パーシーとのやり取りは本当に笑えるし、演出がとてもいまっぽくておもしろい。

共感、感情移入できる場面はたくさんあるけれど、その中でも個人的にとても印象的だったのが、厨房機材の大型店舗で機材を購入しトラックへ積み込む際に手伝ってくれた男たちにキューバサンドを振る舞うシーン。
焼きすぎたサンドイッチを出そうとする息子 パーシーに父親であるカールが注意をすると、パーシーはカールにこう言う。

「どうせタダだよ」

カールは手を止め、パーシーを諭す。

「よく考えろ 料理は退屈か?」

「楽しい」

「パパにとっちゃ人生最高の喜びだ パパは立派な人間じゃない いい夫でもいい父親でもない だが料理は上手い お前にそれを伝えたいんだ お客さんが笑顔になるとパパも元気になる お前もきっとそうだ」

「はい シェフ」

「あのサンド 出すか?」

「出しません」

「さすが俺の息子だ」

このシーン、頷いた料理人、お菓子職人、パン職人も多いのでは、と思う。
10歳の子供でなく大人であっても、それがタダでないものでさえ、こういったことが気にならない人が残念ながら作り手側の中にも一定数いる。
映画や本は、いろんなことを教えてくれる。ぜひ、うちのスタッフにもこの映画は観て欲しいと思う。

登場する料理やサンドイッチも本当に美味しそうで、料理の映像としての演出も素晴らしい。
たった2時間弱の中にこれだけたくさんのテーマが盛り込まれていながら不要な要素が一切なく、すべてがリンクして効果を生み出しているジョン・ファヴローさんの監督としての手腕がすごい。

このジョン・ファヴロー監督は、あのアイアンマン シリーズの監督で「アイアンマン3」の監督を降板してまで「本当に自分がつくりたい映画をつくる」と言って製作されたのが、この「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」だったらしい。
この作品の製作、監督、脚本、主演の4役をご自身が務められていることからも作品への思い入れや本気さが伝わってくるけれど、この作品の10数倍という莫大な制作費(きっとギャラも同様でしょう)を蹴ってでも本当に自分のつくりたい映画をつくるというジョン・ファヴローさんにシビれるし、そういった方が製作された映画というのも伝わってくる。

とにかくおもしろい映画です。


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