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国の損益計算書

かつて「技術の日本」と世界から尊敬されていた時代、自動車を筆頭に家電製品など、日本は工業製品を輸出することで巨額の貿易黒字を生み出す経済に強い国だった。ところがバブル崩壊をきっかけにデフレが進み、これが30年間も続く。

30年って、やっぱり長いなぁ。

デフレが進行すると円高になる傾向があるので(現在の逆だと考えればわかりやすい)、当然それを忌避する輸出業の多くは、生産拠点を海外へと移転した。
リーマン・ショック以降さらに進んだ円高に加え、その後の東日本大震災による6重苦までがそれを助長した。
円安へと転換し始めたアベノミクス時代も企業の海外移転は続き、そのピークは2017年だったらしい。

この時期、どれくらい生産量が海外移転したのかを知る目安となるものがある。
輸出業の代表、自動車に限ったものになるけれど、JAMA(日本自動車工業会)という一般社団法人が海外生産台数の推移を掲載されている。
ご興味のある方は、こちらをどうぞ。

これによるとバブル崩壊の1991年に348万台だったものが、2022年には1696万台の約5倍にもなっていることがわかる。
また、海外移転した企業は他にもアパレルや家電、ゲーム機器などたくさんあるわけで、当然輸出量が減少すると貿易収支は悪化することになる。
もちろん、これも大問題だけれどそれに伴う弊害は他にもあった。

海外移転したことで国内の製造業が衰退した結果、失業者の増加という、いわゆる「雇用の空洞化」が起きた。これによって、バブル崩壊後のロスジェネ世代ほどでなかったにしても再び就職氷河期を迎え、それに苦しめられたのが現在30代前半の人たちになる。
バブル崩壊、リーマン・ショックを発端としたデフレ、円高はこれほど甚大な影響を及ぼした。

貿易収支の話に戻ろう。

会社経営やお店を法人化されている方、投資をされている方ならご存知だと思うけれど、損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)というものがある。
何それ、美味しいの?と思う人もおられるかも知れないので超ざっくり書くと、損益計算書は会社の収益、費用、利益が記載され、その会社の1年間の業績がわかる通知表のようなもの。一方、貸借対照表は会社が持つ財産(資産)と借金(負債)の状況を表し、現時点での会社の状態(財務状況)がわかるものになる。
いわゆる決算書の重要な書類で、財務三表は他にもキャッシュ・フロー計算書(CF)もあるけれど、こちらは提出義務が上場企業のみなのと、この話の本題でもないので説明は割愛する。

この損益計算書のようなものが国にもある。
ニュースや新聞の見出しで見かけたこともあると思う「国際収支」や「経常収支 」と呼ばれるものがそれで、海外との貿易や投資などによる収支を表したもの。
これは財務省が公開しているので、誰でも見ることができる。

余談になるけれど、こうしてデータへ容易にアクセスできるのは本当にすごい時代だなぁと思うし、「インターネットは情報の民主化」というのは、こういうことなんだろうね。

この経常収支は「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」の3つで構成され、その合計を指す。それぞれの詳細まで書いていると文字数が多くなりすぎるので、こちらもご興味のある方は財務省のウェブサイトにある「用語の解説」をご覧ください。

そして、ここで述べようとしている要諦は、経常収支の「貿易・サービス収支」と「第一次所得収支」の2つになる。

つづく


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