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万城目学さん 1.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

昨夜、久しぶりに万城目さんと会食をした。
1年間という約束で連載をしていただいたエッセイが無事に終了し、「打ち上げをしましょう」ということで前回と同じ美味しいお鮨屋さんにて、おじさん2人だけの打ち上げ。
これがとにかく楽しくて、毎回時間が過ぎるのを忘れいろんな話をする。

前回ご一緒した際、ぼくらが小学生のころに読んでいた江戸川乱歩さんの「少年探偵団シリーズ」の話題になり、「西山さん、『透明人間』の話は憶えていますか?ぼくは仕事で読み返す機会があって読んだんですが、もう本当にオチが酷い。乱歩さん、それはあかんでっていうくらいで、いま読むとびっくりしますよ(笑)」と話が盛り上がった。

万城目さんや湊かなえさんといった超売れっ子作家さんたちによる江戸川乱歩さんへのオマージュ、「みんなの少年探偵団」という短編集があることを教えてもらい、ぼくも早速読んでみることに。

5人の作家さんによるスピンオフ作品なのでそれぞれの色や良さがあるけれど、最初に収録された万城目さんの作品が、個人的には一番小学生のころに読んでいた江戸川乱歩作品の雰囲気を醸し出していたように感じた。
活字ではあるけれど、あの独特なフィルムのような何とも薄暗くおどろおどろしい感じのする乱歩作品の世界観、らしさを忠実に再現されていたのが万城目さんの作品だと思っていたところ、「あれ、時代背景などまで再現しようとしていたのは、ぼくだけだったんですよ。みんな自由に書かれてた(笑)」というご本人の解説で納得。
なんだか万城目さんらしいなと思った。

ぼくの知る限り、万城目さんは恐らく性格的にも完璧主義者なのだと思う(他の方がそうでないということではない)。
作品のための取材はもちろんのこと、「ぼくは他の作家さんに比べ、本当に原稿を書くペースが遅いんです。だから出せて年に1冊」と、いつもご本人が仰るのもそういうことだと思うし、読書をされていても気になったり引っかかった箇所はページを戻る、都度調べるというタイプの方らしい。

万城目さんにお会いしたら、ぼくはこの作品のことで訊きたいと思っていたことがあった。

「あの男がピストルを出すシーンがありますよね。あの場合、”ピストル” でなく “拳銃” という表現もあり得たと思うのですがピストルにされたのは、もしかして読み返された江戸川乱歩さんの『少年探偵団』に出てくる表現が拳銃でなく、ピストルだったんでしょうか?」

万城目さんの答えは「あぁ、それは無意識でした」とのこと。
そんな訳で、元ネタである乱歩作品の「少年探偵団シリーズ」に登場するものが “ピストル” なのか “拳銃” なのか、気になって仕方がない。


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