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乱読のススメ、15年ぶりの原稿用紙、瓶の中のメッセージ | 日日雑記 / Aug.19

相変わらずひどい暑さの日は続き、昼夜逆転した生活の方がいくらかマシなのではないかと思うほど。
地球はどこかおかしくなっているとは思うけれど、太陽に飲み込まれるまでにはまだ100億年ほどかかるとか。
人類が滅ぶのはもっと早いと思うけれど、それでも億年単位の時間がかかるはず。しばらくはこの暑さに付き合うほかなさそうだ。
どこかの星に移住することになっても、条件次第では昼夜逆転した生活を送る羽目になるのかもしれない。アーノルド・シュワルツネッガーの「トータル・リコール」で描かれたのは、火星のそんな様子だった気がするが、記憶にまったく自信がない。

借りていた本をまとめて返すついでに図書館で乱読。
図書館のいちばん良いところは、歩いて10歩のところにまったく興味のない知が整然と並んでいることだ。

閃きと呼んで良いのかどうかはわからないが、何かを作るときにはいちばん関係のなさそうなもの同士を合わせてみると良い、としばしば言われる。
自分が興味のかけらもないものが黙ってそこにあるのだから、細かく選んだりせず、ただ適当に引っこ抜いては、飛ばし読みをすることを繰り返す。

2時間もそうしていると、今まで収めるものもなく空いていた頭の中のスペースがいくらか埋まり、汚れたフライパンに水を張った時のように、珍妙なアイデアがポツポツと浮かんでくる。

横書きに慣れない感覚は相変わらずで、とうとう100均で原稿用紙を買ってきた。
原稿用紙を最後に買ったのは、多分15年くらい前のことではないかと思う。
かつてはわざわざ文具店で買った原稿用紙が、今や100均で買えるのだから、気づかないうちに世の中はダイナミックに変化している。

これまでは無地のクロッキーノートを使っていたけれど、罫線のなさが役に立つのは頭の中の在庫整理の時だけで、文章を書こうとするとうまくいかない。ネット以前とネット後の両方を跨いだ世代の特性なのか、やはり20字20行のマス目がきっちり取られた原稿用紙の方が書きやすい。
インクを垂れ流すようなボールペンで、浮かんだ文章を止まることなく書いていたら、ものの30分で35枚入った原稿用紙の3分の1がなくなった。
僕にしては早いペースだった。

それにしても小説というのはなんとも原価が安い。
35枚の原稿用紙といえば長めの掌編小説か、短めの短編ほどの分量だ。
それだけのコストで1000年先の未来であれ、500年遡った過去であれ、計り知れない人間の心の闇であれ、光の早さで20万年かかる遠い宇宙まで書くことができる。
すごいのはコストの安さでも、小説の機能でもなく、人間の想像力なのだけれど。

こうしてさしたる意味もなく文章を書き散らかしていると、誰かに宛てた手紙をワインボトルに詰めて、海に流すのに似ているなと思った。
どこをどう漂うのか、誰に届くのかもわからないまま、ただ流れていくだけの文章。それで良いのだろう。
それでも不思議といつか誰かには届くものなのだ。

10代の頃、落書きするのに使っていたノートの表紙には「ワインボトルの放浪」というタイトルがついていた。
小説家の山川健一氏が創作ノートに「牛乳瓶の底の夢」と名付けていたと知って、真似をしたのだ。
僕の場合、ポリスの「Message in a bottle」が頭にあったのは間違いない。
あのノートをめぐる小さなエピソードがいくつかある。
エピソードをベースにした短いストーリーでも、そのうち書いてみようかと思った。

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