見出し画像

体内時計

小咄的な短いシークエンスをふと閃いて、しばらくぼんやりと考えていたら、気づかないうちに10分ほど眠ってしまった。
例によって良いアイデアが浮かんだときには眠気に負け始めている頃合いで、今夜もノートに乱雑にメモするのが精一杯という有様だ。

どうも僕の体内時計は25時間と少しで1周するようで、毎日、眠気に襲われる時間がずれる。
しかもずれ方が割と一定で、毎日几帳面に1時間ほど後にずれていく。
この法則でずれていくとしたら、1週間後には朝の7時に、10日後には10時に眠気が最大化するはずなのだが、そうはならない。日が昇るとともに体内時計は補正されて、強制的に日々の活動に向かわせる。
正しいずれ方を妨げられるのだから、その日の調子が上がるはずもない。結果、頭の中にもやがかかったまま1日が終わる。

朝、陽の光を浴びるとどうとか、セロトニンがどうとか、体内時計の狂いを治す方法はテレビの健康番組でも何度となくやっているけれど、そもそも正確にずれる時計というのは不正確なのか、正確なのか、一体どっちなんだろう。

昔、友人の持っていた腕時計は、毎日正確に3分半ずれる代物だった。
やや偏執気質なところがある彼は、自分の時計がずれることに気づいて、1日でどれだけずれるのか、毎夜0時を基準に1ヶ月ほど測定した。
その結果、まったく狂いなく、毎日きっちり3分半ずれることが判明したというわけだ。
彼は「修理したら誤差が起きる程度になるとは思うけれど、俺はきっちり3分半ずれる正確さの方が精緻だと思う」と、時計を修理することはなかった。
今日は5分、明日は2時間、明後日は2分と、その日の気分でずれるような時計と比べたら、毎日寸分の狂いもなく1時間ずれる時計は、奇跡のように正確な時計だと思うのだけれど。

ともかく今夜も規則正しく眠い。
乱雑に書き殴ったメモが、自分にはどうにか判読できるものになっているのはせめてもの救いだ。

ぜひサポートにご協力ください。 サポートは評価の一つですので多寡に関わらず本当に嬉しいです。サポートは創作のアイデア探しの際の交通費に充てさせていただきます。