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記憶に刻まれた日

40年前の12月8日、日本時間の9日、元ビートルズのジョン・レノンがファンに射殺されたというニュースが飛び込んで来た。
あの日、自分がどこで何をしていたか、今でもよく覚えている。
僕は16歳で、授業が終わったあと、池袋の楽器店にいた。
売り場の楽器の中央にスペースが作られ、リリースされたばかりの「ダブル・ファンタジー」と「イマジン」のLPレコードが飾られ、周りにはたくさんの花があった。
レコードジャケットの下には「追悼 ジョン・レノン」の文字があり、僕らは慌てて店員に何があったのかを尋ねたのだった。

まもなく発生から10年が経つ東日本大震災、7年前の父親が他界した日のこと、他にもいくつか、その日、自分がどこで何を見て、何をしていたのかを何年たっても記憶が刻まれたように薄れない出来事がある。
歳をとると記憶する力が落ちて、昔の出来事も忘れていってしまうんだろうと思っていた。
実際はすべての記憶が均等に薄れるのではなかった。自分にとって衝撃が大きかったことは忘れることはない。それがたとえ忘れたい出来事であっても。

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結局、ニューヨークに行く機会を得たのは、ジョンが亡くなってから20年以上経ってからのことだった。
セントラルパークからダコタハウスを目指して歩いて行くと、ダコタハウスに近い入り口近くに「ストロベリーフィールズ」と名付けられた小さな広場があった。
タイルで描かれた「IMAGINE」の文字の横には花束が置かれていた。
ダコタハウスの門の脇、ジョンが撃たれたところで手を合わせて冥福を祈った。
守衛の太った男が、手を合わせた僕を奇妙なものを見たような目で見ていたのを、今でも覚えている。

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