見出し画像

店主、旅に出る

ようやっと

半袖の上に羽織りもの

ぐらいの格好で

陽だまりを歩けるお天気になりました


とは言え

晴れた日の翌朝は

ぶるる、としっぽまでかじかんでしまうほど


岬の毛糸屋さんにも

こっくりとした色の毛糸玉たちが

行儀よく並んでいます


猫そっくりの毛糸屋の店主は

何色のベレーを編もうかと思案中


空のかけらの青を混ぜましょうか

漆黒の闇色を散らしてみましょうか

それとも

滴り落ちそうな夕焼けの朱にしましょうか


何しろ糸を染めるところから始めるので

それはそれは楽しく頭の中も大忙し

そうこう過ごしているうちに


“いつか”の街で

“はじめまして”の色を探すのも楽しそう


ふと

そんな思いがよぎったのでした


今日もトーザ・カロットの岬には

旅立つ人の背中をそっと勇気づける

不思議な風が吹いているのです