見出し画像

宇宙の理(ことわり)が消えても


帰る日の夕方になりました

猫そっくりの毛糸屋の店主は

夢で見た溺れるまあるいもののことが

気になり

もういちど「浮かぶ海」まで

きてみたのでした


今日の海はオレンジ色で

相変わらずゆったりゆったり

波が寄せたり返したりしています


背伸びをしても

ぴょんぴょんしても

海に何かが漂っている様子はなく

店主は少しほっとしました

そして

浮かぶ海に深く感謝をすると

フリュへと向かったのでした


約束より少し早い時間でしたが

「お待ちしておりました」

フリュの店長があたたかく迎えてくれました


風と花束を持ちやすいように

包んでもらいながら

毛糸屋の店主は

夢で見た

溺れるまあるいものの話をしました


フリュの店長は

他にお客さまがいないのを確かめると

溺れる青い星の噂は

宇宙猫から聞いたことがあると

顔を曇らせました


宇宙の理(ことわり)に

意味がなくなる日が

訪れるのかどうかはわからないが

この日

この時を

大事にしていきましょう


店長と店主は

そんな会話をしながら

瞳をまあるくしたのでした