マガジンのカバー画像

学生フォーミュラにおけるエンジン開発について

8
概要:  学生フォーミュラにおいて車両に用いるは、二輪車用エンジンを流用することがほとんどです。 しかし、吸気リストリクタや排気騒音規制などの学生Fのレギュレーションを満足するた… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

【学生Fエンジン開発】1Dシュミレーションの効率的な利用方法

給排気系などの諸元検討に、シミュレーションを用いるチームは多いかと思います。学生フォーミュラではGT-POWERが比較的メジャーに使われているという認識です。今回は、現在はシミュレーションをあまり活用できていないチーム向けに、オススメの検討と、実務的な要領をまとめます。

最近、生活習慣の変化から記事を書く時間がとりづらくなってきました。限られた時間で、出来るだけ有用な情報を提供したく、「GT-P

もっとみる

【学生Fエンジン開発】(閑話)エンジン開発の今後

今回は学生フォーミュラそのものとはあまり関係のない話です。
学生フォーミュラに参加している学生は車好きの人が多く、卒業後は自動車メーカーに就職したい人、自動車のエンジン開発に興味がある人も多いかと思います。一方で、昨今のカーボンニュートラルの要求が強いなか、エンジンに関する仕事がいつまで存続するのかを不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
今回は「エンジンとカーボンニュートラル」についてい

もっとみる

【学生Fエンジン開発】エンジンの適合

学生フォーミュラ車両はバイクの純正状態から給排気系を変更するため吸気特性が変化し、純正のECUでは燃料噴射量や点火時期にアンマッチングが起こります。そのためサブコンECUやフルコンECUを使って車両に合わせた適合値を設定してやる必要があります。
今回は初参戦のチームや、初めて適合をする人向けに、基礎的な内容を解説します。

●エンジン適合とは何をするのかエンジン適合とか、エンジンに付属するデバイス

もっとみる

【学生Fエンジン開発】アイドリング対策

先週の記事の続きです。

 バイク用エンジンを使って、学生フォーミュラのレギュレーションを遵守した給排気系を実現した時、アイドリング不安定に陥りやすい事をお話しました。
今週は、アイドリング改善のための対策案をいくつか述べたいと思います。
 なお、学生フォーミュラ車両で試した経験は無いため、あくまで技術的には効果があるという内容です、ご容赦ください。

・燃料を薄くする 市販車の場合は排ガス規制が

もっとみる

【学生Fエンジン開発】サージタンク容積について(スロットル下流容積の概念)

 学生フォーミュラのエンジン開発で、最初の関門は吸気系設計です。学生フォーミュラのレギュレーションにおいて、自然吸気の場合、リストリクタの取り付け位置はスロットルバルブ下流であることが定められています。各チームはスロットルバルブの下流に、リストリクタによる流量低下を最小に留めるための配管と、気筒間のばらつきを抑えるためのサージタンクを設けています。
 ここではサージタンク検討時に陥りがちな、サージ

もっとみる

【学Fエンジン開発】燃焼状態を計測する手法について

※初めての方はぜひ「はじめに」からご覧ください

前回の記事では、完走を経験していないチームに向けた最初のゴールとそこへの道程を提案しました。今回は上位チームに向けて、さらなるチャレンジングな取り組みを提案したいと思います。それは筒内圧解析と呼ばれるものです。

筒内圧解析とは?圧力センサによってエンジン燃焼室内の圧力を計測、演算する事で燃焼状態を定量的に知る手法です。燃焼解析や、指圧線解析と呼ば

もっとみる

【学生Fエンジン開発】最初のゴールは走る車両を作ること

※初めての方はぜひ「はじめに」からご覧ください

学生フォーミュラ歴が浅く、車検を通過した事がない、または完走経験が無いチームには、まずは走行できる車両を完成させるために注力する事をアドバイスしたいと思います。

エンジン改造と聞いて圧縮比の変更やハイリフトカムの導入、過給などいかにもモータースポーツな改造を想像する方も多いかと思います。学生フォーミュラにおいてはそれら改造の前段階として、レギュレ

もっとみる

【学Fエンジン開発】はじめに

記事の背景

日本の学生フォーミュラ大会において、ICEを搭載するほぼ全ての車両で、バイクのエンジンが使用されています。まずは純正エンジンを積んでとにかく走る状態に持っていき、より走行性能を高めるべく各校が創意工夫していく…というのがあるべき姿ですが、多くのチームがエンジンのポテンシャルを活かす以前に信頼性の問題によってエンデュランスを完走出来ないのが現実です。
また、エンジンの構造や設計方法に関

もっとみる