家庭用パスタの歴史から、食品メーカーの時短・簡便ニーズへの対応を語ろう
家庭用パスタ周りの歴史を振り返りながら、食品メーカーの時短・簡便ニーズへの対応について語ろう。
なお、ここでの「パスタ」はいわゆるスパゲッティの話に限定します。文字数の問題です。
さて、これを書くにあたって「好きな麺ランキング」でパッと検索してみたけど、パスタってかなり上位なのよね。 アンケートをとった媒体にもよるけど、大体1〜4位のどれか。特に女性だと1,2位争い。
そんな日本国民に愛されているパスタ、日本で家庭で食べられるようになったのは1950年代のこと。他の麺類と比べると、比較的最近の話になるね。 この年代で今の日清製粉ウェルナが「マ・マー」シリーズでパスタを発売して、キユーピーが日本初の缶詰ミートソースを発売している。このあたり、高度経済成長期における食の欧風化が感じられるよね。
ちなみに、キユーピーの「ユ」は大文字だぞ。
その後は時流にも乗ってパスタは一気に庶民が楽しめるものになった。
だがここで、ちょっと思い出して欲しい。 今の缶詰ってプルが付いているけど、昔の缶詰って開けるのに缶切が必要だったよね。 今缶切なんて輸入の缶詰くらいにしか使わないじゃん。10代の子とか存在すら知らないのでは?
何を言いたいかっていうと、缶詰を缶切で開けるのって死ぬほどダルいんだよね。4/5位開けないといけないし、なんか途中フタになった部分が沈むし。 そして頑張って開けても、今度は鍋で温めなきゃいけないから洗い物が出る。
まぁ昔の人はそれくらいは何も思わなかっただろうけど、今の視点から見るとなかなかだよね。
転機があったのは1971年、今のヤマモリがレトルトのミートソースを出したんだ。 レトルトはやっぱり缶より楽だよね。なにせ手で開けられる。あと、湯せんで温めるので温めた鍋はたいして汚れない。
いきなり便利になった。
ヤマモリの社史を見ると、当時レトルトパスタソース生産量日本一だったらしい。今アジアンフードメインだよなあそこ…グリーンカレーは結構ガチ感があって好き。
話を戻すと、レトルトにも当然弱点があった。
それは、温めなきゃいけなかったこと。 大体コンロの一つをパスタ茹でるのに使ってるわけでさ。そこにさらにもう一口湯せん用の鍋を用意するわけだ。 パスタ茹でてる鍋に袋を突っ込んでた猛者もXで話題になっていたけど見たことあるけど、少数派だと思う…思いたい。
これ、個人的にはムリなんよね……。
箱に入ってたやつならまだわかるけど、外袋むき出しになってるやつはちょっと生理的に僕はムリ。4000万imp超えてていいねが8,000も行ってないから、多分ムリな人が多いと思うんだけど。
ただそういう人も、もう1つコンロを使うのダルいよねぇ。
……さて、さっきからダルいダルいと怠惰の悪魔みたいな発言をしていて不快に思われた方もいるかもしれない。
でもこれって実は、メーカーの人間にとっては大事なことなんだ。
そういえばダルいな、と思いながらも何気なくやっちゃってることってたくさんある。そこを何かしらの技術や仕掛けのある商品で解決出来ると、それは「便利な商品」として価値を生むわけです。
なので、食品に限らずメーカーの企画・開発・研究の人は、ヒットを生むために常にダルいことを探しているのです。
話を戻そう。 レトルトはそういう意味で「温める」というダルさがあった。じゃあもちろんこう考えるよね。
「どうせパスタは温まってんだから、もうそこにソースぶち込んじゃえば良くない?」と。
そうして発売されたのがS&Bから出た「まぜるだけのパスタソース」だ。今は各社も追随して、ここがボリュームゾーンになってる。 もしかしたらブルドックソースの「まぜりゃんせ」が先かもしれないんだけど、これ調べきれなかったんだよな。こっち先だったら申し訳ないので両方書いとくわ。
ちなみに「ブルドックソース」の「ク」は濁らないぞ。
ポイントは味付けがペーストやシーズニングになり、ソースや具材自体の量が少ないこと。当たり前だけど、ソースが多いほど熱を奪われるからね。
パスタにかけるものの量を少なくすることで、温かくあえるだけで美味しいパスタが食べられるようになったのだ…最も、最近は軽くレトルトくらいの量があるタイプのあえるだけのソースも出てきてるけど。
また、パスタ周りの進化はソースだけではなかった。 一番の革命はレンジで茹でられるパスタ調理器だろうね。
一人暮らしの男の家には150%パスタ調理器がある。1回買って壊して2回目を買う確率が50%だ。
これによって、パスタはついにコンロから解放された。パスタはレンジで茹でてソースを混ぜる、これだけでお昼ご飯になる、カプメンレベルの手軽さの料理になった。
さらに、茹でるのがダルい(カプメン比)というパスタの弱点を補う商品なんかも現れた。 日清製粉ウェルナの早ゆで3分は、パスタ自体を風車のような特殊形状にして体積減&表面積増をはかり、茹で上がった時にはちゃんとパスタになっているという技術の結晶のような商品を実現している。
……食感はまだ改良が必要かもしれないが。
このようにパスタ周りもどんどん進化が進む中、2021年には旧味覇の製造メーカーである創味食品から「ハコネーゼ」が発売された。
実はこのちょっと前から、電子レンジ対応できるレトルトパウチっていうのがTOPPANとかDNPとかから出ていた。
レンジ対応レトルトパウチの先駆けは多分日本ハムの↑の商品だと思う。他にもレトルトカレーやスープなどで使われ始めていたんだけど、パスタソースはちょっと遅れて出てきたね。
これは結構売れて、S&B、キユーピー、日清製粉ウェルナ、ニップンで埋められてたパスタソースの棚に風穴を開けた。 こういうのを見ると、それまで棚を持っていない外様が棚を取るには、違う包材を使うのは有効だよなと思う。
そして最近、ついに「もうパスタもソースも一緒にあっためちゃえば良くね?」っていう商品が出てきました。
それが永谷園の「パキット」。
この商品、パスタを折って袋の中に入れて、水を入れてチンして完成。
……もうなんか、「ついにここまで来たか簡便調理よ」って感じだよね。
個人的には長いパスタ好きだから折るのに抵抗がちょっとあるけど、ハコネーゼもレンジでパスタとソースは同時に温められないので、そこをさらに簡便さで超えてしまったと感がある。
そしてこれはまさかの永谷園。ここもこれまでのパスタソースを作って来たメーカーからすると外様だけど、だからこそ新しいやり方で殴りこめるっていうのはある。
パスタソース系、味づくり出来れば割と参入障壁低めなので、こういう新しい包材・新しい発想が出てくるとどんどん外様が入ってくる。
見ていてヒリヒリするね。
スーパーの棚見てヒリついてるの僕だけかもだけど。
そんな感じで、パスタ70年の歴史からいかに食品メーカーが「日々のダルさ」を解消し、価値にしてきたかを語りました。
よければ好きなパスタソースでもコメントしていってください。
そして本日のおすすめは、パスタ調理器。
これ友人に勧められて買ったんだけど、中央の穴から途中でお湯がボコボコ出てきて循環するのね。それで溶けだしたでんぷんをパスタにコーティングして、ソースの絡みを良くするという商品。
良いところは
・あえて水を少なくして茹でるので水切りがいらない点
・2人前まで茹でられる点
で、確かに普通のパスタ調理器より美味しく仕上がるし、値段的にも大したことないのでさっさと買えばよかったなーと思った商品でした。
それでは、良いパスタライフを!