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ひとり

不思議な気分になった。 

星野源さんの「うちで踊ろう」を聞いたのだが、なんだか、頭と心が反対を向くみたいな感覚になった。

世界は変わってしまって、ひとりでお家にいなければならない。

けど、人はやっぱり、そのことに抵抗していくように思える。誰かに会うことをやめないし、綺麗な景色を見に行きたい。

6月に東京を離れた。もともと、来ようと思っていた場所だけど、本当は、本当に何事も無ければ違う場所だったかもしれないし、或いは、あの場所を離れようと思ってはいてもそうしなかったかもしれない。世界の方が大きく変わってしまったから、私はむしろ世界に合わせていく形をとった。

「こんなところに一人で来て寂しくない?」

と聞かれて、返答に困った。

「慣れてますから」と言ったけど、寂しいという概念すらなかった。一人が寂しいなんて思ったことがないけど、寧ろ、虚しくなることは多々ある気がする。生きていくことの虚しさだ。

寂しいとは何か、と、考えていたら

大切な人の心臓が止まるまでの時間を思い出した。

私は本を読んでいて、その人の好きな曲が流れた。カーテンが揺れて、すぐ側の公園から、子どもたちのバイバイという声が響いた。

そろそろ手を繋ぎたいと思って読みかけた本を持ちながら片方の手を繋いだら、ギュッと握り返された。さよならだと解ってしまって、もっと早く握っていたら良かったと思った。


「寂しい」の記憶。




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