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【和訳/解説】 The 1975 - I Couldn't Be More In Love


The 1975
よりI Couldn't Be More In Loveの和訳です。

前回の I Always Wanna Die (Sometimes) に引き続き、The 1975の3rdアルバム『ネット上の人間関係についての簡単な調査』からの和訳になります。

ボサノヴァ、ジャズ、ゴスペル…
今楽曲はこのような数多くのジャンルを掛け合わせたバラードであり、ジャンルレスなスタイルを貫いてきたThe 1975の中でも類似曲が見当たらない独特の感性を伴った一曲です。
シングルカットされている訳でも「代表曲の一つ」という訳でもないですが、リリースから5年経った今でも変わらずセトリに入ってくるなど、とにかくファンに人気の一曲という印象があります。
「愛する人の喪失」をテーマとして歌っており、言ってしまえば(バラードとしては)ありがちな歌詞ではあるのですが、抒情的な言葉選びと歌詞に隠された普遍性とがこの曲が持つ「孤独さ」を特別なものにしています。

Mattyの力強いヴォーカルや渇いたスネアの響きが強調されたライブパフォーマンスは圧巻の一言です。
ぜひ併せてご覧ください。

後方に解説・注釈Spotify, Apple Musicのリンクも載せておりますので、こちらもぜひ。


※堅苦しい訳やコーラス部分の和訳を繰り返し使うなどの形式が私自身あまり好きではないため、一部噛み砕いた表現や意訳を含んでいます。
予めご了承ください。


歌詞

At the best of times
I'm lonely in my mind
But I can find something to show you
If you have got the time
Why would I rely on the things that I did right?
She said, "I gave you four years of my life"

So, what about these feelings I've got?
We got it wrong and you said you'd had enough
What about these feelings I've got?
I couldn't be more in love

I could have been a great line
I could have been a sign
Or overstay my time
Say what's on your mind
Maybe I'll rely on all the things that made it right
Because I'd give you all the years of my life

So, what about these feelings I've got?
We got it wrong and you said you'd had enough
But what about these feelings I've got?
I couldn't be more in love

And what about these feelings I've got?
We got it wrong and you said you'd had enough
But what about these feelings I've got?
I couldn't be more in love

和訳

人生最高の時でさえ
心の中ではどこか孤独なまま
それでも君のためなら何だってできるんだよ
もし君がその気ならね
どうして僕は過去の正しかった選択ばかりに囚われてしまうのだろう
彼女はこう言った
「4年もの歳月をあなたに捧げたのよ」って

それで僕の気持ちはどうなるの?
確かに僕らは間違った
それだけで君はもう沢山だって言うんだ
この狂おしいまでの想いはどうしたらいい? ※1
これ以上誰かを愛することなんて出来ないのに

君を紡ぐ糸にだって     
君を導く光にだってなれたのに ※2
君の人生に入り込みすぎたのかもね
言いたいことがあるなら言ってよ
きっと僕はこれからも「上手くいってたあの時」に縋って生きていくんだ ※3
僕は君に人生を捧げてもいいと思ってるから

ねえ僕のこの想いはどうなるの?
僕たちはすれ違って
君はもう終わりにしようって言うけど
じゃあ胸を締めつけるこの痛みは何なの?
これ以上ないくらい君を愛しているのに

それなら君へのこの想いは何?
君はたった一度の思い違いで
僕にさよならを告げてきたんだ
それじゃあ君を想うこの気持ちは偽物なのかな
君以上に愛せる人なんていないのに


解説・注釈

※1 『この狂おしいまでの想いはどうしたらいい?』

この曲を解説する動画にて Matty Healyはこの部分について以下のように語っています。

「この曲を書いている時、ある女の子との会話を思い出したんだ。彼女は23歳で、彼氏を事故で失ったと言っていた。その時、彼女は正直に『彼への怒りが収まらない』と言ったんだ。彼女自身もそれが健全じゃないことも正しくないことも分かっていたけど『じゃあ、あなたに抱くこの狂ったような愛はどうしたらいいの?』って感じだった。これはみんなに起こりうることで、何かを失えばきっとみんなそう感じるんだ」

別れとは多様なものであり、互いが話し合い、心を決める余地のある恋愛における別れもあれば、突如として降りかかる死別のような別れも存在します。
恋愛における別れに限定するのではなく、あくまで普遍的な別れを描く。そのために敢えて抽象的なthese feelings という表現を使ったのではないでしょうか。

※2 『君を紡ぐ糸にだって     
   君を導く光にだってなれたのに』

人は誰しも愛する人に出逢った時「その人の人生の一部」になりたいと願います。
人によってその度合は異なり、殆どそういう類いの欲を感じない人もいれば、強く感じる人も存在します。(この差異が所謂「価値観の違い」などを引き起こすわけですが)
そして、今楽曲に登場する主人公(彼)と彼女のどちらともが、そのような欲が強い人物であったと推測されます。そう考えた方が解釈し易いというのが正直なところですが、二人が共通して口にしていた「人生を捧げる」という言葉などからも、決して的外れな推測ではないように思えます。

このように、上手く噛み合ったかのように思えた二人ですが、結果的には彼女側は別れを告げ、彼の方はその別れを引きずるという形に収束しています。
この結末を引き起こしたのは、"一緒にいた頃に"人生を捧げられたかどうかの違いであり、彼も自分がそれを怠ったことが別れの原因であるということには気づいています。だからこそ二人を振り返り「(あの時全てを捧げられていれば)君の人生の一部になれたのに」という後悔に苛まれているのです。

そして、そんな彼にとっての"人生の一部"、その象徴こそが
君を紡ぐ糸(君にとって不可欠な存在)』であり
君を導く光(君の支えとなれる存在)』だったというわけです。

※3 『きっと僕はこれからも「上手くいってたあの頃」に縋って生きていくんだ』

「"4年もの歳月"を捧げた」
結果的に別れを迎えたとしても、彼女がそれほどまでに長い年月を彼に捧げられたのは、辛い想いを掻き消すくらい多くの幸せな日々があったから。

しかし、彼女はその日々に別れを告げます。
彼女の中からその幸せな日々が消えることはありません。時には思い出すこともあるはずです。それでも彼女は、彼とのかけがえの無い時間にきっぱりと「さよなら」を告げ、旅立っていくのです。

それに対し、彼はその日々に縋り続けます。
決して消えることのないその幸せな時間や、その頃の正しかった自分にいつまでも囚われたまま。彼女と同じ様に旅立つ必要があると分かっていながら「どうして」と別れを嘆くのです。

追記
"all the things that made it right"
正直この部分は直訳である「自分のした正しいこと」でも全く違和感は無いですし、事実、一つ目のバースでは直訳の文をそのまま使っています。
しかし、「上手くいってたあの頃」という表現が含む-主観的で直接的でありながら、人によって異なる情景が浮かび得る-独特の感性の豊かさを諦めることができず、二つ目のバースであるこの部分で使うという判断をしました。
相当な意訳であるため、説明として置いておきます。

最後に

いかがだったでしょうか。
※1 で解説した通り、これは「普遍的な別れの曲」です。
※2,3 では主に恋愛における別れを軸に解説を書きましたが、きっと他のどんな別れを軸にしても
解釈し、自分の救いとすることができるのではないかなと思います。
そんな、別れに接した全ての人に寄り添ってくれる一曲です。
どうか苦しくなった時は思い出して下さい。
それでは。

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