いとよ

映画、アニメ、漫画、小説を読んで思ったことなどを記録。 社会学・人文学系も素人ながらに…

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映画、アニメ、漫画、小説を読んで思ったことなどを記録。 社会学・人文学系も素人ながらに関心があり、日常の疑問などについて考えるアラサー男。 悲惨だけれど愛らしい、そんな私たち人間の深淵を一緒に見に行きましょう。

最近の記事

羅小黒戦記を見たけど面白くなかったと感じた人へ ~特に見る価値はないが、もののけ姫より頑張った点もあるよ~

 家族からの猛烈な勧めがあり、中国のアニメ映画「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」を見た。好きだという人には大変申し訳無いが、アニメ作品としてのクオリティは非常に低い。  ネット等を見ると、ハマっている人もいるようだが、面白くないと感じた人のほうが多いのではないか。今回は、なぜこの作品が面白くないのか、その要因を確認しつつ、それでもなお、考える価値のあるテーマを探っていきたい。 1 この作品の良い点 この作品を現代日本人が好きになるとすれば、「ムゲンがイケメンかっこいい♡」か、「

    • アニメ映画 聲の形 で描かれる川合みきという人物 ~罪の自覚。キリスト。親鸞~

      本稿では、アニメ映画「聲の形」のネタバレを含みます。  我々は古今東西、「罪の自覚」というテーマを非常に好む。  例えば、ヨハネによる福音書の第8章には、姦淫の罪で捕まった女が石打の刑に処せられようとしていた際、イエス・キリストが現れ、民衆(パリサイ人)に対し「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」と言った結果、誰も石を投げずに帰ったという話は非常に有名である。  我が国にも、親鸞の「悪人正機説」がある。「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや。

      • コスパ重視の社会であえて伝統工芸品や高級品を用いる意味 ~ひとそれぞれを超えられるか~

         高校生のとき、食器のことで同級生のM君と喧嘩をした。それは、僕が「漆塗りのお椀でお汁を飲んだほうが、美味しいように感じる」という考え(以下「伝統工芸派」という。)だったのに対し、M君は「器など使えれば何でもよい。100均のプラスチックのお椀で十分。わざわざ漆塗りの器を使うなどコスパが悪く無意味」という考え(以下「コスパ派」という。)であった。結局、どちらも決定的な論理を構築することはできず、平行線のまま喧嘩別れに終わった。  この論点は、未だに自分の中で結論が出ていない。

        • 僕はテレワークに向かない ~偶然性の欠如により李徴は虎になる~

           コロナ禍により、当社でも多分にもれずテレワークが実施されている。今はもはや週1出勤である。もともとテレワークを推奨している会社だったので、これまでも何度かやったことがあり、抵抗は少なかった。しかし、連日となると色々感じるところがあったので、手垢がついたテーマではあるが書き記したい。 テレワークの利点 とにかく、作業は捗る。あまり話しかけられないので、黙々と手を動かすため、進捗は非常に良い。通勤がないのも楽だ。ただ、次の観点から、自分はテレワークに向かないなと思う。 テレ

        羅小黒戦記を見たけど面白くなかったと感じた人へ ~特に見る価値はないが、もののけ姫より頑張った点もあるよ~

        • アニメ映画 聲の形 で描かれる川合みきという人物 ~罪の自覚。キリスト。親鸞~

        • コスパ重視の社会であえて伝統工芸品や高級品を用いる意味 ~ひとそれぞれを超えられるか~

        • 僕はテレワークに向かない ~偶然性の欠如により李徴は虎になる~

          人の個性はプライドをみればわかる ~美しく、かっこよく、そして潔くありたい~

           一見、どんなに卑屈にみえる人間であっても、一人前のプライドを持っている。  マズローは「欲求5段階説」において、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の順に高次な欲求を求めるようになると主張している。この中で、人間の個性が出はじめるのは社会的欲求からではないかと思う。これが承認欲求になると、かなり個性豊かになる。そして、プライドというのはこの承認欲求に当たるものであろう。  つまり、「プライドがどのような場面で発現するかによって、その人の個性がよく分か

          人の個性はプライドをみればわかる ~美しく、かっこよく、そして潔くありたい~

          ダメ男を好きになってしまった女性は、それでも美しい ~太宰治の斜陽から~

           私の勤め先は支社である。そもそも私は、支社採用なのだ。しかし、我が社は、「若いうちに東京の本社に2年ほど勤務する」という方針を採っており、私も本社勤務を経験している。  同じ支社採用の後輩女性も、この方針に従い、以前本社へと異動になった。2年満了後の希望を聞くと、支社に帰りたがらない。聞くと、東京で彼氏ができて、結婚を考えているが、彼氏からは「地方に転勤になれば別れる。」と言われているらしい。しかし、人事課は、「2年で帰るのは当初から決まっていること。結婚したなら配慮の余

          ダメ男を好きになってしまった女性は、それでも美しい ~太宰治の斜陽から~

          「子どもの性別は女の子がいい」という社会の闇② ~自由主義は女の子がお好き?~

          なぜ女の子は人気か  ①では、女の子が人気という事実をデータで確認した。では、なぜ女の子が人気なのか。例えば、マイナビウーマンのサイトでは、アンケートから、「かわいいお洋服を着せてみたい」、「将来を考えたときに、女の子の方が頼りになる、孫ができたときに心置きなく手伝える、嫁姑問題が起こらない」といった声が紹介されている。  しかし私は、信念として、人の意見というのは、その人がゼロから考えて選んでいるものではなく、遺伝や環境、守るべきものなど、その人を形作る外的な構造がそのよ

          「子どもの性別は女の子がいい」という社会の闇② ~自由主義は女の子がお好き?~

          「子どもの性別は女の子がいい」という社会の闇① ~自由主義は女の子がお好き?~

           長子がまだ妻のお腹の中にいるころ、産婦人科の定期検診で性別が男の子だと分かった瞬間のことだ。直接言うわけではないが、助産師さんはどこか「残念だったわね」という雰囲気を出した。その助産師がたまたまそうなのかな?とも思ったが、後日別の助産師がエコー検査をし、性別を再度教えてくれる際にも「やっぱり女の子が良かった?」と言われた。  どうも、人の話を聞く限り、最近は女の子が人気だという。世間では昔から、男の子を産まない妻が姑から責められたりする話があとを絶たないため、なんとなく男

          「子どもの性別は女の子がいい」という社会の闇① ~自由主義は女の子がお好き?~

          映画 アルキメデスの大戦 で描かれる民族の象徴 ~新国立競技場は現代の戦艦大和となるか~

          ※ 本稿は深刻なネタバレを含みます。 あらすじ・みどころ 昨日、レンタルで菅田将暉主演の映画「アルキメデスの大戦」を見た。戦艦金剛の後継艦として、空母を採用するか、巨大戦艦を採用するかで海軍幹部が対立する。空母サイド(山本五十六)は、巨大戦艦の建造費の見積もりが安すぎるのを指摘し、巨大戦艦案の廃案を目論む。そこで、天才数学家の主人公を雇い、数学的に見積もりの甘さを指摘しようとする「俺ツエー」系の話である。  全編を通して、社会風刺の作品となっているのが面白い。 「不正を

          映画 アルキメデスの大戦 で描かれる民族の象徴 ~新国立競技場は現代の戦艦大和となるか~

          新型コロナウイルスは私たちの価値観をどのように変えるか ~発達障害を例に挙げて~

           最近、世界の話題は新型コロナウイルス一色である。実際、コロナの影響は、健康、経済、政治、移動、生活など、多岐にわたる。では、コロナは、我々人間の「価値観」に対して、どのような影響を及ぼすであろうか。今回は(人間関係考察は一旦脇に置いて)それを考えてみたい。  ある新しい概念が、人々の価値観に大きく、不可逆な影響を与えることがある。例えば、「発達障害」という概念が我々の価値観をどのように変えたのかを振り返ってみよう。  発達障害という概念がこの社会に広まる前、いわゆる発達

          新型コロナウイルスは私たちの価値観をどのように変えるか ~発達障害を例に挙げて~

          映画 ジョーカー にみる他者受容の限界 ~君はアーサーと友達になれるか?~

          ※ 本記事は、「心の優しい人」は読まないでください。  少し前、「ジョーカー」という映画が流行った。私も、「2回見ました!」という後輩に勧められて、劇場に足を運んだ。本作は、バットマンの映画「ダークナイト」に登場する悪役のスピンオフ的な映画である。  社会の底辺にいる主人公アーサーが、社会に不満を募らせていく中で、ついに殺人を犯す。しかし、それが同様に社会に不満を抱える貧困層に支持される。一方彼は、コメディアンになりたいというあこがれがあった。しかし、尊敬するコメディアン

          映画 ジョーカー にみる他者受容の限界 ~君はアーサーと友達になれるか?~

          カミュの異邦人に読む分断社会の希望 ~相手の箱の中をみるということ~

           先日、カミュの「異邦人」(新潮文庫)を読んだ。カミュは、ノーベル文学賞作家らしい。内容はというと、世間でいえばちょっと不思議ちゃんの男ムルソーが成り行きで人を殺してしまい、裁判にかけられるも、感覚が普通の人とかけ離れているため、ろくな自己弁護もできずに死刑になるという話だ。殺人の動機を聞かれ、「それは太陽のせいだ。」と答えるところが有名らしい。  この作品について色々調べると、「不条理」という言葉がキーワードのようだ。確かに、自分としては筋の通った言動をしているつもりでも

          カミュの異邦人に読む分断社会の希望 ~相手の箱の中をみるということ~

          アニメ PSYCHO-PASS サイコパス を見て ~槙島の狡嚙への壮絶な片思い~

          本稿では、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のネタバレを含みます。 職場の後輩に勧められてPSYCHO-PASSの1期を見た。その中でも、槙島聖護と狡嚙慎也の関係が面白かったので、書き留めたい。 この作品の世界では、「シビュラシステム」というコンピュータシステムが日本国内のあらゆる国民の心理状態を数値で管理している。そして、主人公たちが所属する「公安局」は、犯罪に関する数値である「犯罪係数」が一定値を超えた国民を裁くという役割を担っている。しかし、本作の悪役、「

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          映画 1917 とロード・オブ・ザ・リング ~トールキンのトラウマを追って~

           私は昔から古今東西を問わず、ミリタリー系の分野に関心がある。そんな中でも、ここ数年、第一次世界大戦への興味が高まってきた。といっても、世界史の教科書や新書、映像の世紀、Youtubeの解説動画を見て知識を仕入れる程度で、専門的な情報収集をしているわけではない。  そんなレベルでも、いろいろと小ネタは集まるものだ。塹壕戦、機関銃・飛行機・毒ガス・戦車の登場などは学校でも学ぶことだ。ヴェルダンの戦いやソンムの戦いで合わせて200万人弱の死傷者がでたり(旅順攻囲戦の死傷者でも日

          映画 1917 とロード・オブ・ザ・リング ~トールキンのトラウマを追って~